ネトゲ友達 | 台本、雑記置場

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【ネトゲ友達】


 俺の趣味はオンラインゲームだ。
 ゲームで知り合った友人たちと仮想世界を冒険するのが楽しくて仕方がない。
 ギルドという集団をつくり、メンバー同士で助け合いながら遊ぶのは本当に面白かった。
『なぁ、雄吾。復活の欠片を持ってないか?』
 ある日、ギルドのメンバーで特に仲がいい啓介にチャットで声をかけられた。
 復活の欠片というのはゲームで敵にやられてしまったとき、生き返るのに必要なアイテムだ。
『ぜんぜん足りないんだ。持っている分、全部くれよ』
『無茶いうなって啓介。俺だって持っていないと危ないし』
『頼むよ雄吾。レアアイテムと交換でもいいし、買い取ってもいいから。復活の欠片が必要なんだよ』
 啓介はよほど復活の欠片が欲しいのか、何度断ってもしつこく食い下がってきた。
 レアアイテムと交換してまで欲しいなんて、どうかしたのだろうか。

『なんでそんなに復活の欠片にこだわるわけ? 難易度高いところにいくなら一緒に行こうぜ!』
『そうじゃない。とにかく必要なんだよ、頼むよ。なぁ、復活の欠片持ってるんだろ。
 あるだけ全部くれよ、お願いだよ』
 俺はなんだか嫌な感じもしたし、気持ち悪くなって『悪いけど、クエストいくから』といって
 啓介とのチャットを終了した。
 メッセージにもしつこく通知がきたけれど、それも見ないふりをする。
 だけど、俺の気持ちは先ほどまでの啓介の豹変ぶりに落ち着かず、
 その日は一日ゲームに集中することができなかった。

 翌日ゲームにログインすると、同じギルドのメンバーが文句を書き込んでいた。
『啓介くんが復活の欠片をくれってしつこい』
『あ、私もそれ言われた。皆に言ってるのかな?』
 どうやら啓介は俺だけじゃなく、チームの皆にも同じことを言っていたらしい。
 おかげでギルドのなかもなんだかギスギスしていた。
 俺はメッセージ機能を開き、啓介宛に文章をしたためた。
『おい啓介! お前いい加減にしろよ。ギルドの空気を悪くするなって』
『雄吾、お前復活の欠片持ってない? 持ってたら譲って欲しいんだけど。交換でもいいからさ』
『いいから! 話を聞けよ』
『雄吾、頼むよ、なぁ……』
 全く話が成立しない。いったい啓介はどうしてしまったのか。

 そういえば啓介とは前に通話アプリのIDを交換していたはずである。本名もそのまま啓介だと言っていた。
 俺はスマホを取り出して、通話アプリを使って啓介にコールした。
「もしもし」
 通話に出たのは、低く沈んだ女性の声であった。
 俺はひどく困惑した。啓介のやつ、実は女だったのか?
「あの、こちら啓介の通話IDで合ってますよね?」
「はい、でも弟は一週間前に亡くなりました。交通事故にあって……」
「え、亡くなった?」
「はい。生前、弟と交友のあった方でしょうか?」
 女の人の声が遠くに聞こえた。

 啓介が死んだ――?

 もしもそれが本当のことだとしたら――。
 今も画面の向こうでメッセージを送り続けている、ゲームのなかの啓介は一体……。

『復活の欠片をくれよ。雄吾、頼むよ。全然足りないんだよ、なぁ――』