魔女の酒場で逢いましょう ~第一話、魔女とフランケン~ | 台本、雑記置場

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魔女の酒場で逢いましょう ~第一話、魔女とフランケン~


登場人物


・魔女レイラ
曲者だらけの魔法の森で酒場を営む魔女。元気な姉御でツッコミ系。
皆のお姉さんだったはずが、いつの間にかお母さんに?


・フランケンシュタイン、フランク
不器用で力持ち。人一倍の優しさを持つ。「ハカセ」によってつくられて、
ずっと二人で地下で生活していた。


・サキュバス、エンヴィ
サキュバスでありながらウブで純真、夢魔らしい事は出来ない。
誰が呼んだかピュアビッチ。しかしその魔力は魔族でも随一。


・デュラハン、デュラさん
中身はおじさんなデュラハン。首の無い騎士の亡霊で、首は常に抱えている。
愛馬スレイブニルと共に魔女の森でのんびり暮らしている。


・メデューサ、メルル
ナルシストなメデューサで、鏡を見てはしょっちゅう石になっている。
そのたびにレイラに怒られるが、人と目を合わせられない事がコンプレックス。


・ハカセ
森の奥の廃屋で人知れず研究を続けていたハカセ。
病により死亡するものの…


~劇中表記~
レイラ:♀:
フランク:♂:
エンヴィ:♀:
デュラ:♂:
メルル:♀:
ハカセ:♂:


・・・・・・・・・・・・


フランク:ハカセ、ビョウキ、大丈夫か? ずっと、つらそう。
ハカセ:(フランク…、わしはもう……)
フランク:ハカセ、返事をして。ハカセ? どうした、ハカセ?
ハカセ:(わしはもう、死んだんじゃ。フランク…)


フランク:ハカセ、ビョウキ、苦しいのか。オレ、外で、イシャというの、
  探してくる。
ハカセ:(フランク。…死、というものがあるのじゃ。フランク)
フランク:外、はじめて。怖い。でも…。ハカセ、待っていて。
ハカセ:(フランク…お前はもう、自由になるのじゃ……)
フランク:ピノ、居てくれたら、良かったのに。ピノ、いない。俺、外、怖い。
  でも、ハカセ……、行ってきます。


・・・


エンヴィ:好き、嫌い、好き、嫌い、好き……好きぃ!やったぁぁぁ!
  ロア様はあたしのこと、好きぃ!
レイラ:まぁたやってる。魔力のしずく一杯でいつまでも粘らないで、とっとと
  男漁りにでもいきなさいよ。あんた夢魔でしょ?
エンヴィ:おおお、おと、男!男漁りぃ!?
メルル:エンヴィちゃんはサキュバスなんだから当然でしょう?サキュバスって
  言ったら~別名夢魔!または淫魔!男の精を奪ってそれを糧に生きる魔族

  なんでしょ?


エンヴィ:せせせせ、せいぃ!? ひいいメルルの変態!えっち!
レイラ:あんたねぇ、そうやって花の蜜だけで生きていたら、弱っていく一方よ。
  私特性の魔力のしずくが無かったら、どうなることやら。
エンヴィ:だってぇぇぇぇ…。ロア様以外の男の人となんて…。
レイラ:そのロアにも未だに告白も出来てない癖に、良く言うよ。


エンヴィ:あたしとロア様はまだ知り合って10年よ!こ、告白とかそんな…!
メルル:人間に恋するなら、人間の感覚もちょっとは学びましょうよ~…。
  人間で10年って言ったら結構なもんだから…。
レイラ:ロアだってちびっこの騎士見習いが、今じゃ騎士団長補佐よ。いっくら
  ロアが鈍いったってねぇ、このままじゃどこぞの貴族の娘に取られるわよ~。
メルル:ロア君、なかなかいいお顔してるものね~。


エンヴィ:そ、そんなぁ…ロア様…。うにゅう……
デュラ:何やら今日も騒がしいのう、魔女殿。
レイラ:あらデュラさん、いらっしゃい。今日は独り?スレイブニルは?
デュラ:今日は水辺を駆けたのでな。あやつの蹄(ひづめ)で店を汚しては悪い。
  表でのんびりとしておるわ。どれ、よっこいしょ…。


レイラ:ちょっとデュラさん、頭をテーブルに置かないで。もう、いつも
  言ってるでしょう。
デュラ:しかしだな。我輩もいつも抱えているとおちおちゆっくり出来ぬ…
メルル:自分の首くらい~、自分で抱えていて下さい。
エンヴィ:デュラさぁぁぁ~ん!聞いてぇぇぇぇ!


