検証・市町村合併―合併で地域の明日は見えるか/重森 暁
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地域づくりや財政問題、住民自治、自治体行政のあり方など多様な視点から市町村合併について検討を続けてきた。その8ヶ月に渡る活動の中間報告。関西地域問題研究会では関西二府四県における市町村合併を巡る情報交換もしていた。

市町村合併は中心市街地衰退に拍車がかかり、弱い所を一層弱める恐れがある。大合併で地域衰退や路線バスの本数減少という被害まで出たようで、「大きいことはいいこと」というのは、幻想としか言えず、日本各地で合併しすぎが指摘されており、合併は一時的処置でしかない。町村から市に移ると、安かった公共料金が合併で大幅に値上がりし、村でなくなると車庫証明が必要にもなり、申請や手続きの度に離れた地域にある分庁舎に行く必要も出ており、当選に旧町村議会と比較にならない票数が要るため、旧町村内で候補者を調整しても数名の議員しか当選させられないなど、行財政効率化などになっていない場合が多い。今度は何を考えればいいかというと、住民の分離運動で分離実現。合併で両者の産業の種類に大差があると小さな町村の産業は軽視されがち。市町村大合併は不評で、はっきり言って失敗。政府が掲げた目標と全く異なる目的や結果になっており、1000以下まで市町村数を減らそうとしても減っておらず、国のご機嫌取りとしか思われていない。中心地から離れれば格差が拡がり、住民の意見が届きにくくなる恐れもあるから期待通りにならず、議員数減少も心配され、従来の地域づくり活動が継承されず、地域づくり活動成果が省みられなくなり、本庁がある地域は目が届いて各種事業が実施されても周辺部は無視され、改善を要望しても取り残しはほぼ確実。

国と地域を通じた公共・民間部門の人事流動化、合理的な広域行政体制とそれを支える責任ある人事機構、自立性と自治意識を感じさせる自主財源、金を借りずに返すこと、人件費大幅削減、大きな仕事は広域的な機能分担、複数の市町村が色々な所で契約、公認会計士等の専門家を必要に応じて雇用、専門性確保の為独立した公募人事の実施などは廃止市町村には足らなさ過ぎた。自立して住民に親しまれた町名とその歴史や文化、各地域の権力や個性、魅力、縦割り行政、利便性、財政、福祉など守り、中心地はこれからも中心地であるのがよく、小規模のままなら住民の声が届きやすく、各地域の活性化や地域強化、住民の多様なニーズへの柔軟な対応が可能だった。合併と地方分権は地域集権で、住民の恩恵は少なく、地方分権になっておらず、合併だけが垣根をなくすことでない。相互利用協定も所有施設を増やす必要性と保有数を減らせる方策だった。合併は従来の歴史、文化、各種の伝統行事といった地域の特徴が失われ、地区出身の村職員が自発的に地域文化を支えてきた職員が本庁に吸い上げられ、周辺地域が寂れ、巨大化で面倒見悪くなり、必要な仕事が増え、取り残され、冷遇され、見落とされる所が出てきて後になって負担が重くなり、十年後は交付税が減り、特例債で過大な箱物や道路等の投資もすれば職員大削減が必要で、地域の多様性や個性、魅力が失われる恐れもある。