この解説は、「過去問解説evolution 平成20年度 行政法 」の下書き原稿となります。(解説として十分お使いいただけるレベルには達していますのでご安心ください。誤字・脱字等はご了承ください。)



問題26 行政調査に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。



1 保健所職員が行う飲食店に対する食品衛生法に基づく調査の手続は、行政手統法の定めるところに従って行われなければならない。


条文問題です。


行政手続法 第1条
この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。第46条において同じ。)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。


 1条は対象を「処分」「行政指導」「届出に関する手続」「命令等を定める手続」の4つとしており。本肢のいう「調査の手続」は行政手続法の適用外であることがわかります。
 よって、「誤り」。



2 租務調査については、質問検査の範囲・程度・時期・場所等について法律に明らかに規定しておかなければならない。


最判昭和48年7月10日 荒川民商事件
質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、右にいう質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまるかぎり、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられているものと解すべく、また、暦年終了前または確定申告期間経過前といえども質問検査が法律上許されないものではなく、実施の日時場所の事前通知、調査の理由および必要性の個別的、具体的な告知のごときも、質問検査を行なううえの法律上一律の要件とされているものではない。


 よって、本肢は「誤り」。
 「荒川民商事件」は、憲法・行政法ともに超重要判例ですよね。出来なかった人は勉強不足です。反省してください。



3 警察官職務執行法2条1項の職務質問に付随して行う所持品検査は、検査の必要性・緊急性があれば、強制にわたることがあったとしても許される。


最判昭和53年9月7日
警職法二条一項に基づく職務質問に附随して行う所持品検査は、任意手段として許容されるものであるから、所持人の承諾を得てその限度でこれを行うのが原則であるが、職務質問ないし所持品検査の目的、性格及びその作用等にかんがみると、所持人の承諾のない限り所持品検査は一切許容されないと解するのは相当でなく、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、たとえ所持人の承諾がなくても、所持品検査の必要性、緊急性、これによつて侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容される場合があると解すべぎである。


 よって本肢は「誤り」。
 この判例は、憲法・行政法・刑事訴訟法で重要な判例です。とりわけ刑事訴訟法では、重要度ランキングトップ1といっても過言ではないくらい重要です。
 判旨は多めに掲載しましたが、何度も読み返しておきましょう。


4 自動車検問は国民の自由の干渉にわたる可能性があるが、相手方の任意の協力を求める形で、運転手の自由を不当に制約するものでなければ、適法と解される。


最判昭和55年9月22日
警察官が、交通取締の一環として交通違反の多発する地域等の適当な場所において、交通違反の予防、検挙のための自動車検問を実施し、同所を通過する自動車に対して走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく短時分の停止を求めて、運転者などに対し必要な事項についての質問などをすることは、それが相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様で行われる限り、適法なものと解すべきである


 よって、本肢は「正しい」。
 この判例は、憲法・行政法・刑事訴訟法で重要な判例です。


5 税務調査の質問・検査権限は、犯罪の証拠資料の収集などの捜査のための手段として行使することも許される。


最判平成16年1月20日
法人税法―――に規定する質問又は検査の権限は,犯罪の証拠資料を取得収集し,保全するためなど,犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使することは許されないと解するのが相当である。しかしながら,上記質問又は検査の権限の行使に当たって,取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても,そのことによって直ちに,上記質問又は検査の権限が犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたことにはならないというべきである。


 よって、本肢は「誤り」。
 憲法・行政法ともに超重要判例ですので、知らない人はいないでしょう。


「より詳しい解説」「問題の要求レベル」「ここが合否を分ける」「問題別のまとめ解説」を収録し、合格者レベルを知ることで、アナタを合格レベルに引き上げる「過去問解説evolution 」は好評発売中です。

この解説は、「過去問解説evolution 平成20年度 行政法 」の下書き原稿となります。(解説として十分お使いいただけるレベルには達していますのでご安心ください。誤字・脱字等はご了承ください。)



問題25 地方自治法の規定に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。



1 都道府県は、指定都市の市長から要請があった場合には、都道府県の事務の一部又は全部を指定都市に移譲しなければならない。


 このような規定は地方自治法にはないので「誤り」。
 といってもこのような答え方は地方自治法の全てを知る人しかできないわけであって、実際は、お手上げでしょう。
 本肢は、指定都市の権能(都道府県の事務をどこまでやれるか)が問題となっていますが、都道府県の事務を「全部」できることになってしまっては、都道府県の存在意義がなくなってしまいますよね?
 ということで、常識的にも事務の「全部」の委譲はありえないことから、「誤り」と判断することができます。



2 指定都市が市長の権限に属する事務を分掌させるために条例で設ける区を、特別区という。


地方自治法 第281条
Ⅰ 都の区は、これを特別区という。


 特別区=東京都23区です。よって本肢は「条例で設ける区を、特別区」としており「誤り」。
 憲法の地方自治の単元でも勉強する基本知識ですよね。
 必ず正解したい問題です。



3 市が中核市の指定の申出をしようとするときには、当該市は、あらかじめ議会の議決を経て、都道府県の同意を得なければならない。


条文問題です。


地方自治法 第252条の24
Ⅰ 総務大臣は、第二百五十二条の二十二第一項の中核市の指定に係る政令の立案をしようとするときは、関係市からの申出に基づき、これを行うものとする。
Ⅱ 前項の規定による申出をしようとするときは、関係市は、あらかじめ、当該市の議会の議決を経て、都道府県の同意を得なければならない。


 よって、本肢は条文通りなので「正しい」。


4 中核市は、特例市が処理することができる事務のうち政令で定めるものを処理することができる。


 条文問題です。


地方自治法 第252条の22(中核市の権能)
Ⅰ 政令で指定する人口三十万以上の市(以下「中核市」という。)は、第252条の19第1項の規定により指定都市が処理することができる事務のうち、都道府県がその区域にわたり一体的に処理することが中核市が処理することに比して効率的な事務その他の中核市において処理することが適当でない事務以外の事務で政令で定めるものを、政令で定めるところにより、処理することができる。