デュラ:むう。この娘はまぁた男の事で泣いておるのか?
エンヴィ:ロア様が貴族の娘にー!盗まれちゃうぅ~!
デュラ:話が見えんのぉ。
メルル:うかうかしていると、騎士団長補佐にまで登り詰めたロア君は、結婚
  しちゃうかもー、って話をね。


デュラ:ほうほう、あの小僧もなかなかに良い騎士になったからのぉ。いや、
  あれを見ていると我輩の若い頃を思い出す…、昔は。。。
レイラ:ちょっとまって。一人で騎士団に立ち向かった話しはもういいから。
デュラ:いや、それでは無く橋の上で…
メルル:橋の上で戦う戦友を救いに駆けつけたお話しは、これで25回目ね。


デュラ:う、うぬぬ…。回数まで数えられては我輩の面目が丸つぶれ…。
レイラ:はいはい。デュラさんの顔は潰れるどころか首から離れてるでしょ。
デュラ:手厳しいのー。
エンヴィ:そんな事よりロア様がー!


メルル:はぁ…、私って、とってもキレイ~…。
レイラ:こら!メルルは鏡を見つめない!また石になるわよ!
メルル:えええ、でもでも私ちゃんってば,かわゆ過ぎて…かわ、ゆ……い……
エンヴィ:あ、石化した。


レイラ:はあぁ~……ほんっと手のかかる…
デュラ:騒がしいことよの。…む? 結界に何か…何奴っ!?
レイラ:ちょっと!? 私の結界が破られて…。なんなの!?


SE;ドア開く


フランク:ハカセ、ビョウキ、助けてあげて、欲しい。
デュラ:こやつは…?見ない顔だのう。
レイラ:私の結界を破る奴よ、何者なの?
フランク:俺、名前、フランク。ハカセ、そう呼ぶ。ハカセ、動かない。俺、
  医者、探してる。


エンヴィ:ハカセさんが病気って…。そんな人、この森に居たっけ?
フランク:ずっと、離れたとこ、森の隅っこ。俺、おもて、はじめてだけど、
  地図、見た。歩いた。ハカセ、心配…。
デュラ:ふうむ…。メルル、森の事はお主が詳しく…ああ、石だったな。
レイラ:はぁ…。とりあえず、メルルを治しましょう。あなた、フランクって
  言ったかしら? ちょっとそこに座って待っていて。ええと、石化の解除は…


フランク:ここ、色々、ある。明るい、楽しい。ハカセ、ここに、これたら、
  きっと、喜ぶ。
エンヴィ:はい、フランクくん、これ。お茶だけど。
フランク:ありがとう。いただき、ます。…あ。壊れた…、ごめん…。
デュラ:樫(かし)の木をくりぬいたコップを片手で潰した?ふむ、本人に自覚は
  あまりなさそうじゃが、かなりの怪力よのう。見た目もごつい。そして何より
  魔女殿の結界を素手で破ったのだ。ただの迷い人でもあるまいな。


エンヴィ:でもでも、悪意は感じないわ。きっと、優しい子。あたし、そういうの
  わかるもん。
レイラ:かの者の呪縛を解き放ちたまえ…!ふう、メルル、気を付けなさい。
メルル:あら~? えへへ、レイラちゃん、ごめんねぇ。うん?この子は?
  フランケンシュタインなんて、珍しいのね。
デュラ:ほう、これが世に聞くフランケンシュタインか。


レイラ:へえ、なるほどねぇ。それであの怪力か。魔に属する生き物だからこそ、
  結界に素手で触れる事も出来たって訳か。というとハカセというのは…
エンヴィ:フランクくんの、生みの親かしら。そのハカセが病気なのね。
メルル:この森に、フランケンシュタインを作れるほどの人がいるなんてね~。
フランク:ハカセ、もうずっと、動かない。助けて、欲しい。


エンヴィ:ねえレイラ…。
デュラ:ふむ、ここは一つ…。
メルル:魔女の出番、かしらね?
レイラ:なんでそうなるのよ。私はね、面倒は嫌いなの!


フランク:…ハカセ、いないと、俺、さみしい…。
エンヴィ:フランクくんがさみしいと、あたしもかなしい…。
デュラ:じゃあついでに、我輩もかなしいかもしれん。
メルル:うふふ~、レイラ。観念したら?


