ウォーキングと女の子

 

   第一章   出会い                  

   第二章   春                   

   第三章   梅雨                  

   第四章   夏                   

   第五章   秋                   

   第六章   冬                   

   第七章   初春                  

   第八章   別れと新たな出会い

 

(この物語はフィクションであり、実在する個人・組織等とは一切関係ありません)

 

 

「人生は出会いと別れの繰り返し」

   と古くから言われている・・・

                     

 

  2

 

 浩治は、農家の三男坊で、両親は既に他界している。

 

 実家は長兄が継いでいるので、小倉に戻った後は小倉北区昭和町の賃貸マンションに入居した。

 

 孫たちと離れた生活が寂しかったのだろう。酒量が少しずつ増えていく。運動習慣もなかったので、一年後の体重は十キログラム増え七十八キログラムになっていた。

 

 

 帰郷後三年ほど経ったある日の朝、急にめまいがして倒れそうになった。

 

 不安に感じた浩治は、自宅近くのT内科クリニックを受診する。

 

 結果、高血圧症の疑いを指摘された。

 

 血液検査の結果、コレステロール、血糖などの数値も異常を示していたので心電図検査も受けた。

 

 「中沢さん、不摂生な生活を送ってましたね。かなり重い高血圧症です。コレステロール値も高いし、血糖値も高い。糖尿病の状態になっていますね。それから心電図です。これにも異常が見られます。動脈硬化も進んでいるようです」 

 

 「そんなに悪いのですか?」 

 

 「一度、大きな病院で精密検査を受けたほうがいいですね。紹介状を書きますからK循環器病センターを受診してください」 

 

 「わかりました。何か改善する方法はありませんか?」 

 

 「血圧のお薬は出しておきますが、その他はK循環器病センターでの検査結果次第ですね。それからお酒はしばらくやめてください。たばこはこれまでも吸っていなかったんですね」

 

「はい!」

 

「食事量には気を付け、おやつなど甘いものは控えてください。他には運動ですね。激しい運動はダメですが、ウォーキングなどの有酸素運動はやった方がいいですよ。ぜひ始めてください」 

 

 「わかりました」

 

 

 数日後、K循環器病センターを受診する。

 

 担当医師から血液検査、心電図検査そして頸動脈エコーの後、CT検査やMRI検査などの指示があった。

 

 一週間後、検査結果が出たので、美穂と共に医師から説明を受ける。

 

 「動脈硬化が少し進んでいるようですね。他は、T内科クリニックの紹介状のとおりの病状です。まだ重症ではないので、お薬と運動療法などで改善できると思います」

 

 「良かったぁ~。改善できるんですね!」

 

 「検査結果を報告しますので、T内科クリニックの医師にお渡しください。なお今後は、そちらで治療を受けてください」 

 

 翌日、K循環器病センター医師からの報告書をもってT内科クリニックを受診する。

 

 クリニックの医師は、にっこり笑って説明を始めた。

 

 「良かったですね、脳梗塞でなくて。薬は、血圧降下剤、コレステロールを下げる薬を出します。糖尿病の薬は、運動療法をすることを前提にしばらく見合わせます。あとは食事療法ですね。これらを続けていただいて、一か月様子を見ましょう」 

 

 この数十年間堰き止められていた不摂生の影響が、環境の変化によりダムが決壊したかのように一気に激流となって流れ始めたようだった。

 

 医師の説明を聞いている間、彼は憂鬱な気分とともに不安を感じていたものの、前向きに治療に取り組もうと心に決めていた。

 

 こうして、服薬と食事療法、運動療法による治療を始めることになったのだ。

 

 彼はまもなく六十四歳を迎える。定年までまだ少しあるが、この病気をきっかけに、出向していた会社を退職することにした。

 

 

 

   (3へつづく)

 

      次は、5月10日投稿予定です。