 指定都市 地方自治法第252条の19第1項の規定定める政令による指定を受け都市
 特例市 地方自治法第252条の26の3第1項に定める政令による指定を受けた市


 よって、本肢は「特例市」としており条文と異なるから「誤り」。


5 地方自治法が定める一定の人口要件を下回った市は、町または村となる。


 このような規定は地方自治法にはないので「誤り」。
 といってもこのような答え方は地方自治法の全てを知る人しかできないわけであって、実際は、お手上げでしょう。
 町村が市になることはあっても、○○市が、○○町や○○村に格下げになったという話は聞きませんよね?
 このように日常の疑問から推測することができる肢といえます。


「より詳しい解説」「問題の要求レベル」「ここが合否を分ける」「問題別のまとめ解説」を収録し、合格者レベルを知ることで、アナタを合格レベルに引き上げる「過去問解説evolution 」は好評発売中です。

この解説は、「過去問解説evolution 平成20年度 行政法 」の下書き原稿となります。(解説として十分お使いいただけるレベルには達していますのでご安心ください。誤字・脱字等はご了承ください。)



問題24 住民訴訟に関する次のア~エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものの組合せはどれか。


ア 教育委員会が教頭を退職前の1日だけ校長に任命した行為を前提に、地方公共団体の長が行った退職手当の支給は、任命行為が違法であるならば当然に違法となる。


最判平成4年12月15日
本件昇格処分及び本件退職承認処分が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するものとは解し得ないから、被上告人としては、東京都教育委員会が行った本件昇格処分及び本件退職承認処分を前提として、これに伴う所要の財務会計上の措置を採るべき義務があるものというべきであり、したがって、被上告人のした本件支出決定が、その職務上負担する財務会計法規上の義務に違反してされた違法なものということはできない。


 判例を簡単に説明しますと
 教頭を1日だけ校長に任命(退職金UP!)その後すぐに退職(退職金GET!)
  ↓
 予算執行の適正確保上、大きな問題ではない
  ↓
 退職手当の支給をちゃんとしなさい

 よって、本肢は、「任命行為が違法であるならば当然に違法となる。」としており「誤り」。



イ 懲戒免職処分とすべきところを違法に分限免職処分とした上で行われた退職手当の支給は、当該分限免職処分が退職手当の支給の直接の原因であるから、当然に違法となる。


住民訴訟において、退職手当支出の違法性の判断の前提問題として、財務会計上の行為とはいえない分限免職処分の違法を主張できるか?という問題です。


最判昭和60年9月12日
地方自治法242条の2の住民訴訟の対象が普通地方公共団体の執行機関又は職昌の違法な財務会計上の行為又は怠る事実に限られることは同条の規定に照らして明らかであるが右の行為が違法となるのは、単にそれ自体が直接法令に違反する場合だけではなくその原因となる行為が法令に違反し許されない場合の財務会計上の行為もまた違法となるのである。
                ↓
本件条例の下においては分限免職処分がなされれば当然に所定額の退職手当が支給されることとなっており、本件分限免職処分は本件退職手当の支給の直接の原因をなすものというべきであるから、前者が違法であれば後者も当然に違法となるものと解するのが相当である。


 よって、本肢は判例と同じ事を言っており「正しい」。



ウ 地方公共団体が随意契約の制限に関する法令に違反して契約を締結した場合には、当該契約に基づく債務の履行は当然に違法となる。


最判昭和62年5月19日
随意契約の制限に関する法令に違反して締結された契約の私法上の効力については別途考察する必要があり、かかる違法な契約であつても私法上当然に無効になるものではなく、随意契約によることができる場合として前記令の規定の掲げる事由のいずれにも当たらないことが何人の目にも明らかである場合や契約の相手方において随意契約の方法による当該契約の締結が許されないことを知り又は知り得べかりし場合のように当該契約の効力を無効としなければ随意契約の締結に制限を加える前記法及び令の規定の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合に限り、私法上無効になるものと解するのが相当である


 よって、判例は本肢のいう「当然に違法となる」とはいっておらず、「特段の事情が認められる場合に限り、私法上無効になる」としており、本肢は「誤り」。



エ 県議会議長が発した議員の野球大会参加のための旅行命令書に基づき知事の補助職員が行った公金の支出は、当該旅行命令が違法であったとしても適法となる余地がある。


最判平成15年1月17日
上司の職務命令に重大かつ明白な瑕疵がない限り,これに従う義務を負うものと解される。
上記服務関係からすれば,地方公共団体の職員が職務命令である旅行命令に従って旅行をした場合には,職員は,旅行命令に重大かつ明白な瑕疵がない限り,当該旅行に対して旅費の支給を受けることができ,それが不当利得となるものではない。


 判例は、野球大会の旅行命令に違法がっても、重大かつ明白な瑕疵が無い限り、公金の支出が不当利得(違法)となるものではないと判示しています。
 よって、本肢は「正しい」。


「より詳しい解説」「問題の要求レベル」「ここが合否を分ける」「問題別のまとめ解説」を収録し、合格者レベルを知ることで、アナタを合格レベルに引き上げる「過去問解説evolution 」は好評発売中です。

この解説は、「過去問解説evolution 平成20年度 行政法 」の下書き原稿となります。(解説として十分お使いいただけるレベルには達していますのでご安心ください。誤字・脱字等はご了承ください。)



問題23 普通地方公共団体の財務に関する次の記述のうち、法令または最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。



1 公共用財産については、それが長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置され、黙示的に公用が廃止されたものとみなしうる場合であっても、取得時効の成立は認められない。


最判昭和51年12月24日
公共用財産が、長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置され、公共用財産としての形態、機能を全く喪失し、その物のうえに他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されるようなこともなく、もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなつた場合には、右公共用財産については、黙示的に公用が廃止されたものとして、これについて取得時効の成立を妨げないものと解するのが相当である。


