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アベノミクスによる雇用環境の改善が生活保護者数を減らしている。
先日厚労省から発表された被保護者調査（平成28年12月分概数）によると、生活保護を受けている世帯は緩やかに増加しているが、人数は減少に転じているのである。

生活保護受給が最多164万世帯　昨年12月、受給者数は減
2017/3/2 12:21
　厚生労働省は２日までに、全国で生活保護を受けている世帯は昨年12月時点で、前月から680世帯増の164万205世帯となり、過去最多となったと発表した。１人暮らしの高齢者世帯の増加が主な要因。一方、受給者数は263人減の214万5667人だった。

　世帯別では（一時的な保護停止を除く）、65歳以上の高齢者世帯が前月から644世帯増の83万8386世帯となった。このうち単身世帯が増加を続けており、819世帯増の76万628世帯だった。〔共同〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG01HB4_S7A300C1000000/

ここ何年かの推移をグラフで示す。

野田政権から安倍政権になったとたんに世帯数も受給者数も増加の勢いが落ちている。さらに、平成２８年度には受給者数は明らかに減少傾向に転じている。その理由は上記のグラフと以下のグラフを見比べれば分かるのではないか。

『非労働力人口』とは、「病気などの理由で就業できない者と就業能力があるにも関わらず働く意思がない者を合計した人口」のことで、働く意志のない人が仕事を探し始めたり実際に仕事に就けば減少する。つまり、安倍政権に変わってから働く気になる人が増えた。

有効求人倍率が上がれば職業選択の余地が広がる。自分ができる仕事さえあれば働く意欲のある人は大勢いて、雇用環境の好転を受けて『非労働力人口』から『労働力人口』にシフトしていったのである。このように、生活保護受給者数と雇用環境には大いに関係があるのだ。

野田政権時も失業率は下がっていたとの主張もあるが、これは働く意欲のある「失業者」（『労働力人口』にカウント）が意欲をなくして『非労働力人口』にシフトしていったからだ。こんな形で失業率が下がることを良しとしていいはずがない。

民主党政権のデフレ政策で潜在的な人手不足の中でも雇用環境は悪化した。アベノミクス三本の矢はそれを劇的に改善し、働く意欲を甦らせる人が増え、その中には生活保護から抜け出す人も大勢いたのである。

このように、雇用環境の改善は国の経済政策としてとても重要だが、トランプ大統領の政策もそこを極めて重視しているようだ。

彼は盛んにインフラ整備などへの投資などで何百万もの雇用を取り戻すとしているが、FRBのイエレン議長は現状の失業率４．７％は完全雇用に近いと言っている。もしそうだとすると、一方で移民を制限しておいて、人は足りるのか、いったい誰を新規雇用するのかということになる。

それについて、トランプ大統領は先日の施政方針演説で次のように述べている。

　今夜、国として進むべき次の段階について輪郭を描くにあたり、私たちが引き継いだ今の状況を正直に告白しなければなりません。労働人口に加わっていない米国人が９４００万人います。４３００万を超える人々が貧しさのなかで暮らしています。そして４３００万を超える米国人はフードスタンプ（食料配給券）に頼っているのです。働き盛りの５人に１人は働いていません。

繰り返すが、働く能力があっても就業を希望しない人は失業者にはカウントされない。だから、需要を作り出して景気を良くし、雇用環境を改善して働く意欲の出る人を増やせば労働力人口が増え、フードスタンプに頼る人たちは減るのである。

ちなみに、非労働力人口は日本の４４００万人に対し９４００万人であり、両国の人口比（米国が2.5倍）で見れば決して多くない。ただ、制度が全然違うので単純に比較はできないが、日本の生活保護者数が２１５万人に対しフードスタンプ４３００万人はいかにも多い。

それはともかく、トランプ政権は、野田政権から安倍政権に代わったとたんに非労働力人口が減少して就業者が増え、生活保護者数が減り始めたのと同じことを目指しているのである。

もっとも、これに対してＦＲＢのイエレン議長は完全雇用や目標としている２％のインフレ率が見えてきたことを理由に利上げの構えを見せている。政府と中央銀行の現状認識や政策の方向がマッチングしていないのだ。

そこがどうなるのか気になるが、日本の企業が受注して現地の労働力を使って施工すれば直接的な利益を得ることにもなる。アメリカの大規模なインフラ投資が我が国の経済にとって直接的にも間接的にもいい影響を与えることは間違いない。

日米ともに、さらなる経済活性化のためには、生活保護受給者などの潜在的な労働力を活かすことがとても重要なのである。

（以上）

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雇用環境がよくなれば生活保護は減る