戸建てからマンションへ。住み替え計画が、少しだけ次の段階に進んできた。
先週末に、候補となる中古マンションを二件内覧した。
ひとつは、長年なじみのある地元沿線の駅近・築浅物件。もうひとつは、思い切って都心寄り、山手線の駅に近い築20年近くの物件。
どちらも価格はほぼ同じ。ただし、そこで手に入る生活環境は、かなり違っていた。
地元沿線の物件は、大規模で、設備も新しい。下層階にはショッピングモールが直結し、マンション内にはトレーニングジムやライブラリーまである。
たぶん、かなり快適だと思う。極端に言えば、建物の外に出なくても暮らしが成り立ってしまいそうである。まあ、それはそれで少し危険な気もするが(笑)。
雨の日でも買い物に困らず、運動もできて、本も読める。建物そのものが、ひとつの小さな街のようである。
一方で、山手線に近い物件は、比較的こじんまりしている。共用設備も必要最小限。豪華さや新しさで比べれば、地元沿線の物件に軍配が上がる。
ただ、その分、部屋から外へ出るまでの動線は短い。エレベーターに乗り、すぐに街へ出られる。駅も近く、バスやタクシーも使いやすい。
片方は、建物の中で暮らしが完結する安心。もう片方は、街へ出やすい自由。どちらも便利なのだが、便利の方向性がまるで違う。
そして、いまの気持ちとしては、どちらかといえば後者に傾いている。
部屋を出て、すぐ街に出られる。目の前の道沿いには商店や飲食店が並ぶ。最寄り駅へ行き、鉄道やバス、タクシーを使い、外の空気に触れる。そういう暮らしには、まだ自分の世界を広げてくれるような魅力がある。
そしてもうひとつ、自分の中にまだ冒険心が残っていることにも気づいた。
半世紀以上住み慣れた沿線を離れて、新しい土地、新しい環境で暮らしてみたい。そんな気持ちが、思っていた以上に残っていたのである。
年齢や体のことを考えると、安心はもちろん大切だ。でも、安心だけで住まいを選びたくない気持ちも、まだ少しあるらしい。
ただ、そこで考えてしまう。病気が進行したらどうだろう。
外へ出やすい暮らしを選んだつもりが、いつか外へ出ること自体が負担になるかもしれない。そのとき、建物の中である程度完結する暮らしの方が安心だった、と思う日が来るかもしれない。
今の自分に合う暮らしと、将来の自分に合う暮らしは、必ずしも同じとは限らない。だからこそ、住み替えは難しい。
さらに、現実的な問題もある。どちらも、かなりの予算オーバーである(笑)。間取り図を眺めていると未来が広がるが、価格を見ると急に現実へ戻される。そう考えると、今回は見送るという選択肢も十分あり得る。
半世紀以上暮らしてきた中央線郊外には、当然ながら愛着がある。街の空気も、生活のリズムも、体にしみ込んでいる。
一方で、便利な公共交通インフラを使いながら、都会の利便性と刺激を受けた暮らしを経験したいという気持ちもある。
これまでの暮らしに近い安心を選ぶのか。あるいは思い切って、少し違う生活圏へ移るのか。
まだ答えは出ていない。ただ、今回の内覧で分かったことがある。
住み替えとは、単に物件を比べることではない。これからの自分たちに、どんな暮らし方が合うのか。そして、自分の中にまだどんな気持ちが残っているのか。それを確かめる作業でもあるのだと思う。
住まい選びというより、これからの暮らし方そのものを選ぼうとしている。そんなことを感じた今回の物件内覧だった。
♪ 今日の一曲 ♬
トゥーツ・シールマンス「What Are You Doing The Rest Of Your Life」。住み替えを考えることは、単に物件を選ぶことではなく、これからの暮らし方を考えることでもある。まだ答えは出ていないが、そんな問いに静かに寄り添ってくれる一曲。
What Are You Doing The Rest Of Your Life
Toots Thielemans