 「取得時効の成立を妨げない」という表現は「取得時効の成立を認める」という意味です。
 放置+喪失+継続+維持の理由なし→黙示的に公用廃止→取得時効OK
 このような図式で、判例を覚えておいてください。
 よって、本肢は「取得時効の成立は認められない」としており「誤り」。



2 行政財産の目的外使用の許可については、当該財産の目的に鑑みて支障がない場合であっても、管理者はその許可を拒否することができる。


最判平成18年2月7日
学校施設の目的外使用を許可するか否かは,原則として,管理者の裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。すなわち,学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが,そのような支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく,行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的,態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできるものである。


 判例は、目的に鑑みて支障がない場合であっても「合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできる」としています。
 よって、本肢は、判例の言うところと同じであり「正しい」。



3 地方公共団体は、指名競争入札に参加させようとする者を指名する際に、その者が地元の絡済の活性化に寄与するか否かを考慮に入れてはならない。


最判平成18年10月26日
地方公共団体が,指名競争入札に参加させようとする者を指名するに当たり,① 工事現場等への距離が近く現場に関する知識等を有していることから契約の確実な履行が期待できることや,② 地元の経済の活性化にも寄与することなどを考慮し,地元企業を優先する指名を行うことについては,その合理性を肯定することができる――


 判例は、指名競争入札にあたり、地元の経済の活性化に寄与するかなどを考慮することもできるとしています。
 よって、本肢は、「考慮に入れてはならない」としており誤り。


4 地方公共団体の議会があらかじめ承認を与えたときでも、当該地方公共団体は、その財産を適正な対価なくして譲渡することはできない。


条文問題です。


地方自治法 第237条
Ⅱ 第238条の4第1項の規定の適用がある場合を除き、普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合でなければ、これを交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならない。


 237条は、議会の議決がなければ、適正な対価なくしてこれを譲渡することができない、としています。逆に言えば、議会の議決があればよいということになります。
 よって、本肢は「誤り」。



5 金銭の給付を目的とする地方公共団体の権利は、時効に関し地方自治法以外の法律に特別の定めがある場合を除くほか、時効により消滅することはない。


 条文問題です。


地方自治法 第236条
Ⅰ 金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利は、時効に関し他の法律に定めがあるものを除くほか、5年間これを行なわないときは、時効により消滅する。普通地方公共団体に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。


 地方自治法は、「5年間」を時効期間として定めています。
 よって、本肢は「誤り」。
 条文は知らない人の方が多いと思いますが、会計法30条(時効期間5年)に関する有名な判例がありますので、「5年間」という数字には見覚えがあるかもしれません。



「より詳しい解説」「問題の要求レベル」「ここが合否を分ける」「問題別のまとめ解説」を収録し、合格者レベルを知ることで、アナタを合格レベルに引き上げる「過去問解説evolution 」は好評発売中です。

この解説は、「過去問解説evolution 平成20年度 行政法 」の下書き原稿となります。(解説として十分お使いいただけるレベルには達していますのでご安心ください。誤字・脱字等はご了承ください。)



問題22 地方自治法の定める裁判所への出訴に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。


1 市町村の境界に関する争論について都道府県知事が行った裁定に不服があるときは、関係市町村は、境界の確定について出訴することができる。


 条文問題です。長いですけどしっかり読んでください。


地方自治法 第9条
Ⅰ 市町村の境界に関し争論があるときは、都道府県知事は、関係市町村の申請に基づき、これを第二百五十一条の二の規定による調停に付することができる。
Ⅱ 前項の規定によりすべての関係市町村の申請に基いてなされた調停により市町村の境界が確定しないとき、又は市町村の境界に関し争論がある場合においてすべての関係市町村から裁定を求める旨の申請があるときは、都道府県知事は、関係市町村の境界について裁定することができる。
Ⅲ~Ⅶ 略
Ⅷ 第2項の規定による都道府県知事の裁定に不服があるときは、関係市町村は、裁定書の交付を受けた日から三十日以内に裁判所に出訴することができる。


 よって、本肢は条文通りなので「正しい」。
この条文を知っている人は、まずいないと思います。地方自治法は約300条にも及び全体を通して読んでいる人は皆無でしょう。



2 市町村議会議員選挙を無効とする旨の都道府県選挙管理委員会の裁決に不服があるときは、当該議会は、この裁決について出訴することができる。


公職選挙法の問題であり「誤り」。
 本肢は不適切問題として指摘されていますので、受験生の皆さんはやらなくていいです。



3 都道府県知事が所定の期限内に法定受託事務に関する是正勧告に係る事項を行わないときは、各大臣は、この不作為について出訴することができる。


 不適切問題と指摘されています。
 (公式では、この肢を「正しい」としているが、予備校では「誤り」と判断している)
 受験生はこの問題で学ぶことは以下の通りです。


地方自治法 第245条の8
Ⅰ 各大臣は、その所管する法律若しくはこれに基づく政令に係る都道府県知事の法定受託事務の管理若しくは執行が法令の規定若しくは当該各大臣の処分に違反するものがある場合又は当該法定受託事務の管理若しくは執行を怠るものがある場合において、本項から第八項までに規定する措置以外の方法によつてその是正を図ることが困難であり、かつ、それを放置することにより著しく公益を害することが明らかであるときは、文書により、当該都道府県知事に対して、その旨を指摘し、期限を定めて、当該違反を是正し、又は当該怠る法定受託事務の管理若しくは執行を改めるべきことを勧告することができる。
Ⅱ 各大臣は、都道府県知事が前項の期限までに同項の規定による勧告に係る事項を行わないときは、文書により、当該都道府県知事に対し、期限を定めて当該事項を行うべきことを指示することができる。
Ⅲ 各大臣は、都道府県知事が前項の期限までに当該事項を行わないときは、高等裁判所に対し、訴えをもつて、当該事項を行うべきことを命ずる旨の裁判を請求することができる。


