新型コロナウイルスによる面会禁止


二〇二〇年二月下旬、新型コロナウイルスにより面会禁止に。この日から私の入院生活は激変した。昨年はノロウイルスで一週間の面会禁止だったので、てっきり二週間くらいかなと思っていた。ところがまさかここまで長引くとは。七月だけ家族一名のみ月曜日〜土曜日の一回だけ一五分、一四〜一六時の間面会禁止解除だったが、実質面会禁止の様なもので、娘・息子とは九か月以上会えていない。まさかこんな時代が来るとは誰も思っていなかったと思う。家内は、毎日病院に寄れることを優先して仕事を探してくれた。毎日家内が水なしシャンプー、マッサージ、リハビリ、向き変えなどしてくれて、心の支えだった。私はパソコン、テレビ、天井、入口から見える人の行き来しか見えない。それでも我慢出来ていたのは、家内と毎日会え、娘や息子、いつでも大丈夫だった来客との面会で元気を貰えたから。それが出来なくなり、正直言うと気がおかしくなりそうになり気持ちが落ち込んだ。毎日家内が会いに来て体のケアしてくれていたのが如何に有難い事だったかを⋯、世の中に当たり前っていう事は何もない⋯、全て有難い事だと改めて感じた。毎日耐えていられるのは、家内からの毎朝のメールと支え、看護師さん、介護士さん、リハビリの先生など皆さんの献身的なケアのお陰と心から感謝している。

看護師さんなど病院スタッフの皆さんは七か月外食さえされておらず、カラオケや映画など密な場所も禁止。育ち盛りのお子さんをお持ちの方、娘と同じ年ぐらいの方、お孫さんをお持ちの方、兎に角皆さん我慢されている。本当に頭が下がる。想像以上に大変だと思う。それをぐっと我慢されて仕事をされている姿に胸を打たれる。心が痛むのは、コロナウイルス患者受け入れ病院の医療従事者の皆さんへの偏見や差別がある事。ただでさえ書いた様に皆さん大変な制限で我慢されている。「新型コロナウイルスは日本人の心まで変えてしまうのか⋯。」本当に辛かった。同時にこんな事が頭をよぎった。「もし自分の病気の発症が一年半遅く新型コロナウイルスで面会禁止と分かっていたら生きる選択をしただろうか、出来ただろうか。口呼吸の私がマスクをして毎月病院に通えただろうか、耐えられただろうか⋯。」怖くて答えが出ない。家内と毎日会えない入院は想像が出来ない。

「伝の心」がこうやって使え、意思疎通がストレスなく出来る様になってからの面会禁止だから感謝しないと、という気持ちになった。



「生きていられる事に感謝しないと」心からそう思えるようになった。本を書かなければ、面会出来ない不満ばかり言っていたかも知れない。それだけでも本を書いて本当に良かった。

十月九日()から家族二名まで、月曜日〜土曜日の一回だけ十五分、一四〜一六時の間、面会出来る事になり少しずつだが前に進みそうだ。娘と九か月振りに会えた。何とも言えないくらい嬉しかった。娘が「久し振り」と。マスク越しながら笑顔が見えた。「幸せだな〜」素直にそう思えた。あくまでも私の思いであるが、ワクチンが出来るまで全面解除は難しいかと。十一月からまた面会禁止に。でも今回はある程度覚悟が出来た。

ある日、前にも書いた江澤理事長を若い時から知る看護師さんから論文を見せて頂いた。

題名:「グローバル社会における日本の感染症対策をどう構築していくか」日本医師会常任理事江澤和彦。



びっくりした💦

日本医師会常任理事⁉️

直ぐホームページを調べた。

日本医師会は全国に一七万二千人(令和元年一二月一日現在)の会員を有する民間の学術専門団体(HP抜粋)。国民の健康を守って頂いている大変重責ある組織。会長、副会長に続き常任理事が十人おられる。医師の中でも本当に選ばれた方々。

「こんな凄い方だったんだ、なかなか出会える方ではない、論文をしっかり読ませて頂う。」

家内にスキャナしてメールして貰い三回読ませて頂いた。専門用語も多く興味深く、印象に残った言葉が沢山あった。『新型コロナウイルスを正しく恐れる』風評被害に随分江澤理事長も心を痛めておられる。『医療崩壊と介護崩壊は表裏一体』医療従事者としての厳しい目線で対策と現状を具体的に知る事が出来た。想像以上に全国の九割を超える病院、介護施設が新型コロナウイルスの影響で経営に支障が出ているのにはびっくりした。『地域の医療と介護を必ず守る事が大事』その為には、ソフト面とハード面両方の対策が必要と。ハード面では国の補助金を最大限利用、ソフト面では面会禁止や医療従事者の感染症対策。『プライベートも含め協力レベルではなく時には要請レベルで対策が必要』と。ここを読んで分かった。江澤理事長は率先垂範で自ら厳しい対策を取られた。岡山のどの病院より早く二月中旬から倉敷スイートホスピタルは面会禁止になった。

二月末、家内に「他の病院はまだ面会禁止でないのにここは厳しいな〜」と愚痴のメールをした。今、当時の江澤理事長の気持ちを思えば恥ずかしく自分が情けない。七月から病院の方は全員防護メガネもつけられ、コロナ対策が一層厳しくなった。医療従事者としての感染症対策は出来る限りの事を精一杯されている。働き方改革で働き方が激変しafterコロナでもなかなか以前の様な自由な面会は出来ないと『覚悟』が改めて出来た。生きていられる事に感謝し、これからも江澤理事長を、病院スタッフの皆さんを信じて頑張っていこうと思う。新型コロナウイルスはまだまだ落ち着きそうにないが、明けない夜はないので、希望を持って夜明けを待とう。きっと笑える日が来るので兎に角今は耐えるのみ。