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17連休でもまだ足りなくて昨日も国会をさぼった野党の面々とは対照的に、政府与党の主だった人たちは連休を利用して外交に視察にと海外を飛び回っていた。河野外相や世耕経産相のＳＮＳからは、外遊と呼ぶにはあまりにもハードな旅の様子が伝わってくる。

現在は行政改革推進本部長として党務に専念している甘利明氏も、与野党議員と有識者で構成される十数人の団長として米国を訪問している。最新の国会レポートで、その時の様子や現在の北朝鮮情勢について、実に興味深い話を披露しているのでご紹介。

甘利明の国会リポート第355号
http://amari-akira.com/01_parliament/index.html

前半の北朝鮮情勢を語る部分では、なんとか世界をだまして経済制裁解除と経済援助を引きだしたい北の意図を指摘したうえで、「完全で検証可能な不可逆的措置が実行されるまで経済制裁解除も経済援助も、更には人道的支援も一切封印する覚悟が必要」と警告している。

そのうえで、「早く援助がほしいなら早く廃棄を完了する。この一点を韓・米・中・日で共有することです。」と指摘している。
対北朝鮮では中国と韓国も含めた意思統一が必要だと強調しているのである。

ところが、その中国について、米国での会合では次のようにスピーチしたとも書いている。

中国習近平主席の独裁体制の下、政府とバイドゥやアリババやテンセント等のデジタルプラットフォーマーが表裏一体となり、それに軍がのって政治と経済が一体となった世界覇権戦略が猛烈なスピードで進んでいる

世界制覇戦略という言葉が与党の重鎮の口から出てきたのである。
中国にそのような野望があることは知っていたが、チーム安倍の重鎮に改めてこのように指摘されると中国に対する見方が少し変わる気がする。

尖閣諸島や南沙諸島など軍事的な脅威は目につくが、それは世界の覇権を握ろうとする戦略の一部にしか過ぎないのだ。かつては張り子の虎だと思っていた中国が、軍事面だけではなく総合力で大きな脅威になっているのである。

甘利氏は「顎が落ちるほど衝撃的」「聴衆のアメリカ人が最初から熱心にメモを取る光景を初めて見た。」と絶賛されたと少し自慢げに書いているが、それだけ聴衆の反応が大きかったということだろう。

この場には中国の大使館員（つまり工作員）がいたそうだが、日本のマスコミがこの衝撃的なスピーチを報じることはなさそうだ。すでにマスコミは正しい情報の伝達を邪魔する存在になっており、政府やや議員は直接発信し、ネットで拡散する時代になっているのだろう。

それはともかく、甘利氏はこのような認識を持ったうえで北朝鮮に対しては「韓・米・中・日」の意志の統一が必要だと指摘している。
世界制覇戦略を進める中国とも協力するべきだと言っているのである。

実際、安倍政権は一部の保守層の懸念の声に反するように中国との関係改善に動いている。
今日８日には李克強首相が公賓として来日し、安倍総理と習近平の相互訪問に向けた話し合いをすることになっており、天皇陛下との会見も設定されているようだ。

あさって日中韓首脳会議開催対北朝鮮で成果文書発表へ調整
ＮＨＫ　5月7日 4時29分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180507/k10011429001000.html?utm_int=news-politics_contents_list-items_011

中国首相、８日来日＝７年ぶり、関係改善に意欲
　【北京時事】中国の李克強首相が８日、公賓として日本を訪れる。２０１３年３月の就任以来初めての来日で、中国首相としては、１１年５月の温家宝氏以来７年ぶり。李首相は今年３月の記者会見で「両国指導者の相互訪問は中日関係が正常な軌道に戻るのに役立つ」と意気込みを語っており、関係改善の流れを一層強固にし、習近平国家主席の来日につなげる任務を帯びた訪問となる。

　日中関係は、日本政府が１２年９月に沖縄県・尖閣諸島を国有化したのを機に中国各地で反日デモが吹き荒れ、どん底の状態に陥った。両国は、昨年の国交正常化４５周年、今年の平和友好条約締結４０周年という好機を見据えて慎重に外交努力を積み重ね、今回の首相来日にこぎ着けた。
　経済成長のスピードが以前より鈍化し、米国との貿易摩擦が課題の中国にとって、日中経済関係の重要性は増している。中国側には、対米貿易黒字を共に抱える日本と自由貿易体制を守る姿勢をアピールすることで、保護貿易主義の主張を強めるトランプ米政権をけん制する狙いがある。また中国が提唱するシルクロード経済圏構想「一帯一路」に日本を引き込む思惑もある。
　李首相は９日、日中韓首脳会談や日中首相会談に臨むほか、天皇陛下と会見する。１０日に北海道入りし、１１日に札幌で道県知事や中国の省長が参加するフォーラムでスピーチする予定。（時事　2018/05/07-15:55）
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018050700714&g=pol

以前の拙エントリに次のように書いた。

かつて中国との付き合い方について安倍総理は次のように語ったことがある。
これは、中国が台湾の李登輝元総統の来日に強行に反対してきた時の発言である。

彼ら（中国）のほうがよほど、そのことをわかっています。ゲームだからこっちが勝つことがあっても怒らない。怒ったふうに見せるのは次のゲームに勝つための作戦です。彼らは、負けたらそれを反省材料に作戦を練り直してまたやってくる。
（安倍晋三発言集）より

Ｇ８に合わせて安倍総理側から会談を申し入れたら、李登輝の来日の中止を条件にしてきた。
そこでこちらは「李登輝氏の来日は変えられないから、また別の機会にしましょう」と投げ返した。

すると、次には李登輝氏の講演をやめさせろとか報道陣を入れるなと条件を出してきた。
今度も会談は別の機会にと突っぱねたら、最終的には何事もなかったように会談の受け入れを伝えてきたというのだ。

そして、会談予定当日の朝に李登輝氏が靖国神社に参拝するという予想外の出来事が起こった。日本の外務省がびっくりして「会談がキャンセルになるかもしれない」と安倍総理に言ったが、胡錦濤との会談は何事もなかったように終わったという。

（『中国との付き合い方』2017-12-30）より　
https://ameblo.jp/akiran1969/entry-12340403957.html

中国は軍事費をものすごい勢いで伸ばしているが、それが可能なのは強い経済力があるからだ。モノづくりの世界ではいまだにパクリ文化から抜け出せていないが、研究開発でもＩＴなど中国に先んじられる分野も出ている。

我が国の国力は長いデフレで伸び悩み、民主党政権の誕生によりリーマンショックからの立ち直りも大きく遅れた。一方の中国はその間にも独裁政権の強みも生かしながら、あらゆる方面で力をつけてきたのである。

安倍政権が中国に乗せられて「一帯一路」に引っ張り込まれると警告する保守系の評論家もいるが、政府はそんなことは百も承知だろう。日米の強固な絆を見せつけつつ、共存共栄の道を探ることが現実的な中国との付き合い方なのである。

（以上）

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世界制覇戦略を進める中国とどう付き合うか