 条文を読んでいただければわかるように各大臣は「勧告→指示→裁判」という手順を踏むことになります。よって、本肢は「指示」が抜けており、「誤り」。



4 都道府県が担当する事務に関する国の是正の要求について国地方係争処理委貝会が行った審査の結果に不服があるときは、当該都道府県の知事は、この是正の要求について出訴することができる。


 条文問題です。長いですけどしっかり読んでください。


地方自治法 第250条の13
Ⅰ 普通地方公共団体の長その他の執行機関は、その担任する事務に関する国の関与のうち是正の要求、許可の拒否その他の処分その他公権力の行使に当たるもの(次に掲げるものを除く。)に不服があるときは、委員会に対し、当該国の関与を行つた国の行政庁を相手方として、文書で、審査の申出をすることができる。


地方自治法 第251条の5
Ⅰ 第二百五十条の十三第一項又は第二項の規定による審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関は、次の各号のいずれかに該当するときは、高等裁判所に対し、当該審査の申出の相手方となつた国の行政庁(国の関与があつた後又は申請等が行われた後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、当該他の行政庁)を被告として、訴えをもつて当該審査の申出に係る違法な国の関与の取消し又は当該審査の申出に係る国の不作為の違法の確認を求めることができる。ただし、違法な国の関与の取消しを求める訴えを提起する場合において、被告とすべき行政庁がないときは、当該訴えは、国を被告として提起しなければならない。
① 第二百五十条の十四第一項から第三項までの規定による委員会の審査の結果又は勧告に不服があるとき。


 よって、本肢は条文通りなので「正しい」。
 この条文を知っている人は、まずいないと思います。地方自治法は約300条にも及び全体を通して読んでいる人は皆無でしょう。
 ということで、本肢でも条文を知っている必要は全くありません。



5 市町村議会における条例制定の議決についての都道府県知事による裁定の結果に不服があるときは、当該市町村の議会又は長は、この裁定について出訴することができる。


 条文問題です。


地方自治法 第176条
Ⅰ 普通地方公共団体の議会における条例の制定若しくは改廃又は予算に関する議決について異議があるときは、当該普通地方公共団体の長は、この法律に特別の定があるものを除く外、その送付を受けた日から十日以内に理由を示してこれを再議に付することができる。
Ⅱ~Ⅴ 略
Ⅵ 前項の規定による申立てがあつた場合において、総務大臣又は都道府県知事は、審査の結果、議会の議決又は選挙がその権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反すると認めるときは、当該議決又は選挙を取り消す旨の裁定をすることができる。
Ⅶ 前項の裁定に不服があるときは、普通地方公共団体の議会又は長は、裁定のあつた日から六十日以内に、裁判所に出訴することができる。


 よって、本肢は条文通りなので「正しい」。(当該議決=条例制定の議決:176条1項)
 この条文を知っている人は、まずいないと思います。地方自治法は約300条にも及び全体を通して読んでいる人は皆無でしょう。条文を知っている必要は全くありません。


「より詳しい解説」「問題の要求レベル」「ここが合否を分ける」「問題別のまとめ解説」を収録し、合格者レベルを知ることで、アナタを合格レベルに引き上げる「過去問解説evolution 」は好評発売中です。

この解説は、「過去問解説evolution 平成20年度 行政法 」の下書き原稿となります。(解説として十分お使いいただけるレベルには達していますのでご安心ください。誤字・脱字等はご了承ください。)



問題21 地方自治法の定める町村の条例制定の可否に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。


1 町村は、住民による直接の選挙で首長を選出せず、議会で首長を選出する旨の条例を制定することができる。


 条文問題です。しかも憲法の条文です。


憲法 第93条
Ⅰ 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
Ⅱ 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。


 よって、住民の直接選挙で長を選出することは、憲法上の要請であるので、本肢は「長を選出する旨の条例を制定することができる」としており「誤り」。



2 町村は、議会を設置せず、選挙権を有する者の総会をもってこれに代える旨の条例を制定することができる。


 条文問題です。


地方自治法 第89条
普通地方公共団体に議会を置く。

地方自治法 第94条
町村は、条例で、第八十九条の規定にかかわらず、議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる。


 よって、本肢は「正しい」。

 町村の規模だと、わざわざ議会を設けるより、有権者で総会を設ける方が、簡単であり、かつ直接住民の意見を取り入れられるとして、憲法93条2項の謳う直接選挙制にかなうものであると考えられています。



3 町村は、教育委員会を設置せず、教育長にその事務を行わせる旨の条例を制定することができる。


 条文問題です。


地方自治法 第180条の5
Ⅰ 執行機関として法律の定めるところにより普通地方公共団体に置かなければならない委員会及び委員は、左の通りである。
①  教育委員会
②~④ 略


 よって、法180条の5第1項1号は教育委員会の設置を義務としているので、本肢は「誤り」。



4 町村は、選挙管理委員会を設置せず、首長またはその補助機関に選挙管理の事務を行わせる旨の条例を制定することができる。


 条文問題です。

地方自治法 第180条の5
Ⅰ 執行機関として法律の定めるところにより普通地方公共団体に置かなければならない委員会及び委員は、左の通りである。
①  教育委員会
②  選挙管理委員会
③  人事委員会又は人事委員会を置かない普通地方公共団体にあつては公平委員会
④  監査委員


 肢3の「教育委員会」を「選挙管理委員会」に変えてきただけの問題です。
 法180条の5第1項2号は選挙管理委員会の設置を義務としているので、本肢は「誤り」。



5 町村は、監査委員を置かず、監査に関する事務を外部に委託する旨の条例を制定することができる。


条文問題です。


地方自治法 第180条の5
Ⅰ 執行機関として法律の定めるところにより普通地方公共団体に置かなければならない委員会及び委員は、左の通りである。
①  教育委員会
②  選挙管理委員会
③  人事委員会又は人事委員会を置かない普通地方公共団体にあつては公平委員会
④  監査委員


