無し無し男の死神祓い | 台本、雑記置場

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無し無し男の死神祓い

CAST
・宮坂亮太(みやさか りょうた)
無職の青年(20~23イメージ)当てもなくブラブラと歩いていた所を少女に
呼び止められて死神祓いの商売につく。
・宮坂啓子(みやさか けいこ)
亮太の姉(23~27辺り)高校を卒業後、亮太を女手一つで育ててきた。
・死神、川西咲耶(かわにし さくや)
見た目は少女だが死神。素性を隠し亮太に死神祓いの呪文を教える。
・夫人
財閥の夫人
・太郎
財閥のおぼっちゃん

セリフ量
亮太>死神=姉>他

~役表・劇中表記~
亮太:♂:
啓子:♀:
咲耶:♀:
夫人:♀:
太郎:♂:
配達員:♂:(セリフ僅か・被り推奨)

(被りの場合3~5人)
亮太・配達員:♂:(1部1人掛け合い有り)
啓子・夫人;♀:
咲耶・太郎:♀:


※セリフナンバーは飛んでいますが、カットした部分があるので仕様です。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


01啓子:亮太、朝よ!いい加減起きなさい!
02亮太:ん、ふあ…なんだよねえちゃん、いたの?
03啓子:いたの?じゃないわよ!今日は仕事は休み!ほら、掃除の邪魔だから
  さっさと起きて!
04亮太:…今、何時?


05啓子:もう九時よ、九・時!まったく、毎日毎日働きもせず寝てばっかで!
  あんた、いっつもこんな時間に起きてるわけ? 
06亮太:はぁ…?まだ九時ぃ?…おやすみなさーい…。
07啓子:こらー!何寝直そうとしているのよ!起きなさい!あんた普段一体何時に
  起きているのよ!?
08亮太:ん~…うっるさいなぁ…。何時とか決まってないよ…。日替わり…。


09啓子:日替わり!じゃなーい!そんな適当でこれから生きていけると思ってるの?
10亮太:ねえちゃんがいれば余裕だよ、よゆー。
11啓子:あんたねぇ、いつまで私に甘えているつもり?
12亮太:いつまでも~…。


13啓子:バカいってんじゃないわよ!お姉ちゃんが結婚したらどーする気!?
14亮太:だいじょうぶだよ、そんなもん。
15啓子:はぁ?何がだいじょうぶだっていうのよ?
16亮太:だってさ、くくく…


17啓子:ちょっとぉ、なに笑ってるのよ!
18亮太:だって、こんなガサツなねえちゃんに、嫁の貰い手なんて絶対ないって~!
  あっははは!
19啓子:…なんですってぇ…?
20亮太:だからぁ、こーんなガサツなねえちゃんに貰い手なんて…



21啓子:うるさーい!嫌味の一つもいう元気があるならハローワークでも行って
  きなさーい!
22亮太:うわぁぁぁぁ!ねえちゃん、ごめんてー!
23啓子:いいから出てけー!仕事見つけるまで帰ってくるんじゃなーい!
24亮太:ね、ねえちゃ~~ん!!


・・・


25亮太:いっててて…。ほんとに殴って追い出す奴があるかよぉ…。おーい!
  ねーちゃーん!…ああ、こりゃあ駄目だ。ほとぼりが冷めるまで少し散歩でも
  するしかないなぁ…。

26亮太:ふぅ~。学校卒業して2年。職歴なし、ろくな学歴なし、資格なし…。
  こんなんじゃハローワーク行ったって、ブラック企業しか入れるとこなんて
  ないっつーの。ったく、ねえちゅんはそこんとこわかってねーんだから…。

  はぁ…けどまぁ、ねえちゃんの言う通り、このままでいいわけでもない
  んだよなぁ…。世の中は社会にに出ろっつーし、けどその社会は俺みたいな
  ダメ人間は雇ってくれねーし…。八方ふさがりじゃねーか!あ~、くっそ!
  どーしろってんだよー!!


SE:足音


28亮太:はぁ…やってらんね。もう1本吸う……あれ、もうカラ?…はぁ。
  そういや起きてからなんも飲んでねーや。自販機…
  あった。ええと…小銭を…
5,6,7,8,9…。90円…。おいおいウソだろ…

  はぁ、とことんツイてねぇ…飲み物も満足に買えないのかよ。あ~、

  金が無いのは首がない事よりたち悪いっつうけどあれはほんとだな!死にてぇ…
  こんな無し無し人生もーごめんだ!死にてぇー!


SE:足音近づき止まる、お金の入る音。


30亮太:…えっ?
31咲耶:どれ?
32亮太:はぁ…?
33咲耶:だから、どれを飲みたいわけ?


