ウォーキングと女の子

 

   第一章   出会い                  

   第二章   春                   

   第三章   梅雨                  

   第四章   夏                   

   第五章   秋                   

   第六章   冬                   

   第七章   初春                  

   第八章   別れと新たな出会い

 

(この物語はフィクションであり、実在する個人・組織等とは一切関係ありません)

 

 

「人生は出会いと別れの繰り返し」

   と古くから言われている・・・

 

 

 

  3

 

 「食欲の秋」を迎えた。

 

 この季節になると、果物や菓子など甘いものを求め、青果店や菓子店などに人々が集まってくる。

 

 こがね商店街には青果店が数軒あるが、どの店も客で一杯だ。

 

 夏に食べたスイカ、ぶどう、メロンなどに替わり、秋に出回るイチジク、梨、柿そして栗などが美味しそうに店頭に並び始めたからか。

 

 菓子類もそうだ。こがね商店街近くにある小さなたい焼き屋にも、客が長い列を作るようになってきた。

 

 この店には、小豆餡と白いんげん豆を原料にした白餡の二種のたい焼きが並ぶ。

 

 これらが、秋になると人々の胃袋と心を温めてくれるのだ。しかも、どちらも安く美味しいと評判になっている。

 

 たい焼き屋には、四十代の女性が二人働いている。二人は、体形も顔立ちも似ているので姉妹ではないか、と周りは勘違いしてしまうようだ。

 

 二人の名は、ゆかりと由紀。

 

 最近は、揃いのトレーナーを着てママチャリで通勤している。トレーナーの色は、ゆかりがイエロー、由紀はブルー。

 

 夏の間は、お揃いのTシャツで、主にゆかりがイエローやピンク系、由紀がブルーやグリーン系だった。

 

 二人は、高架橋下にある専用駐輪場にママチャリを停めている。

 

 駐輪場はウォーキングコース側にあるので、浩治はここで二人をよく見かける。ただ、この場所で二人一緒にいるところを見たことはない。シフトがあるのか、到着する時間が違うのだ。

 

 今朝も、いつもの時間にブルーのトレーナーを着た由紀が現れた。

 

 「由紀さん、おはよう。今朝は、あなたが先に来ましたね」

 

 「おはようございま~す」

 

 「あなたとゆかりさんは姉妹でないことは知ってますが、血縁関係もないんですか?」

 

 「よく姉妹と間違われるんですが、赤の他人です。だけど、私たちは中学校から高校まで同じ学校に通っていて、本当に仲の良い友達でしたよ」

 

 「それからどうなったんですか?」

 

 「それぞれ就職し、結婚、そして子供に手がかからなくなったので、たい焼き屋のパートを始めたんです。そこで、偶然にもゆかりと再会したんですよ」

 

 「そうなんですか」

 

 「ゆかりは、私より一年早くこのお店でパートを始めてました」

 

 「それから、昔のように仲良くなったということですね。それにしても、色は違っても同じブランドのトレーナー、本当に仲が良いんですね」

 

 「すみません。そろそろ行かなくては……」

 

 「あっ、ごめんなさい。今度、たい焼きを買いに行きます」

 

 と言って、走り去っていく彼女を見送り、ウォーキングに戻った。

 

 それから数日後、今度はイエローのトレーナーを着たゆかりに出会った。

 

 「ゆかりさん、今日はあなたが先に到着しましたね」

 

 「中沢さ~ん、由紀から先日のこと聞いてますよ。私たち、同じ店で働けてとってもラッキーだと思ってます。古くからの親友でしたから……」

 

 「そうそう、今日のお昼、家内と一緒にたい焼きを買いに行きます。そのときはよろしく……」

 

 浩治は、急いでいる彼女を引き留めるようなことは慎んだ。

 

 

 

 

 

     (4へつづく)

 

      次は、7月15日投稿予定です。