 肢3の「教育委員会」を「監査委員」に変えてきただけの問題です。
 法180条の5第1項4号は選挙管理委員会の設置を義務としているので、本肢は「誤り」。



「より詳しい解説」「問題の要求レベル」「ここが合否を分ける」「問題別のまとめ解説」を収録し、合格者レベルを知ることで、アナタを合格レベルに引き上げる「過去問解説evolution 」は好評発売中です。

この解説は、「過去問解説evolution 平成20年度 行政法 」の下書き原稿となります。(解説として十分お使いいただけるレベルには達していますのでご安心ください。誤字・脱字等はご了承ください。)



問題20 国家賠償法1条にいう「公権力の行使」に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。



1 裁判官の裁判過程における行為は、司法作用にかかわる行為なので、「公権力の行使」には該当しない。


最判昭和57年年3月12日 228事件
裁判官がした争訟の裁判に上訴等の訴訟法上の救済方法によって是正されるべき瑕疵が存在したとしても、これによって、当然に国家賠償法1条1項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任の問題が生ずるわけのものではなく、右責任が肯定されるためには、当該裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど、裁判官がその付与された権限に明らかに背いてこれを行使したものと認めるような特別の事情があることを必要とすると解するのが相当である。


 判例は、国家賠償法の責任を認めるには上記灰色部分のような特別の事情があることを必要とする、としています。
とすれば、裁判官の職務行為も、国家賠償法の「公権力の行使」にあたることを前提としていることがいえます。
 よって、本肢は「公権力の行使」には該当しないとしており、「誤り」。



2 国会議員の立法過程における行為は、国の統治作用にかかわる行為なので、「公権力の行使」には該当しない。


 国会議員の立法過程における国家賠償請求の事件には2つの超有名判例があります。
 肢2を見た瞬間、ぱっと思い浮かばなければ合格には程遠いです。
 下記の判例は、そのうちの1つです。


最判昭和60年11月21日 227事件
国会議員の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとい、容易に想定し難いような例外的な場合でない限り、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けないものといわなければならない。


 記述問題で出てもおかしくない有名な判旨ですね。
 上記判例は、例外的な場合には国家賠償法の適用があるとしていますので、国会議員の立法過程における行為も、「公権力の行使」にあたることを前提としていると考えられます。
 よって、本肢は「公権力の行使」に該当しないとしており「誤り」。

 

3 国家公務員の定期健康診断における国嘱託の保健所勤務医師による検診は、医師の一般的診断行為と異ならない行為なので、「公権力の行使」には該当しない。


 最判昭和57年4月1日・判例百選231事件の問題です。
 この事件の概要は、まさに本肢と同じく、国から嘱託を受けた医師の検診で、重大な病気を見落としたがために、重大な被害を被った被害者が国家賠償法を提起した事件です。


最判昭和57年4月1日 231事件
レントゲン写真による検診及びその結果の報告は、医師が専らその専門的技術及び知識経験を用いて行う行為であつて、医師の一般的診断行為と異なるところはないから、特段の事由のない限り、それ自体としては公権力の行使たる性質を有するものではない。


 よって、本肢は、判例通りなので「正しい」。
 判例百選に載っている判例なので、絶対正解できないとダメ!と言いたかったのですが、本肢の聞いている部分は、判例百選の判旨に載っていない箇所であり、かつ本肢の正誤判断には、かなり深く読み込んで理解しないといけないことから、「難問」といえます。
 したがって、本肢は出来なくてもかまいません。
 (もっとも、本肢が問題の正解の肢なので、残りの肢を正確に判断できなければ、この問題で点を稼ぐことは厳しそうです。)



4 国による国民健康保険法上の被保険者資格の基準に関する通知の発出は、行政組織内部の行為なので、「公権力の行使」には該当しない。


 最判平成16年1月15日・判例百選222事件の問題です。


最判平成16年1月15日 222事件
本件処分は、本件各通知にしたがって行われたものであるところ、――社会保障制度を外国人に適用する場合には、そのよって立つ社会連帯と相互扶助の理念から、国内に適法な居住関係を有する者のみを対象者とするのが一応の原則であると解されていることに照らせば、本件各通知には相当の根拠が認められるというべきである。


 上記判例では、一応、通知の発出についての違法性判断をしているとみることができます。すくなくとも本肢の「行政組織内部の行為」を理由に「公権力の行使」には該当しないとはしていないでしょう。
 よって、本肢は「誤り」。



5 勾留されている患者に対して拘置所職員たる医師が行う医療行為は、部分社会内部の行為なので、「公権力の行使」には該当しない。


最判平成17年12月8日
勾留されている患者の診療に当たった拘置所の職員である医師が、過失により患者を適時に外部の適切な医療機関へ転送すべき義務を怠った場合において、適時に適切な医療機関への転送が行われ、同医療機関において適切な医療行為を受けていたならば、患者に重大な後遺症が残らなかった相当程度の可能性の存在が証明されるときは、国は、患者が右可能性を侵害されたことによって被った損害について国家賠償責任を負う。


 よって、本肢は「部分社会内部の行為」を理由に「公権力の行使」には該当しないと、しているのに対し、上記判例は、適切な医療機関へ転送しなかった医師に対して国家賠償法の適用を認める余地を残しているので、本肢は「誤り」。


「より詳しい解説」「問題の要求レベル」「ここが合否を分ける」「問題別のまとめ解説」を収録し、合格者レベルを知ることで、アナタを合格レベルに引き上げる「過去問解説evolution 」は好評発売中です。

この解説は、「過去問解説evolution 平成20年度 行政法 」の下書き原稿となります。(解説として十分お使いいただけるレベルには達していますのでご安心ください。誤字・脱字等はご了承ください。)