34亮太:え、あ、これ・・・。
35咲耶:ふうん。 はい。
36亮太:あ、ど、どうも…。
37咲耶:人の顔じろじろ見て、何よ?


38亮太:いや、何よ…って。なんでおまえ、俺にジュースおごってくれんの?
39咲耶:別に、なんとなくよ。それよりさ、つったってないで、座りましょ。
40亮太:おいおい!ちょっと待てよ!…行っちまった。待てってば!


41亮太:なあ、一体なんなんだよ。いきなりジュースおごってくれたり、
  座れって言ったり。
42咲耶:大きな声で独り言なんて言っている奴がいるから、どんな人間か見に来た
  だけよ。
43亮太:ああそうかよ。で、このジュースは?
44咲耶:特に理由はないわ。自販機の前でお金足りなくって嘆く人なんて、初めて
  見たから、なんとなくよ。


45亮太:ふ、普段はちゃんとジュース買う金くらいもってらぁ!今日はたまたま、
  ねーちゃんにいきなり家追い出されて…。
46咲耶:あっそ。どーでもいいわ。
47亮太:こいつは…じゃあ何の用だよ!?  
48咲耶:君さぁ、さっき「死にたい」って言ってたけど…本当?


49亮太:そんなことまで聞いてたのかよ…。ああそうだよ!
50咲耶:へええ。なんでなんで?
51亮太:なんでって…さっきの独り言、聴いてたんだろ?
52咲耶:金無し職なし資格なしの、能無し~だっけ?


53亮太:能無しとはいってねぇ!
54咲耶:そうだっけ?
55亮太:そうだよ!…とにかく、なんにもなくってずっとこのままみじめな思いを
  するくらいならいっそ死んじゃおっかなーって。
56咲耶:ふうん。なるほどねぇ。じゃ、死ねば?


57亮太:なっ!?
58咲耶:死んじゃおうって事でしょ。死ねば死ねば?まぁ、どーせ君は死ねないと
  思うけどね~。
59亮太:は?死ね、とか死ねない、とかなんなんだよお前…。
60咲耶:知りたい?


61亮太:もったいぶってないで、教えろよ!何が言いたいんだよ!
62咲耶:君、バカ?バカなの?
63亮太:なんだとぉ!
64咲耶:だ か ら !言っているでしょ。死にたきゃ死ねば。けど、どうせ
  君は絶対に死ねないって。


65亮太:なんでお前にそんなことがわかるんだよ!
66咲耶:だって、私死神だもん。
67亮太:はぁ!?
68咲耶:聞こえなかった?耳まで悪いわけ?しにがみって言ってるの。


69亮太:お前…俺をからかってんのか?
70咲耶:ううん。でもまぁ…信用出来ないわよねぇ。
71亮太:当たり前だろ。お前はどう見ても普通の女の子じゃねーか。
72咲耶:そう。じゃ、いこっか!


73亮太:ん?いきなりどこへいくってんだよ?
74咲耶:そうねぇ…マンションの屋上とかどう?
75亮太:屋上?なんでまた?
76咲耶:死ぬんでしょ。飛び降りでもしたら?人の少ないマンションなら、
  そんなに迷惑にもならないわよ~?


77亮太:い、今死ねってのか!?
78咲耶:どうせ死なないって。それともなぁに?死んだほうがマシって言葉は嘘な
  わけ?
79亮太:う、嘘じゃねーよ!
80咲耶:じゃ、行きましょ。ほらほら。

81亮太:うわ!お前、結構力が。。。引っ張るなって…!


SE:車が何台も走ってる音


82咲耶:あれ、赤信号だ。
83亮太:あ~…服切れるかと思った。ったく、いきなり引っ張るなよな!
84咲耶:う~ん・・・
85亮太:おい!お前、人の話を聞いて…
86咲耶:えいっ!


87亮太:え、おい、うわぁぁぁぁ!

SE:クラクション

88亮太:お、お前!!いきなり何しやがる!
89咲耶:死ななかったでしょ?
90亮太:え?

91咲耶:いきなり道路に突き飛ばされて、大型トラックの前に出て、でもあなたは
  かすり傷1つ負っていない。そうでしょ?

