この解説は、「過去問解説evolution 平成20年度 行政法 」の下書き原稿となります。(解説として十分お使いいただけるレベルには達していますのでご安心ください。誤字・脱字等はご了承ください。)
問題26 行政調査に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。
1 保健所職員が行う飲食店に対する食品衛生法に基づく調査の手続は、行政手統法の定めるところに従って行われなければならない。
条文問題です。
行政手続法 第1条
この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。第46条において同じ。)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。
1条は対象を「処分」「行政指導」「届出に関する手続」「命令等を定める手続」の4つとしており。本肢のいう「調査の手続」は行政手続法の適用外であることがわかります。
よって、「誤り」。
2 租務調査については、質問検査の範囲・程度・時期・場所等について法律に明らかに規定しておかなければならない。
最判昭和48年7月10日 荒川民商事件
質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、右にいう質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまるかぎり、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられているものと解すべく、また、暦年終了前または確定申告期間経過前といえども質問検査が法律上許されないものではなく、実施の日時場所の事前通知、調査の理由および必要性の個別的、具体的な告知のごときも、質問検査を行なううえの法律上一律の要件とされているものではない。
よって、本肢は「誤り」。
「荒川民商事件」は、憲法・行政法ともに超重要判例ですよね。出来なかった人は勉強不足です。反省してください。
3 警察官職務執行法2条1項の職務質問に付随して行う所持品検査は、検査の必要性・緊急性があれば、強制にわたることがあったとしても許される。
最判昭和53年9月7日
警職法二条一項に基づく職務質問に附随して行う所持品検査は、任意手段として許容されるものであるから、所持人の承諾を得てその限度でこれを行うのが原則であるが、職務質問ないし所持品検査の目的、性格及びその作用等にかんがみると、所持人の承諾のない限り所持品検査は一切許容されないと解するのは相当でなく、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、たとえ所持人の承諾がなくても、所持品検査の必要性、緊急性、これによつて侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容される場合があると解すべぎである。
よって本肢は「誤り」。
この判例は、憲法・行政法・刑事訴訟法で重要な判例です。とりわけ刑事訴訟法では、重要度ランキングトップ1といっても過言ではないくらい重要です。
判旨は多めに掲載しましたが、何度も読み返しておきましょう。
4 自動車検問は国民の自由の干渉にわたる可能性があるが、相手方の任意の協力を求める形で、運転手の自由を不当に制約するものでなければ、適法と解される。
最判昭和55年9月22日
警察官が、交通取締の一環として交通違反の多発する地域等の適当な場所において、交通違反の予防、検挙のための自動車検問を実施し、同所を通過する自動車に対して走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく短時分の停止を求めて、運転者などに対し必要な事項についての質問などをすることは、それが相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様で行われる限り、適法なものと解すべきである
よって、本肢は「正しい」。
この判例は、憲法・行政法・刑事訴訟法で重要な判例です。
5 税務調査の質問・検査権限は、犯罪の証拠資料の収集などの捜査のための手段として行使することも許される。
最判平成16年1月20日
法人税法―――に規定する質問又は検査の権限は,犯罪の証拠資料を取得収集し,保全するためなど,犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使することは許されないと解するのが相当である。しかしながら,上記質問又は検査の権限の行使に当たって,取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても,そのことによって直ちに,上記質問又は検査の権限が犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたことにはならないというべきである。
よって、本肢は「誤り」。
憲法・行政法ともに超重要判例ですので、知らない人はいないでしょう。
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