問題19 国家賠償制度に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。



1 違法な行政庁の処分に対し国家賠償請求訴訟を提起して勝訴するためには、あらかじめ当該処分に対して取消訴訟または無効確認訴訟を提起し、取消しないし無効確認の判決を得て、当該処分が違法であることを確定しておかなければならない。


 判例問題です。


最判昭和36年4月21日
行政処分が違法であることを理由として国家賠償の請求をするについては、あらかじめ右行政処分につき取消又は無効確認の判決を得なければならないものではない――


 よって、本肢は、「処分が違法であることを確定しておかなければならない。」としており「誤り」。
 行政法判例百選に掲載されている判例(233事件)なので、合格者レベルなら当然知っていないといけない判例です。
 国家賠償を請求するには、国または公共団体の「違法」な公権力の行使がなければいけませんが、この「違法」であることを、わざわざ抗告訴訟で確定していたのでは、被害者は「抗告訴訟で勝訴→国家賠償を提起」という、非常に手間のかかる救済を求めなければならなくなり、被害者救済の保護に欠けているといえますよね。
 よって、被害者は、抗告訴訟を提起するまでもなく、いきなり国家賠償法に基づいて損害を請求することができるとしたほうがいいのです。



2 国家賠償法は、憲法17条の規定を受けて制定されたものであるので、日本国民と外国人とを区別せずに損害賠償を認めている。


 条文問題です。


国家賠償法 第6条
この法律は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、これを適用する。


 よって、国家賠償法6条は「相互の保証があるときに限り、これを適用する。」としているのに対し、本肢は「日本国民と外国人とを区別せずに損害賠償を認めている。」としており「誤り」。
 条文を知らなくても「相互保証主義」という言葉で、覚えている方もいるかもしれません。「相互保証主義」とは、例えば、私が中国で自動車を運転していたら、信号機が倒れてきて事故にあってしまった時に、中国で私が国家賠償請求を出来るような法律がある場合に、中国人の方が、日本で国や公共団体の違法な行為により損害を受けた時も、中国人の方も日本の国家賠償請求をできることになります。



3 国家賠償法は、国または公共団体の損害賠償責任について、補充的に「民法の規定による」としているが、民法典以外の失火責任法(失火ノ責任二関スル法律)や自動車損害賠償保障法なども、ここにいう「民法の規定」に含まれる。


 まず、条文を見てみましょう。


国家賠償法 第4条
国又は公共団体の損害賠償の責任については、前三条の規定によるの外、民法の規定による。

 4条にいう「民法の規定」とは、民法典に限定されず、民法の付属法規も含まれると考えられています(櫻井P.397)。

 では、民法の付属規定として失火責任法や自動車損害賠償保障法も含まれるのでしょうか。この点について、判例があります。


最判昭和53年7月17日
国又は公共団体の損害賠償の責任について、国家賠償法4条は、同法1条1項の規定が適用される場合においても、民法の規定が補充的に適用されることを明らかにしているところ、失火責任法は、失火者の責任条件について民法709条の特則を規定したものであるから、国家賠償法4条の「民法」に含まれると解するのが相当である。


 また、自動車損害賠償保障法は民法の特別法で、民法に優先して適用されますので、上記判例があげる失火責任法と同様の特別法と位置づけることができ、国家賠償法4条の「民法」に含まれると考えられます。
 以上より、本肢は「正しい」。



4 行政事件訴訟法は、行政庁が取消訴訟の対象となる処分をする場合には、当該処分の相手方に対し、取消訴訟と併せて国家賠償法1条に基づいて国家賠償訴訟を提起することができる旨教示する義務を規定している。


 行政事件訴訟法の条文問題です。
 行政事件訴訟法、全46条を見渡しても「国家賠償」という言葉は出てきません。
 一応「教示」について同法46条に規定がありますが、やはり「国家賠償」については何ら明記されていません。
 よって、本肢は、行政事件訴訟法は、国賠を取消訴訟と併合規定することを教示する規定はないのに、これを「規定している」として「誤り」。



5 国家賠償法は、憲法17条の規定を受けて制定されたものであるから、特別法において、公務員の不法行為による国または公共団体の損害賠償責任を免除し、または制限する規定を置くことは憲法違反であり、許されない。


 判例問題です。しかも憲法の重要判例「郵便法違憲判決」の問題です。
 
平成14年9月11日
公務員の不法行為による国又は公共団体の損害賠償責任を免除し,又は制限する法律の規定が同条に適合するものとして是認されるものであるかどうかは,当該行為の態様,これによって侵害される法的利益の種類及び侵害の程度,免責又は責任制限の範囲及び程度等に応じ,当該規定の目的の正当性並びにその目的達成の手段として免責又は責任制限を認めることの合理性及び必要性を総合的に考慮して判断すべきである。


 判例は、国や公共団体の損害賠償を免除する規定を置くことを憲法違反とはせず、「目的の正当性」、「目的達成手段として合理性及び必要性を総合的に考慮して判断すべき」としています。
 すなわち、目的が正当で達成手段が合理的で必要性が認められるのであれば、免除規定を置くことが許されるというわけです。
 よって、本肢は「誤り」。


「より詳しい解説」「問題の要求レベル」「ここが合否を分ける」「問題別のまとめ解説」を収録し、合格者レベルを知ることで、アナタを合格レベルに引き上げる「過去問解説evolution 」は好評発売中です。

この解説は、「過去問解説evolution 平成20年度 行政法 」の下書き原稿となります。(解説として十分お使いいただけるレベルには達していますのでご安心ください。誤字・脱字等はご了承ください。)



問題18 行政事件訴訟法31条1項に規定する事情判決についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。



1 事情判決は、処分の違法を認める判決であるから、請求認容の判決である。

 

 条文問題です。


行政事件訴訟法 第31条
取消訴訟については、処分又は裁決が違法ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、原告の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分又は裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は、請求を棄却することができる。この場合には、当該判決の主文において、処分又は裁決が違法であることを宣言しなければならない。