92亮太:そ、それはたまたまトラックの運転手がうまいこと…
93咲耶:違うわ。あなたの寿命がまだまだ残っているからよ。
94亮太:そんなもん、決まってるわけが…

95咲耶:完全に決まっているわけではない。普通はね。でもたまにいるのよ。
  君みたいな人。

96亮太:俺みたいな…ひと?
97咲耶:そう。そう簡単には死なないで、長い年月を生きる人間。私たち死神には
  それがわかる。
98亮太:ど、どうして?
99咲耶:死神は魂の案内人。死んだ人の魂を迷わぬように導く役目をもった神。
  だから人の寿命が見えるの。あなたはまだ死なない。


100亮太:…信じられねーよ。
101咲耶:あらそう。じゃ、行きましょ。
102亮太:おいおい…
103咲耶:ほら、もう信号青よ。道路わたるわよ。

104亮太:お前、ほんとに屋上まで連れてく気か?は~~な~~せ~~!


SE:階段をのぼる


105亮太:はぁ、はぁ、はぁ…離せ‥もうのぼれねー…。
106咲耶:なによ?まだ7階よ。だらしないわね。
107亮太:おまえ…普通7階分も階段のぼったら息切れるもんなんだよ…!
108咲耶:私人間じゃないから、そういうのよくわかんないわ。


109亮太:はいはい…くそ、ただものじゃないってことはわかったよ。
  あー、疲れた。
110咲耶:まあ、これくらいの高さでもいいかな。
111亮太:ああ?
112咲耶:んしょ…


113亮太:おい、お前俺のベルトもって一体…まさか…
114咲耶:えいっ!

115亮太:人を7階から捨てるなぁぁぁっぁ!うわぁぁぁぁ…


・・・

116咲耶:は~い、お疲れ様~。
117亮太:お疲れ様、じゃねえ!てめぇいきなり何を…!
118咲耶:ほら、無傷。
119亮太:えっ?


120咲耶:七階から落とされたのに、全くの無傷じゃない、君。これで信用する気に
  なったかしら?
121亮太:えっ!えっ?ええええっ!?…ほ、ほんとに、どこも怪我してねぇ…。
  ウソだろ…?
122咲耶:ま、これが現実ってやつよ。わかった?
123亮太:ほ、ほんとかよ…じゃあ俺、一生このまま金なし学歴なし資格なしの
  なしなし人生を長い事送るっていうのかよー!いやだぁぁぁぁ!


124咲耶:ついでに能無しに意気地なしね。
125亮太:うるせー!…で、お前の話しを仮に信じるとしてだ。その死神が、
  俺に何の用なんだよ。
126咲耶:ふふ~ん。よくぞ聞いてくれました。それじゃ、本題に入ろうかな。
127亮太:本題に入るために人を散々な目にあわせたのかよこいつは…


128咲耶:さて、さっきも言った通り、あなたは簡単には死ねないし、ものすご~く
  長生きもするわ。
129亮太:はぁ…それで?
130咲耶:でもね。あなたの言う通り、無し無し人生を延々と送るだけで、ちっとも
  なんの役にも立たない人生なの!
131亮太:ひでぇ…そこまでいうか!?


132咲耶:だから、この私が君の前に来たってわけ!
133亮太:ああそうですかよ、で、それは何のために?
134咲耶:君をちょっっっっとはまともな人間にするためによ!
135亮太:くっそ、いちいちむかつく言い方を…どうやってまともにするって
  言うんだよ?


136咲耶:私があなたに特別な力を2つ、あげるわ。
137亮太:特別な力?
138咲耶:死神を見つける力と、その死神を追い払う力よ。
139亮太:死神を見つける力と、追い払う力…


140咲耶:そうよ。それを使って、あなたは死神を祓う仕事につきなさい。表向きは
  医者でも超能力でも宗教でも、なんでも好きにしたらいいわ。
141亮太:納得いかねぇなぁ。
142咲耶:なにがよ?まだ信じていないわけ?
143亮太:いや、お前がなんというか、ただものじゃないってことは信じる。
  けどよ、なんで俺にそんな力をくれるんだ?死神が死神を祓う力を与えて
  いいのかよ。


144咲耶:だいじょうぶ、ちゃあんとルールがあるわ。
145亮太:ルール?どんな?
146咲耶:死神っていうのはね、2種類いるの。1つはさっきも言ったように、魂が
  迷わないように案内する神としての死神。もう一つは、魂を勝手に奪ったり、
  寿命を無闇に食べたりする死神よ。
147亮太:ふむふむ、それはどう違うんだ…?


148咲耶:案内する死神は、この世にまよう魂が無いように働く、いわば良い死神ね。
  でも、命を勝手に奪う死神は良くない死神。奪われた魂は成仏出来ず、
  永遠にこの世をさまようの。私たちは野良死神って呼んでいるわ。
149亮太:お、おっかねぇ話だな。
150咲耶:でしょう。そこで、私たち魂の案内をする死神は、寿命だけは無駄に長い
  君に目をつけたわけ。
151亮太:だけ、は余計だ!