レイラ:はあ…。ほんっとにもう! いいわよ、ハカセって人のとこに行けば
  いいんでしょ、行くならさっさと行くわよ! フランク、案内して。
フランク:ありがとう、魔女さん。俺、嬉しい、すぐ、案内する。
メルル:フランケンシュタインを作るハカセ、どんな生き物かしら?
エンヴィ:かっこいいかなぁ?

デュラ:どれ、後学のため、ここは我輩もいこうかのう。ウキウキするのう。
レイラ:あんたら…。


・・・


フランク:ここ。ここの、地下。俺たち、住んでる。ハカセ、居る。
メルル:森の隅の廃屋。あったわねぇ~、こんなとこ。
エンヴィ:変な感じがする。この地下…。
デュラ:何かあれば我輩の後ろに下がるのだぞ、娘っ子たち。


レイラ:導きの炎よ、我が道を照らしたまえ…。足元に気を付けて。
フランク:明かり、凄い。きっと、ハカセ、喜ぶ。ここ、ハカセいる。
  ハカセ、戻った。ビョウキ、なおるぞ。ハカセ…
レイラ:…これは……。
エンヴィ:死んでる…。それどころか、もう随分と時間が…


デュラ:フランクとやら、ハカセ殿がこうなってから、どれ程の時間がたったか
  わかるかのう?
フランク:俺、わからない。俺、ハカセの手伝い、何も出来ない。俺触ると、
  機械、壊れる。ハカセ、痛がる。俺、何も、出来なかった…。
メルル:ちょっとごめんね、フランク。ハカセに触るわよ~。うん、死後…
  そうね、一か月以上は経っているわ~。でもこの地下室は、いわば天然の
  冷凍庫のようになっている。
エンヴィ:それで遺体が綺麗なまま残ったのね。


レイラ:それをフランクは理解出来なかった…、ううん。死を知らないのかしら。
フランク:死? 死、って何?俺それ、知らない。ハカセの、ビョウキ、いつ、
  なおる?
デュラ:死を知らぬか。…悲しきことよの。
レイラ:なまじ術が完成しすぎていたのね。ハカセの力が無くとも、フランクは
  止まることなく動き続けている。


エンヴィ:…この空間、ただ冷たいだけじゃない。何かがとどまっている。
  残留思念のような、何か…。このままじゃ、きっと良くないわ。
デュラ:ほう。悪霊のたぐいかのう?
エンヴィ:違うと思う。でもこのままじゃ森に流れる魔にあてられて、悪いものに
  なってしまうかもしれない。
デュラ:なれば、今ここで払うしかあるまい。


メルル:でも、この場所にある残留思念なら、もしかしたらハカセという人の
  ものかもしれない。エンヴィちゃん、具現化出来そう?
エンヴィ:任せて! 渦巻く思念よ、我が呼び声に答え給え。我が魔力を汝に
  さずけん。今、現世(うつしよ)に体現せん!
レイラ:これは…老人?
フランク:おお、ハカセ! 俺、会いたかった、ハカセ!


ハカセ:ふう…。やれやれ、ようやくお前に声が届くのう、フランク。
  エンヴィさんと言うたかの、ありがとうよう。それにそっちの皆様も。
レイラ:礼にはおよばないわ。率直に聞くけどあなた、ここで何をしていたの?
ハカセ:ふむ、お主はなかなかにせっかちよのう。ここはわしの研究室じゃ。
  科学と錬金術を組み合わせ、とある研究をしておったのじゃよ。
メルル:科学と錬金術…。フランクはその研究で…?


ハカセ:いかにも。フランクはわしの研究の集大成じゃ。何より、とても良い子に
  育ってくれた。
デュラ:これほどの研究を何故このような場所で行っている?国に売り込めば
  大層な施設を寄越してくれよう?
ハカセ:ひっそりと行う必要があったのじゃ。誰にも知られる事無く、わし一人で
  ひっそりとな。
エンヴィ:それは、どうして?