 条文は「請求棄却」とするとしています。
 よって、本肢は「請求認容」としており「誤り」。



2 事情判決においては、処分が違法であることが、判決の理由の中だけではなく、その主文においても宣言される。


 条文問題です。


行政事件訴訟法 第31条
取消訴訟については、処分又は裁決が違法ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、原告の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分又は裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は、請求を棄却することができる。この場合には、当該判決の主文において、処分又は裁決が違法であることを宣言しなければならない。


 よって、本肢は条文の通りであり「正しい」。


3 事情判決においては、処分の違法を宣言するとともに、それを理由として、被告に損害賠償を命ずることができる。


 条文問題・・・ともいいたいのですが、ちょっと難しかったかなと思います。
 なお、正解は「誤り」。すなわち、事情判決が下された場合、行政事件訴訟法では損害賠償請求を認めるような特別な規定はありませんし、また、そのようなことを認める他の法律も存在しません。
 よって、事情判決では、別途、損害賠償請求(国家賠償法)を請求しなければならないということになります。


4 事情判決は、行政事作訴訟に特有な制度であり、行政不服審査法には、類似の事情裁決といった制度はない。


 条文問題です。


行政不服審査法 第40条
Ⅵ 処分が違法又は不当ではあるが、これを取り消し又は撤廃することにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、審査請求人の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分を取り消し又は撤廃することが公共の福祉に適合しないと認めるときは、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却することができる。この場合には、審査庁は、裁決で、当該処分が違法又は不当であることを宣言しなければならない。


 行政事件訴訟法31条1項とそっくりな条文が行政不服審査法40条6項にもあるんです。
 よって、本肢は「行政不服審査法には、類似の事情裁決といった制度はない。」としており「誤り」。


5 事情判決の規定は、公職選挙法上、同法による選挙の効力に関する訴訟にも準用されている。


 事情判決といえば、実際の事情判決が下された超重要判例のことを思い浮かばなければなりません。
 それは、衆議院議員定数不均衡訴訟(最大判昭和51年4月14日)です。知らない人はいませんよね?
 数少ない憲法の違憲判例の一つとして、必ず知っておかなければならない判例です。


最大判昭和51年4月14日
本件選挙が憲法に違反する議員定数配分規定に基づいて行われたものであることは上記のとおりであるが、そのことを理由としてこれを無効とする判決をしても、これによつて直ちに違憲状態が是正されるわけではなく、かえつて憲法の所期するところに必ずしも適合しない結果を生ずることは、さきに述べたとおりである。これらの事情等を考慮するときは、本件においては、前記の法理にしたがい、本件選挙は憲法に違反する議員定数配分規定に基づいて行われた点において違法である旨を判示するにとどめ、選挙自体はこれを無効としないこととするのが、相当であり、そしてまた、このような場合においては、選挙を無効とする旨の判決を求める請求を棄却するとともに、当該選挙が違法である旨を主文で宣言するのが、相当である。


 いつもより長い判旨の引用ですが、大変重要なので、しっかり読んでくださいね。
 これを見てみると、「事情判決」が用いられていることはわかります。
 では、肢5がいうように、公職選挙法に行政事件訴訟法31条1項が準用されているのでしょうか?
 答えは、「誤り」。準用されていません。
 まず、そもそも公職選挙法219条は、なんと行政事件訴訟法31条を準用しないと規定します。この時点で、本肢5が「誤り」であることはわかると思います。
 しかし、判例は、「事情判決」を用いています。どういうことなのでしょうか?
この点、判例は「行政事件訴訟法31条1項の基礎に含まれている一般的な法の基本原則」に従ったと言っています。つまり「事情判決」は行政事件訴訟法特有のものではなく一般的な法の基本原則であることを述べ、それに従い本判例も一般的な法の基本原則によって事情判決を下したのだと。
 ちょっと難しい話でしたでしょうか?



「より詳しい解説」「問題の要求レベル」「ここが合否を分ける」「問題別のまとめ解説」を収録し、合格者レベルを知ることで、アナタを合格レベルに引き上げる「過去問解説evolution 」は好評発売中です。

この解説は、「過去問解説evolution 平成20年度 行政法 」の下書き原稿となります。(解説として十分お使いいただけるレベルには達していますのでご安心ください。誤字・脱字等はご了承ください。)



問題17 訴えの利益に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。


1 建築確認処分の取消しを求める利益は、建築物の建築工事の完了によっては失われない。


最判昭和59年10月26日
建築確認は、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果を付与されているにすぎないものというべきであるから、当該工事が完了した場合においては、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われるものといわざるを得ない。


 よって、本肢は「工事の完了によっては失われない。」としており「誤り」。
 取消訴訟における「訴えの利益」で最も有名な判例といってもいいでしょう。

 「建築確認」がよくわからないという人のために少し説明すると、例えば私が、マンションを建てたい!という場合には、建物が非常に大きく、かつ多数の人を住まわせるので、何階建てなのか?防災設備は万全なのか?構造上欠陥はないのか等、様々な適合要件が課され、これらの要件を全てクリアすると「建築確認」をもらい、マンションを建てることを許されるのです。
 ここで重要なのは、この「建築確認」は、私が、マンションの工事を始めてから完成させるまでの間、適法に建築することを認める法的効力しかないということです。
 とすれば、私がマンションを完成させてしまったら、建築確認の法的効力は消滅してしまうので、マンション完成後、建築確認に対する取消訴訟を提起しても、消滅している以上、意味がない、すなわち訴えの利益がないということです。
 住民としては、建築確認の取消訴訟を提起することができるのは、私がマンションを工事させるまでの間に限られることになります。
 じゃあ、建築確認の取消訴訟で争っている間、マンションが完成してしまったらどうなるの?という疑問をもつかと思いますが、当然、訴えの利益はなくなります。つまり住民敗訴です。そうすると私は、無理やりにでもマンションを完成させようとしますよね。いわゆる建てたもの勝ちと・・・
 さあ、争っている住民はどうすればいいでしょうか?なにもしなければ建物が建ってしまいます。行政事件訴訟法の勉強が出来ている人には、簡単に答えが出せますよね?
 ここでは答えを書きません。わからなかった人は、勉強不足ですので努力しましょう。