152咲耶:というわけで、何も君のためだけじゃないの。私たちとしても、メリットが
  あるのよ。野良死神を取り締まってくれる代わりに、特別な力をあげる。
  あなたは無し無し人生に区切りをつけ、仕事が出来るってわけ。
153亮太:…信じられない話だけど…。でも、今体験したことを考えるとなぁ…。
154咲耶:じゃあ、さっさと力を授けるわよ~。いい?
155亮太:待った!一個質問が。


156咲耶:ん?なあに?
157亮太:その~なんだ?良い死神と、野良死神っていうのはどうすれば見分ける
  ことが出来るんだ?俺たち人間からしたら、どっちもおんなじ死神なんだろ?
158咲耶:良い質問よ!無し無し君!
159亮太:無し無しくんて言うんじゃねぇ!


160咲耶:これから君に死神が見える力をあげるっていったわよね?
161亮太:…人の話きいてねぇな、こいつ…。ああ、いってたな。
162咲耶:魂の案内をする死神は、人間の枕元に立っているわ。この死神は祓っちゃ
  駄目よ。払った人のためにもならないわ。野良の死神は、人間の足元にいるの。
  君はこの死神を祓っていってほしいの。
163亮太:枕元と、足元…。


164咲耶:そう。死神に案内されて死にゆく人は横になっているから、横になって
  いる人のそばに死神がいて、それを見ればすぐにどちらかわかるはずよ。
  いい?決して枕元に立っている死神は祓ってはいけないわよ。わかった?
165亮太:あ、ああ。わかったよ。足元の奴だけ祓えばいいんだな?
166咲耶:そうよ。それじゃ、今から力を授けるわ…。いくわよ~!
  ちちんぷいぷい!死神が見えるようにな~れ!
167亮太:…なんだ?今の恥ずかしい言葉は?


168咲耶:呪文よ!これであなたには死神が見えるようになったわ。どう?
169亮太:いや、どうって言われても…あれ?お前いつの間に着替えたんだ?
170咲耶:これが死神の姿の私よ。もう少ししたら、元の格好に戻るわ。
171亮太:どういうことだ?


172咲耶:呪文には効いている時間があるのよ。べつにいつも死神が見えているわけ
  じゃあないの。病人や怪我人の前でだけ、この呪文を使って死神を探せばいい
  わ。
173亮太:…ということは…、俺は病人や怪我人の近くでこの恥ずかしい呪文を…
174咲耶:そういうことね。
175亮太:うっわぁ…うっわぁぁ…


176咲耶:何よその嫌そうな顔は。
177亮太:嫌に決まってるだろー!
178咲耶:さて、じゃあ次は死神祓いの呪文ね。
179亮太:お前ちょいちょい人の話流すんじゃねーよ!


180咲耶:死神を祓う呪文はこうよ。まず死神を指さして…
  ちちんぷいぷい!ちちんぷいぷい!死神たいさ~ん!
181亮太:…。
182咲耶:何黙っているのよ。なんとかいいなさいよ!
183亮太:すごく…恥ずかしいです…。


184咲耶:じゃあ、そうゆうことだから。野良死神の退治、しっかりよろしくね~!
185亮太:おいおい、まだやると言ったわけでは…


186亮太:き、消えた…。これ、マジかよ……。

  あ~あ。結局アレはなんだったんだろうなぁ…。夢…じゃないよな?
  無し無し人生からおさらば、か…。そりゃあ、出来る事ならそうしたいけど、
  世の中そんな簡単に…

188夫人:キャー!太郎ちゃん!しっかりして!!
189亮太:な、なんだぁ!?
190夫人:太郎ちゃん!太郎ちゃん、しっかりして!一体どうしたの!?
  太郎ちゃん!誰か…救急車を呼んでください!


191亮太:あ、あの~…どうしたんですか…?
192夫人:ああ、うちの太郎ちゃんが…さっきまであんなに元気だったのに、急に
  苦しいと言いだして、そのまま倒れてしまって…どうしたら!?
193太郎:う、ううう…苦しいよぉ…。
194夫人:太郎ちゃん!!ああ、なんでこんなことに…


195亮太:…急に苦しみだして…?まさかとは思うが…
196夫人:そこの方!お願いいたします!速く救急車を…
197亮太:ち、ちちんぷいぷい!死神が見えるようにな~れ!

198亮太:(い、いっちまったぁぁぁ…はっずかしい…!)


