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私が初めて中国に行った25年前、高速道路はまだ珍しかった。その時通った上海から郊外に向かう高速道路は開通して間もなく、アスファルトがまだ黒々していたのである。しかし、いまや中国の高速道路は総延長１３万kmを超えて日本の１０倍を軽く超えている。

隔世の感があるが、同様に２５年前には考えられなかった変化を遂げているのがこの国の紙幣事情だ。この国の紙幣に偽札が多いことはいまも常識だが、当時はそれ以前にお札かどうかすらわからないほど汚い紙幣が流通していた。

そのエピソードはかつて下記エントリに書いた。

私の見た中国（買い物事情）
http://akiran1969.blog.fc2.com/blog-entry-21.html

中国の店員はいまでも接客態度がよくないと言われているが、この時の女性店員（たぶん国家公務員）ほど無愛想なのにはその後もお目にかかったことがない。そして、こちらが差し出した１００元札もかなり汚れてボロボロだったが、仏頂面で投げ返してきたお釣りはすごかった。

記事には「ぼろきれみたい」と書いたが、「油で真っ黒に汚れた機械を拭いたような」が抜けている。それくらいクシャクシャで汚れていたのだ。相手は１００元札をかざしてニセ札かどうかチェックしていたが、お釣りの方は本物かどうか以前にお札には見えなかった。

その中国も、いまでは乞食が首からＱＲコードをぶら下げているくらい電子マネー化が進んでいるという。電子決済は全土に驚異的なスピードで広がっていて、最近は地方都市の小さな食堂ですら現金は受け付けないというところが続出しているという。

中国で電子マネーが発達した理由は誰の目にも明らかだ。
銀行で受け取るお金にすら偽札が混ざっているくらい現金の信用度が低く、それを解消する手段として電子決済はうってつけなのだ。

また、インドのモディ政権も強力に電子マネー化を進めているという。こちらは地下経済による不正資金のあぶり出しを狙っているというが、中国もインドも現状があまりにも遅れているからこそ思い切った改革に踏み切れるという共通点がある。

ネットで見かけた次の意見もそこを指摘している。

まったくもって孫文先生の言う通りである。日本の電子マネー化が中国より遅れている大きな理由は現金の信用度、経済環境などの違いなのだ。ただ、そこで「負けていてもどうってことはない」と言っているだけでは差は開くばかりとなる。

そこを指摘しているのが、１１月に自由民主党行政改革推進本部長として本格的に復活した甘利明の次の国会レポートだ。

甘利明　国会リポート第334号（2017年6月13日）
http://amari-akira.com/01_parliament/2017/334.html

その一部を抜粋する。

　中国では乞食が首からQRコードやスマホをぶら下げて現金ではなく電子マネーによる物乞いをしていると以前に報告しましたが、中国全土における電子決済は驚異的なスピードで広がっています。地方都市の小さな食堂ですら現金は受け付けないというところが続出をしています。タクシーは現金支払いを極めて嫌がります。偽札が横行し、銀行から引き出す現金ですら偽札が混入していることもあり、現金の信用度が極めて低いために電子決済があらゆる経済社会生活に浸透していると報告しましたが、もっと大きな要因は共産党一党独裁政府の決断のスピード感にあります。いいと思ったことはまずやってみて、問題が生じたらその都度その穴を塞いでいくというやり方は14億人もの国民が一斉に新たなことにチャレンジしていくという凄さを持っています。金融取引はIT技術が投入をされ、フィンテックと呼ばれていますが、フィンテックの世界ではアメリカですら中国に凌駕をされるのではないかという観測が専門家の間に広がっています。

　翻って日本はと見れば、いかなる瑕疵も許されないという風潮の中であらゆるバグを検出し、完璧にそれらを塞いでいかなければスタートアップができないというような雰囲気に包まれています。中国の10分の1の人口規模でありながら、コンセンサスを完璧に取っていかなければスタートアップができないというスピード感のなさでは完全に劣後してしまいます。「やってみなはれ」とはサントリーの中興の祖・佐治敬三氏の商売哲学ですが、まさにこの精神を実践していくのが、今話題の「国家戦略特区」なのです。既存の利害関係者がタッグを組み、変化を許さない現状を打破していくのが、国家戦略特区の役割です。「52年間、認可がされなかったのになぜ？」「関係行政が積み上げていくプロセスを無視した決定」などと批判されていますが、ではなぜ52年間も誰が何の理由で現状変化を許さなかったのかということこそが問われるべきです。

（以下略）

孫文の指摘したことだけが日本の遅れの要因はではないようだ。
様々な要因はあるにしても、結果的には金融取引の世界でアメリカですら中国に後れをとるのではと危惧されているのである。

だから、我が国も「負けていてもどうてことない」と放置しているわけにはいかないのである。

我が国には中国共産党の決断のスピードを真似ることも、事故を起こした新幹線をそのまま現場に埋めてしまうような強引な試行錯誤も不可能だが、我が国なりにできることはあるはずだ。
そういう意味で、ちょっと影の薄い「成長戦略」が、もっと注目されてもいいと思う。

（以上）

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あなどれない中国のスピード感