かくしごと

 
久米田康治
 
(既刊5巻)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
後藤可久士ごとうかくしは小学生の娘後藤姫ごとうひめと二人で暮らしております。
 
 
毎朝二人は一緒に自宅を出ると、娘は川の向こうの小学校へ父は坂の上の会社へ行く為別れます。
 
 
 
後藤可久士と娘の姫ちゃん
 
 
 
 
 
ところが父は会社へは行かずに途中でスーツを着替えるとドーナツ型クッションを片手にとあるアパートへ。
 
 
 
 
 
 
 
そう、可久士さんの隠し事とは描く仕事、つまり漫画家だったのでございます。
 
 
 
 
 
 
 
漫画家にも色々なジャンルがございますが、可久士先生は下ネタ漫画家で「きんたましまし」という代表作を持ち現在「風のタイツ」という作品を連載するその道15年のベテラン漫画家なのです。
 
 
 
しかし父親が恥ずかしい漫画を描いてるなんて知れたら娘が学校でいじめられるんじゃないか?
 
不登校になって心を閉ざしたらどうしよう?
 
と心配するあまり娘の前では漫画家である事を隠しサラリーマンと偽っているわけなんです。
 
 
 
 
 
 
めんどくせーな
 
 
 
 
 
そう、とてもめんどくさいっ。
 
娘が学校で「姫ちゃんのパパはお仕事何してるの?」と聞かれたり・・・
 
 
 
 
 
 
 
読者プレゼントの「風のタイツ」のプリントTシャツを着た新人担当者が知らずに自宅に上がりこんでたり・・・
 
 
 
 
 
 
 
嘘がばれそうになるたびに必死で隠そうと致します。
 
 
 
 
 
 
 
 
その娘可愛さから端を発した意味不明な言動は娘の担任の女性教師や、アイドル志願の女子高生などから好意があると勘違いされてその気にさせてしまうのでございます。
 
 
 
 
 
 
こんなやっかいな先生ですが後藤プロダクションのアシスタントさん達はいい子たちで先生の隠し事に全面的に協力をしてくれますのでますます大きな騒動になってしまうのです━━━━━
 
 
 
後藤プロの皆さん
 
 
 
 
 
 
 
 
かくしごと月刊少年マガジンにて2016年から連載中です。
 
 
いくら下ネタ漫画を描いてるからといってここまで娘に隠す必要があるのかと思いますが・・
 
 
しかしベテラン漫画家でもある彼は、漫画家に対する世間一般の認識をよくわかってるからこそ自分を卑下してしまうんですよね。
 
 
いくら漫画が売り上げで貢献しても、出版社内ヒエラルキーでは漫画部門というのは底辺らしいです。
 
 
「漫画家です。」と名乗ろうものなら必ず人は「何描いてるの?」と聞いてきます。
 
 
下ネタやエロを描いてるとは他人には言いにくいでしょうね。
 
 
だからよくわからない変わった仕事の不審人物という印象だけが残ると言うのです。
 
 
 
 
また漫画家や業界ネタが満載でエピソードの8割方が実話のようです。
 
 
 
 
「深夜複数の男女がアパートの一室に集まり何事かこそこそやっている」と通報があったと言って突然公安警察がやって来たり・・・
 
 
 
 
 
 
 
優秀過ぎるアシスタントが来てくれて感心してると、あっという間に連載が決まっていなくなってしまうなど・・・
 
 
 
 
 
 
漫画家漫画としてのリアルな裏話が楽しめます。
 
 
 
 
娘の為に突如ダークファンタジーを描こうと思いつき藤田和日郎先生に教えを乞うシーンとか、わたくしツボでした(^ー^)
 
 
 
 
 
 
そのネタの多彩さやすごいリサーチ力とよくこれだけ出てくるなというすがすがしいほどのディスり方が実に笑えるのです。
 
 
 
 
 
この作品は1話ごとに複数のショートストーリーが描かれ作者による「あとがき」がつけられて架空の雑誌のような体を為す凝った構成になっています。
 
 
基本的にはストーリー性のない1話完結のギャグ漫画で、超ネガティブな教師がクラスを引っかき回すさよなら絶望先生と似た作風になっております。
 
 
 
漫画のキャラにカッコイイからってイェーガーとかドイツ人の名前つけたら恥ずかしいとか、「誰が俺の漫画なんて読んでるんだ?」とサイン会に来た読者を全員サクラと疑ってかかったり。
 
 
この作者が醸し出す自虐と含羞は諧謔味の中に何か人柄を感じさせて嫌味がありません。
 
 
 
 
 
そしてギャグで笑わせた後は父と子のしんみりさせるいい話になっております。
 
 
 
姫ちゃんが可愛い。
 
 
 
 
 
 
AKは父親が幼女にデレデレしてる姿って正直気持ち悪いんですが(すいません汗
 
 
しかし父子家庭の父親が娘を思う心情というのは特別なものがあるみたいで、その愛情たるや凄い
ですね。
 
 
 
姫ちゃんのお誕生日会の為に唐揚げの作り方を習ったりする所とかジーンと来ました。
 
 
小さい頃は自分から抱きついてきたり一緒にお風呂入ろうとか言ったのに、思春期になると一変してうざいとかくさいとか嫌われちゃうのに悲しいな( ̄ー ̄)
 
 
 
 
 
姫ちゃんの母親の謎や、恐らく可久士先生との結婚に反対だったのでありましょう義理の父、そして時間軸が経過して高校生になった姫ちゃんのシーンが挿入されたりの意味深な展開となっております。
 
娘を溺愛するあまりのバカ親父ぶりに失笑しちゃうけど、姫ちゃんの前では結構クールで素っ気ない父親を演じてたりするのがなんか泣かせます。
 
世の中には大切なはずの子供を虐待するひどい親だっていると思えば、娘を溺愛して何が悪いか!
 
もっとやって( ≧∀≦)ノ