199夫人:あ、あの、何をいって…
200亮太:あ、いやこれはあのその、ですね…太郎君とやらを……ああ!?
201夫人:きゃ!ど、どうしたのですか!?
202亮太:い、いる…。


203夫人:え?
204亮太:足元に…なにか見える…。これが、死神…?
205夫人:し、死神!?なんてことを言うのあなたという人は!
207亮太:ええい、ここまでやっちまったからには、やるしかねぇ!
  ちちんぷいぷい!ちちんぷいぷい!死神たいさ~ん!!



208夫人:…はぁ?
209亮太:(うっわぁぁぁぁ人生で1番恥ずかしいかもしれねぇ…)
210太郎:うう…うん…。あ、あれ?治った。急に苦しいのがなくなったよ!
211夫人:た、太郎ちゃん!?本当に!?


212太郎:うん!このお兄ちゃんがちちんぷいぷい!って言った後、急に苦しいのが
  すっと消えちゃったんだ!お兄ちゃん凄い!ありがとう!
213夫人:ああ、なんという事でしょう!ありがとうございます!
214亮太:あ、いえ、えーっと…うん、無事、お助け出来て良かったです、はい!
215夫人:あなた様は、医療に携わるお方なのでしょうか?


216亮太:え、ええまあ、最先端医療とでもいいますか…世間では全然知られていない
  のですけれどね…。ははは…
217夫人:ああ、私ッたらいけない!お礼もしないで…。ええと、こちらで足りる
  かしら?

218亮太:はい?なんですかこれは…?
219夫人:太郎ちゃんを助けて頂いたお礼ですわ、本当に少なくて恐縮ですが…


220亮太:さささささ、札束ぁぁ!?
221夫人:申し遅れました、わたくし筒井財閥の娘で筒井花子と申します。
222太郎:筒井太郎だよ、おにいちゃん!
223亮太:つ、筒井財閥…!世界でも有数の企業の、あの…


224夫人:お忍びで買いものをしていたときにこんなことになるなんて…。でも、
  あなた様のような好青年の名医さまとお知り合いになれるなんて、これも
  縁でしょうか。あ、こちらが私と主人の連絡先になりますわ。
225亮太:あ、あの俺まだ名刺とかなくって…その…
226夫人:もしよかったらこちらに連絡先をいただけませんか?是非うちの財閥の
  もののかかりつけとして今後も見て頂きたく存じますわ。
227亮太:そ、そうですか…それじゃあ…



228夫人:ありがとうございます!今は時間がないので、ここで失礼いたします。
  また、ご連絡を差し上げますわね、先生!
229亮太:せ、せんせい…?
230太郎:お医者先生のおにいちゃ~ん!またね~!
231亮太:ま、またね~…は、ははははは……出来すぎ、だろ?この封筒…
  え、ご、ご、ご、五十万も…マジかよ!やったぁぁぁぁ!おいしい!
  この仕事は美味しすぎるぜー!!


232亮太:へへへ…無事仕事も見つかったし!初仕事でいきなり50万稼いだし!
  これで胸張って家にも帰れるぞ~。ふふん、ねーちゃん、これ見たら
  驚くだろうなぁ…。(SE、ノブをガチャガチャ)…お、開いてる。
  ねーちゃん、機嫌治ったかな?
たっだいま~!ねえちゃん、見てくれこれ!

  ねーちゃ…あれ?いないのか~?どこに…えっ!?おい、ねーちゃん!?
235啓子:…あ、りょう、た…?おかえり、なさい…
236亮太:おかえりなさいじゃねーよ!廊下でぶっ倒れて、どーしたんだよ!?
237啓子:急に、なんだか眩暈がして、急に、苦しくなって…でも、だいじょうぶ、
  だから。心配しない、で…。


238亮太:心配しないでって…明らかに体調悪いだろ!?病院には?
239啓子:行ったんだけど…ただの、風邪だろうって……うっ…ゲホゲホ!
240亮太:ただの風邪って…でも…。
241啓子:ちょっと休めば…すぐ、良くなるから…ね?

242亮太:と、とりあえず、ねーちゃんの部屋まで行こう。捕まって!
243啓子:ありがと…


244啓子:運んでくれて、あり、がとね。おねえちゃん…ちょっとだけ…
  休むから…。お夕飯は、何か、買って…
245亮太:俺のことはいいから!ゆっくり休んで!なっ!?
246啓子:こんな、おねえちゃんで…ごめん、ね…。…。


247亮太:ねーちゃん!?…眠ったのか…。この様子、どうみたって
  ただの風邪じゃねーだろ…。いつも元気なねーちゃんが急にどうして、
  こんな…。…待てよ?急に、苦しくなって?急に…苦しく…。さっきの、
  男の子と言ってる事がおんなじじゃねーか…。まさか…!
  ちちんぷいぷい!死神が見えるようにな~れ!