ハカセ:わし自身が死した今、特に隠すこともないかの。わしが目指したものは
  のう、反魂(はんこん)の法なのじゃ。
レイラ:反魂?この実験施設が?
ハカセ:そうじゃ。ネクロマンサーのような呪術では、哀れなアンデッドを
  生み出す事しか出来ぬ。だが、科学の力と魔術を融合すれば、それは可能で
  ないかとかけたのじゃよ。
フランク:はん、こん…。ハカセ、いつも、難しい。


エンヴィ:でも、だからといってこんな所でずっと一人で?
ハカセ:わしが蘇らせようとしたのはのう、息子じゃ。戦果に巻き込まれて死んだ
  息子をなんとかして蘇らせようと思っての。わしがあの戦が始まった日、
  家に駆けつけた時には、妻も、ほかの家族も、もう亡き骸すら残って
  いなかった。せめて、せめて息子だけでも、フランクだけでも…。
  そう願ってしまったのじゃ。
デュラ:戦か、業が深いのう。
レイラ:それで戦を避けて、魔女が住むと言われたこの森に来たのね。


ハカセ:そうじゃ。わしはここで研究に没頭した。研究は思い通りに進んだ。
  ただ、魂を入れる器が無かった。フランクの元の身体は損傷が激しく、
  研究が軌道に乗ったころにはもう蘇生も出来ぬ状態であった。
メルル:そこで、フランケンシュタインの伝説を紐解いたのね~。
ハカセ:うむ。呪術をもちいてフランクの魂を結晶にし、その結晶を乗せる身体
  としてわしが選んだのは、フランケンシュタインじゃった。もう二度と、
  理不尽な暴力で傷つき倒れない、強靭な身体とパワーを持った器じゃ。
  そうして、ずっと二人で生きていこうと思ったのじゃがな…。わしの
  身体はもう、限界だったのかのう。研究を終えたら、このざまじゃよ。
フランク:俺、とても、じょうぶ。でも、力、うまく抑えられない。
  ハカセの手伝いも、出来ない。


ハカセ:ほっほっほ。フランク、そんな事はない。お前さんは随分とわしを
  助けてくれたよ。本当に、ありがとうよ。…なあ、フランク。
フランク:どうした、ハカセ?
ハカセ:外の世界は、どうであった?
フランク:綺麗で、楽しかった。この人たち、明るい、優しい。あったかい。
  俺、ハカセ以外の、あったかい、初めて。


ハカセ:そうかそうか、暖かいか。…のう、お前さんたち。これも何かの縁じゃ。
  一つ、頼まれてくれぬか?
レイラ:…何よ?
ハカセ:このフランクを、わしの息子をお前さんたちの近くに置いてやっては
  くれぬか?とても優しい、良い子なんじゃ。わしには、この子に世界を
  教える事が出来なかった。生きる術も、身につけさせてやれなかった。
  わしの死すら、教えられなかったのじゃ…。ただただ、無責任にこの子に
  新しい命を、生命を授けてしまった…。どうか…
レイラ:ちょっと待って!そんな事を言われたって困るわ。


ハカセ:フランクはおそらく死ぬことも無い。空腹や病で倒れることも無い。
  このままでは、永遠に独りになってしまうかもしれぬ。心なき者に、利用
  されてしまうかもしれぬ。そんなところに、息子をほうってはおけん。
  フランクが暖かいと言った、おぬしらに頼みたい。
デュラ:無双の力を持つ、無垢なる赤子か…。
メルル:外で生きれればまだいいけど~。下手をすれば魔導士たちの研究材料よ。
エンヴィ:そんなぁ!ううう、レイラぁ…。


レイラ:な、何を皆して私を見ているのよ!子供の教育なんて、冗談じゃあ
  ないわよ!
フランク:話、よく、わからない。俺、ここで、ハカセと居る。ずっと、居る。
  外、暖かい、綺麗。でも俺、ここいる。ハカセの、傍に居る。
ハカセ:フランク、わしはもう、死んだのじゃ。そこに横たわっているのが、
  今のわしのぬけがらじゃ。お前と話すことも出来ん。研究も出来ん。
  何かを教えてやることも、もう出来ないんじゃ。
フランク:なんでそんなこと言う! ハカセ、今、ここにいる。


ハカセ:不思議な力を持った者たちのおかげじゃな。人ならざる者たちよ。
  どうか、この子をお前たちの家族に加えて欲しい。何も知らぬまま死んだ、
  哀れな迷い子じゃ。
フランク:俺、ハカセと、いられない? どうして? かなしい。
ハカセ:聞き分けるのじゃ、フランク。わしの最後の、お願いじゃ。
フランク:ハカセ…。


ハカセ:…この通りの子じゃ。ほうりだしたまま死んだわしの代わりに…。
レイラ:でも…
エンヴィ:…もういい!レイラには頼まないもん、フランクくん。あたしと一緒に
  行こう!
メルル:あらら、これは意外~。