2 保安林指定解除処分の取消しを求める利益は、洪水の危険を解消するために代替施設が設置されたとしても失われない。


長沼ナイキ訴訟 最判昭和57年9月9日
保安林の伐採による理水機能の低下により洪水緩和、渇水予防の点において
直接に影響を被る一定範囲の地域に居住する住民についてのみ原告適格を認めるべきものとしている

代替施設の設置によつて右の洪水や渇水の危険が解消され、その防止上からは本件保安林の存続の必要性がなくなつたと認められるに至つたときは、もはや乙と表示のある上告人らにおいて右指定解除処分の取消しを求める訴えの利益は失われるに至つたものといわざるをえないのである。


 よって、本肢は「代替施設が設置されたとしても失われない。」としており「誤り」。
 行政法だけではなく憲法でも重要な判例です。
 知っていて当然の判例でしょう。よって、いまさら解説はしません。



3 生活保護法に基づく保護変更決定の取消しを求める利益は、原告の死亡によって失われず、原告の相続人が当該訴訟を承継できる。


朝日訴訟 最判昭和42年5月24日
生活保護法の規定に基づき要保護者または被保護者が国から生活保護を受けるのは、単なる国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益ではなく、法的権利であつて、保護受給権とも称すべきものと解すべきである。しかし、この権利は、被保護者自身の最低限度の生活を維持するために当該個人に与えられた一身専属の権利であつて、他にこれを譲渡し得ないし(五九条参照)、相続の対象ともなり得ないというべきである。


 よって、本肢は「相続人が当該訴訟を承継できる。」としており「誤り」。
 行政法だけではなく憲法でも重要な判例です。
 知っていて当然の判例でしょう。よって、いまさら解説はしません。


4 再入国の許可申請に対する不許可処分について取消訴訟を提起した外国人は、本邦を出国した場合、当該処分の取消しを求める利益を失う。


最判平成10年4月10日
本邦に在留する外国人が再入国の許可を受けないまま本邦から出国した場合には、同人がそれまで有していた在留資格は消滅するところ、出入国管理および難民認定法26条1項に基づく再入国の許可は、本邦に在留する外国人に対し、新たな在留資格を付与するものではなく、同人が有していた在留資格を出国にもかかわらず存続させ、右在留資格のままで本邦に再び入国することを認める処分であると解される。そうすると、再入国の許可申請に対する不許可処分を受けた者が再入国の許可を受けないまま本邦から出国した場合には、同人がそれまで有していた在留資格が消滅することにより、右在留資格のままで再入国することを認める余地はなくなるから、同人は、右不許可処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を失うに至るものと解すべきである。


 よって、本肢は、判例通りなので「正しい」。

 訴えの利益の判例で、私が一番覚えにくかった判例です。
皆さんには、非常にイメージしやすい例で説明します。

 ディズニーランドには、パスポート(大人5000円位)を購入して入園しますよね?
そして当然のことですが、入場後、一度、ディズニーランドの外に出たら、パスポートは無効となり、再入場はできません。まあ、どの遊園地でもそうですね。
 ですが、ディズニーランドでは、どうしても一度、外に出ないといけない用事ができた場合、再入場の制度が認められています。再入場を認めてもらうためには、外に出る際に出口で、特殊なスタンプを手に押してもらいます(目に見えません)。そして再入場の際、特殊なライトに手をかざすと、スタンプが浮かび上がり、再入場が認められるのです。
 上記判例は、このスタンプを押してもらうことなく、一度、外に出てしまった人が、もう一度入場させろと訴えてきたところ、パスポートはもう無効である以上、再入場はできませんよという意味です。
 どうです?もう完璧に覚えられたでしょう。



5 公文書の非公開決定の取消訴訟において当該公文書が書証として提出された場合、当該公文書の非公開決定の取消しを求める利益は失われる。


最判平成14年2月28日
本件条例には、請求者が請求に係る公文書の内容を知り、又はその写しを取得している場合に当該公文書の公開を制限する趣旨の規定は存在しない。請求権者は本件条例に基づき公文書の公開を請求して、所定の手続により請求に係る公文書を閲覧し、又は写しの交付を求める法律上の利益を有するというべきであるから、当該公文書が書証として提出されたとしても、法律上の訴えの利益は失われない。


 よって、本肢は「公文書が書証として提出された場合―――取消しを求める利益は失われる」としており、「誤り」。


 この判例、常識で考えると必ず間違える問題ですので要注意です。
 例えば、私が市役所に接待費の帳簿を公開しろと迫ったところ、市役所はNOの回答。
 怒った私は、非公開の決定を取り消してもらおうと訴えを提起し、市と争っていたところ、訴訟の途中で、接待費の帳簿が証拠として提出されました。そうすると私は、その証拠を見ることができる可能性があるので、当初の目的は達せられたとして、訴えの利益がなくなるのではないだろうかということになります。
 これに対して、裁判所は、例え証拠として目的のものが提出されたとしても、訴えの利益は失われないとしています。
 その理由として、公開を請求する者が、公開に踏み切る前の過程で、公文書の内容を知ったとしても、それが公開を制限する(公開に踏み切らなくて良い)根拠とならないことをあげています。
 公開してほしい公文書の内容がたまたま見ることが出来たとしても、きちんと公開しなさいということなのでしょうね。


「より詳しい解説」「問題の要求レベル」「ここが合否を分ける」「問題別のまとめ解説」を収録し、合格者レベルを知ることで、アナタを合格レベルに引き上げる「過去問解説evolution 」は好評発売中です。