SE:呪文効果音


248亮太:何か浮かび上がってきた、やっぱりこれは死神の仕業か?でも…
  これ…!死神が、ねえちゃんの、枕元に、立っている…!?そんな…!
  う、ウソだろ…だって、枕元に立っている死神は祓ってはいけないって
  、祓った人のためにもならないって、あの女が…。でも、でもよぉ…!
  ねーちゃんが死んでいくのを、黙って見ていられるわけねーだろ!
  ちちんぷいぷい…!


SE:ふぃん、という回想入る音


249咲耶:(魂が迷わないように案内する神としての死神よ)←エコー。思い出し 
250咲耶:(決して枕元に立っている死神は祓ってはいけないわよ) 同じく
251亮太:…うぐっ。今、こいつを無理やり祓ったら…ねーちゃんの魂は、いつか
  この世を延々とさまようことになっちまうんだ…そんな、そんな…
  ねーちゃん…俺、どーしたら…
252啓子:う、ううん…



253亮太:ねーちゃん!?…寝返りか…。ん?今、少し枕元に立っている死神が
  動いたような…?
254啓子:うう…熱い、くるし、い…

255亮太:動いた…。やっぱり、動いた!あの死神…ねーちゃんの頭を追いかけて
  動いているのか。…じゃあ、もしあいつがねーちゃんの枕元じゃなくって、
  足元にいるときに祓えば…今のねーちゃんも救えて、あの死神も悪いやつって
  ことにして追っ払えるんじゃ…?そうだ、枕元にいないで足元にいたら、
  あいつの不注意ってことになる。なんなら、そういって説得だってしてやる!
  よおし…!ねーちゃん!

256啓子:う、ん…?亮太?どう、したの?


257亮太:ねーちゃん、ちょっと足元と頭の位置、とっかえようか?
258啓子:え?なんで?
259亮太:それは…、えっと、あれだ!汗で枕カバー汚れてるし、交換するからさ!
260啓子:それって、位置を変える必要ある?


261亮太:いいからいいから!ほら、ね!
262啓子:きゃ!もう、強引ね…。

263亮太:う…。しっかりついてきてやがる…!ね、ねーちゃん!もう一回!
  もう一回位置変えよう!
264啓子:わ、訳が分からないわ…おねえちゃん、今ちょっとつらくって…


265亮太:俺が動かすから!でぇい!
266啓子:きゃあああああ!

267亮太:今だ!ちちんぷいぷい!ちちんぷ…

268亮太:だ、駄目だ…。こいつしっかりねえちゃんの動きについてきやがる…。
  一体、どうしたら…。


269啓子:亮太…何か、あったの?おねえちゃんは、平気だから…話してごらん?
270亮太:全然平気じゃないだろ、ねーちゃん!大丈夫!ねーちゃんの体調不良は、
  絶対俺が治してやるからな!
271啓子:亮太…?ふふ、ありがとう。うん、すぐよくなる、から…
272亮太:眠った…。本当に体力が無くなってきているんだな。もう、時間がねぇ!
  やい死神!お前、絶対に祓ってやるからなっ!…この50万円。これで
  なんとか…そうだ!


SE:廊下を走る。ドア開閉。パソコン起動、マウスを数回カチカチと押す。


273亮太:こ、これだ!これさえあれば…!ようし、注文完了!まってろよぉ死神!
  ぜってぇ足元送りにしてやるからなぁ!

・・・
SE:車が走ってきて止まる。ピンポーンとインターフォン


274配達員:配達でーす、いらっしゃいますかー?
275亮太:はーい!

SE:ドア開ける ガタガタと荷物を運び込む音。


276配達員:よいっしょ…。重いんで、我々が運びますよ。どこ置きましょうか?
277亮太:結構、でかいですね。
278配達員:ええ、まあやっぱりこういうものは大きいですよ。
279亮太:じゃあ、居間でお願いします。

280配達員:居間ぁ!?いいんですかぁ!?
281亮太:そこしか置く場所無いんで…お願いします!
282配達員:は、はぁ…。


SE:ガタンガタンと何かを設置している


283配達員:それじゃ、ここにサインをお願いいたします。
284亮太:はい。
285配達員:どうも、じゃあ、我々はこれで。失礼いたします。
286亮太:お疲れ様でーす!…ようし、これで準備は整った。後は…


287啓子:亮太…?なんだか、ガタガタ音がしたけど、何かあった?
  …って、なによコレ!?
288亮太:ねーちゃん!ちょうどいいところに!ちょっとこれで横になってよ!
289啓子:なに?このまあるいベッド…。
290亮太:いや、あのあの~。ねーちゃんが寝たまんまでも退屈しないように
  こういうのもいいかな~って…


291啓子:これ…いわゆる変なところに置いてあるベッドじゃないの!?
  こんなもの居間に置いて、何考えてるの!…うっ、叫んだら、眩暈が…
292亮太:ほら、ねーちゃん危ない!横になって!
293啓子:なんで私がこんなベッドに…はぁ…。

294亮太:スイッチは…これか!