デュラ:子供が子供を育てるとは、前途多難よの。
レイラ:エンヴィ、あんた!そんな安請け合いを…!
エンヴィ:安請け合いなんかじゃない!フランクくんはね、ずっと寂しかったの!
  あたし、わかるんだもん。サキュバスの力が教えてくれる。彼の孤独さも、
  哀しさも、優しさも…!もうこれ以上、この子に寂しい思いをさせない!
ハカセ:…ありがとうなぁ。お嬢ちゃん。


レイラ:はぁ…。もういい、もういいわ。…皿洗いからよ。
メルル:んん~?
レイラ:エンヴィに教育なんて出来るわけないでしょう!いいわよもう!うちの
  店で雇えばいいんでしょ!皿洗いからみっちり教育してやるんだから!
  フランク、出来る!?
デュラ:ふふ、不器用なことよの。


フランク:ハカセ、俺、俺……
ハカセ:行くのじゃ、フランク。もう、ここを出る時じゃ。お前は優しい。
  どうかこれからも、その優しさを無くさないでおくれ。わしは消える。
  だがのう、たとえこの世界から消え去っても、お前の中にずっとおるぞい。
フランク:ハカセが消えるなんて、いやだ!
ハカセ:目で見えなくなるだけじゃ。わしの心にいつでもお前がいるように、
  お前の中にわしはおる。よいな、フランク。


フランク:俺の中に…ハカセ、いる?
ハカセ:ああ、いつでも一緒じゃよ。わしら親子に別れなど無い。
フランク:ハカセ……。
ハカセ:…さあ、もうこの姿も消え去る時かの。皆の者、ありがとうよ。
  フランクを、よろしく頼む。


エンヴィ:おじいちゃんも、雲の上で元気でね!
メルル:あなたの研究、私が色々見ておきますわ。
デュラ:お子さんは我らがあずかろう。ご安心めされよ。
レイラ:ったく。うまいこと交渉してくれるんだから。せいぜい、すっきり悔い
  無くいきなさいよね。


ハカセ:…ありがとう。…フランク、さらばじゃ……。
フランク:ハカセ…。さようなら。
ハカセ:…。 
エンヴィ:…。
メルル:…。
デュラ:…。
レイラ:……。
ハカセ:…あれ?


レイラ:何よ。言うだけ言ったでしょ。ぱぁっと成仏しなさいよ。
ハカセ:うん。いや、うん。こう、天にも昇る気持ちなんじゃが…あれ…?
エンヴィ:あたし、魔力出すの止めたよ?あれれ?
メルル:冷凍室と化した部屋、エンヴィの並外れた魔力、ハカセの強い意思…

デュラ:ああ~、うん。我輩、理解した。
フランク:ん? んんん???
レイラ:ま、まさか……転生!?
ハカセ:えー、あー、こほん。というわけで、フランクはよろしく頼むぞ、
  魔女のお嬢さん!がっはっはっはっはっは…!
レイラ:ふざけんなー!!


・・・


メルルN:エンヴィの魔力を受けて、ゴーストとして思念だけで転生したハカセ。
  でも、思念体はとっても危険な存在。魔に毒されやすいの。だから、皆で
  あの家に結界を張って、ハカセは一人、今もあそこで暮らしている。
   え?ハカセの子供はどうしたかって?それは…



レイラ:くぉらフランクー!また皿を割ってー!!
フランク:魔女様、あの、その…ごめん。
エンヴィ:これで本日10枚目、なかなかうまくいかないわね~。
デュラ:やはり、無理があるんじゃないかのう?


レイラ:うちにはただ飯食いを置いておく余裕なんてないのよ!何が何でも!
  働いてもらうからね!いい、フランク!
フランク:は、はい。俺、がんばる。がんばって、ハカセに、褒めて貰う。
  だから、皿洗う…。…あっ。
レイラ:また割った!ああ~~、もう!ほんっとにこの子は!



メルルN:フランクは、レイラの店で毎日仕事を教わっているの。なんだかんだ
  言って、レイラは一生懸命あの子に生き方を教えているわ。彼、エンヴィの
  恋愛話を聞いてはいっつも二人で泣いているんだから。きっと、ハカセも
  喜んでいることでしょうね。



レイラ:もういい!皿洗いはいいから、外に出て薪を割ってきなさい!
フランク:お、おう!俺、まき割り、得意。外、行く!…あっ。
レイラ:ドアを壊すなー!! 


・・・


続く