295啓子:わぁ!…別に動かさなくてもいいわよ!?
296亮太:ちちんぷいぷい!死神が見えるようにな~れ!

297啓子:…亮太?あなた何をいっているの?
298亮太:…くそ、しっかりねーちゃんについてきて動いてやがる。
  これならどうだ!速度アップ!


299啓子:きゃああ!…け、結構速く動くのね、これ…。
300亮太:うぐぐぐぐ…まだまだついてきてやがる…!スピードアップ!
301啓子:ちょっと!もう、何でこんな早く動かすのよぉ!危ない…
302亮太:お。いけるか!?


303啓子:亮太ー!聞いてるのー!?
304亮太:ああ、くそ!振り切れない!これで、どうだ!速度マックス!
305啓子:いやぁぁぁぁ!め~が~ま~わ~る~~!
306亮太:ようし、死神のやつ戸惑ってやがる、いけるぞ!


307啓子:亮太~!とめてぇぇぇぇぇ!
308亮太:もう少し!もう少しだから我慢して、ねーちゃん!
309啓子:もうだめぇぇぇぇ!何がもう少しよばかぁぁぁぁ!
310亮太:あとちょっとだ、でぇぇぇぇぇぇい!


311啓子:こらぁー!あんたまでベッドを回すなぁぁぁ!ひゃあああああ!
312亮太:足元の位置までいった!今だ!
  ちちんぷいぷい!ちちんぷいぷい!死神たいさ~ん!

SE:死神が消えていく

313亮太:消えた…やった!やったぁぁぁぁ!ねーちゃん、これでもう大丈夫だー!
314啓子:全然だいじょうぶじゃなーい!止めてー!!


315亮太:あ、いけね。そうだった、よっ、と。

316啓子:はぁ、はぁ、はぁ、ぎもぢわるいぃぃぃ…
317亮太:良かったよー、ねーちゃん!これでもうだいじょうぶだからなー!
318啓子:何がだいじょうぶよ、こんの…バカー!!



319亮太:いってぇぇぇぇ!なんでこうなるのぉ…。
320啓子:全く、こんな時にまで悪ふざけして!
321亮太:でもほら!ねーちゃん、いつものねーちゃんに戻ってる!なぁ、身体も
  楽になっただろ?どう?
322啓子:え?あ…言われてみれば…。さっきまでの苦しさが消えてる…?


323亮太:ほんとに?ほんとにだいじょうぶだよな?
324啓子:え、ええ…治ってるみたい…不思議…。
325亮太:ねーちゃん、良かったぁぁぁぁぁ!  
326啓子:きゃ!…心配かけてごめんね、亮太。


327亮太:ううん、本当によかった。あ、俺朝飯買ってくる、めっちゃ豪華なやつ!
  ねーちゃんも腹減っただろ!待ってて!
328啓子:お腹は空いたけど…お金は?
329亮太:そんなん気にしなくていーから!…じゃ、いってきまーす!
330啓子:…いっちゃった。


331亮太:いや~、無事ねーちゃんは助かったし、俺はこれから仕事も安泰だし、
  これでもう無し無し人生とは完全におさらばだな!枕元の死神だって
  どんとこいってんだ!へへ~ん。
332咲耶:ちょっと、君!
333亮太:お、お前はこないだの…よ!元気にしてるか?
334咲耶:元気にしてるか?じゃないわよ!君ねえ、枕元の死神は祓っちゃ駄目だって
  言ったでしょ!何やってるのよ!


335亮太:うっ…あれは、違うよ!祓ったときは足元にいたんだ!
336咲耶:あんなズルイやり方して…君って無し無しくんのくせに、悪知恵だけは
  1人前なのね!
337亮太:ズルイやり方って…見てたのかよ?
338咲耶:あの死神は、わたしよ!もう!恩を仇で返すってこのことね!
  おかげで私、神様にすっっごく叱られたんだからね!


339亮太:ええええっ!?あれ、お前だったの?
340咲耶:そーよ!どうしてくれんの!?
341亮太:あ~、それは、悪かったよ。でもよぉ、俺のねーちゃんが危ないってのに
  黙って見てられなくって…
342咲耶:言い訳は聞きたくないわ!もういい!ついてきて。


343亮太:あ、おい!ちょっと待ってくれよ!
344咲耶:見せたいものがあるから、来て!
345亮太:俺は今から飯を買いに…
346咲耶:そのお金も私のおかげで稼げたんでしょ!黙ってついてくる!


347亮太:はあい…くっそ。強引なやつ。

348咲耶:ここよ。
349亮太:なんだここ?寺とか神社みたいな…
350咲耶:私たち死神しか立ち入れない、特別な場所よ。あがって。


351亮太:え、いいのかよ、そんなとこに…

352亮太:中は広いんだな…1面ろうそくだらけだ…。
353咲耶:ここにはね、人間の寿命が置かれているの。
354亮太:寿命が、置かれている…。ま、まさかこの凄い数のろうそく…


355咲耶:そうよ、このろうそく1本1本が人の命のろうそく。この炎が消えるのは、
  その人が亡くなるときよ。
356亮太:すんげーでかいのから、細くて今にも消えそうなやつまで…。
357咲耶:いいもの見せてあげる。はい。
358亮太:ん?これは…すごい大きなろうそくなのに、もう溶けて今にも消えそうだ。


359咲耶:ふふ、そうねぇ…。これね、君の命のろうそくなの。
360亮太:…え、な、何をいってんだよ!?
361咲耶:だ か ら。これは、君の命のろうそく。大声だしていいの?吹けば
  消えそうな炎の前で…?
362亮太:そ、そんなわけない…。だって、お前!お前がいったんじゃないか!  
  俺はすっごい長生きするって!


363咲耶:そうよ、言ったわ。君はすっごく長生きする寿命をもっていた。でもね、
  小さな子供を助けて、おねえさんを助けて…その寿命を二人に全部分けて
  あげちゃった。だから、もうすぐ消えちゃうの。
364亮太:おい、どういうことだよそれ…。
365咲耶:あの呪文はね、ただ死神を祓うだけじゃあない。ちゃあんと代償があるのよ。
  死神は消えるけれど、持っていくはずだった分の寿命を代わりに捧げる呪文…。
366亮太:だ、だましたのか…?


367咲耶:だますぅ?聞かれなかっただけよ?そうでしょ?
368亮太:仮に、そ、それが本当だとして、なんでこんなことを…
369咲耶:あなたはね、長く長く生きるはずだったの。そうして、死んだことも
  気づかずに、ひどい悪霊になる恐れがあった。
370亮太:だからって!


371咲耶:言ってたわよねぇ?死にたいって。
372亮太:けど、それとこれとは!
373咲耶:私はすべてを与えてあげたのよ?なんにも無かった君に。
  仕事も、お金も、名誉も、人を救う力も。そして、君が望んだ死もね…。
374亮太:ち、ちくしょう!火を、火を足せば!


375咲耶:うっふふ。無駄無駄、もう無理よ。ほぅら、あんまり火に触ると、
  ただでさえ細い火が消えちゃうわよ?
376亮太:この!この!もっとしっかり燃えろ!もえてくれ!頼む!…あっ…。
377咲耶:あ~あ、消えちゃった。これで、君の人生はおしまいね…。
378亮太:そんな……うっ!く、くるし…なんだ、急に…い、息が…
  たすけ、助けて…たの、む…


379咲耶:だいじょうぶ、なんにも怖くない。だいじょうぶ…
380亮太:死に、たく‥な…い……


381咲耶:…うまくいったわね。うっふふ。あははははは。あっはははははは……

382亮太:こうして…俺は自分の寿命を失い、人間としての命を失った。
  自ら寿命を削り、祓ってはいけない死神を祓ってしまった俺は、魂を
  案内してもらうことも出来ず、現世に魂はとどまったまま。
  そして、どうなったかっていうと…


383咲耶:ほらぁ!なぁにぼうっとしているのよ!さぼってないでキリキリ働く!
  今日中にあと3人分の魂を案内しないといけないんだからね!なんのために
  あんたをこのまま現世につないでいると思っているの!?
  しっかり働きなさーい!
384亮太:ちっくしょおぉぉぉぉ!俺を自由にしろー!
385咲耶:うるさーい!口じゃなくって手と足を動かしなさーい!

SE;ムチ

386亮太:結局…俺の魂はあの死神にとらえられ…毎日こいつのいうがままに
  働かされているのであった…
387咲耶:死んだ後まで仕事をあげているんだから、ちょっとは感謝しなさーい!
388亮太:感謝なんかするかぁぁぁ!俺の人生、返せぇぇぇ!


終わり






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