・機甲兵団ワルキューレ ～第21話 侵略する勇気～
～登場人物～
フォル＝ムーン
・ワルキューレ01、アーリィのパイロット。接近戦を得意とする熱血漢。
パイロット適正は高いが、直情的な性格がそのまま戦闘にもでやすい傾向がある。
実戦を重ね、戦い方に幅をもつようになってゆく。
サウド＝ヴァレット
・ワルキューレ02、レナスのパイロット。冷静沈着な戦闘員。
冷静で、一見すると冷たくも見えるが、仲間を大切に思う気持ちが強い。
ワルキューレ隊の隊長に抜擢されている。
テノ＝アルノ
・ワルキューレ03、シルメリアのパイロット。腕利きの女射手。
強気で思い切りのいい性格と、ズバ抜けた集中力での狙撃を得意とする。
シエミナのいないときはオペレート的な役割も担う。
リゼア＝クラリス
・ワルキューレ04、フレイアのパイロット。重火器装備を惜しみなく使い、
思い切りのいい攻撃を得意とする。支部より派遣された士官で、実戦の経験も豊富。
グランツ＝レーグ＝ジーン
・アイゼンの息子。ゲリラを率いてワルキューレ隊に決死の反攻を試みる。
ファントムの操縦は１流というほどではない。搭乗ファントム「クラスター」
レオナ＝レーグ＝ジーン
・アイゼンの娘。親サハド派からヒロインのように扱われている存在。
・用語解説・
ファントム：人型の戦闘兵器。武装を変えることで様々な戦場に高い適応性を持つ。
コミット：国に代わり世界を動かすようになった企業、経済、資源を多く持つ様々な集団。
それぞれの資本を武器に領土を日夜奪い合う。
ワルキューレ：コミットに支配された抵抗組織ラグナロクのファントムの機体コード名。
～劇中表記～
フォル：♂：
サウド：♂：
テノ：♀：
リゼア：♀：
グランツ：♂：
レオナ：♀：
･･･････････････････････････････････････････････････････
グランツ：勇敢なるサハドの市民に告ぐ！今サハドは危急存亡の秋（ききゅうそんぼうのとき）
を迎えている！
レオナ：愚かなるコミットの連合たちによって囲まれた我々には、もはや取りうる手段は
たった一つしかありません。
グランツ：断固として徹底抗戦あるのみ！地の利は我らにある。すべての市民よ、戦士と
なるのだ。祖国を守る勇敢な戦士となれ！
レオナ：男たちよ！愛する恋人を、妻を、家族を守るのです。女たちよ！男たちだけが
戦えるわけではありません、私とともにいきましょう！子供たちよ！自由なるサハドと
自分たちの未来のために、今こそ武器を取りなさい！
グランツ：恐れるな！皆の者！今こそコミット全市民を挙げての血戦のときだ！
死のう！戦って、共に死のう！！
…
レオナ：お見事な演説でしたわ、お兄様。
グランツ：レオナ、お前もな。…すまなかった。私は父や側近と同じように、お前を利用
してしまったのだな。
レオナ：お兄様！今は仕方がありませんわ、コミットの危機ですもの。
グランツ：そうだな…。よし、私は決起した市民を率いてラグナロクの部隊を止めに行く。
お前は地下通路から逃げるのだ。
レオナ：いやです！私も戦います。
グランツ：ファントムの操縦も出来ないお前が何をしようというのだ！
レオナ：…市民たちは誰一人ファントムの操縦なんて出来はしませんわ。それでも戦えと
命じた私だけが逃げることは出来ません！
グランツ：しかし…。っ！？警報？来たか！
レオナ：敵が…来る！
…
フォル：こちらフォル！サハド首都まで距離4000．今のところ異常なし！
サウド：そろそろ敵迎撃部隊が出てくるだろうな…。むしろ遅いくらいだ。
リゼア：ほとんどの戦力はほかの３コミットの相手に出ているはずだしね～。なんせ、
ほかのコミットは何十機もファントムを持っているんだから。
サウド：だからといって、素通りなどはさせてくれまい。テノ、敵は見えるか？
テノ：ロングライフルのスコープからはまだ見えないわ。３機との距離2000。そろそろ
前進を開始していい？
サウド：敵の動きが気になる、もう少し監視を続けてくれ。射程はまだあるな？
テノ：ええ、あと1000はいけるけど…、了解。シルメリアは監視を継続するわ。
フォル：基地のレーダーとミナのオペレートの代わりに、テノのロングライフルのスコープ
と通信を使うとはなぁ。リゼア、お前頭いいな！
リゼア：戦場では出来る限りどんな情報でも収集するのは基本中の基本よ！はぁ～あ。
こ～れだからバカは…。
フォル：なんだとぉ！
リゼア：い～い？スナイパーが後方で援護や狙撃をするのは当然。けどねぇ、その広い
有効射程をほかに活用しないでどうするの？ましてやスコープで物理的な視認も可能な
状況なのよ。
サウド：だが、離れすぎは危険だな…、万が一伏兵がテノを狙ってきたら危険すぎる。
リゼア：そのためにテノには至近距離マシンガンがあるじゃない。そもそも、滅亡の
危機に瀕しているサハドがファントム1機落とすために、守備兵力を割くなんてまず
しないわよ。
フォル：こっちに全兵力で攻めてくるってのはないのか？ラグナロクだけじゃもしサハドの
総攻撃が来たら危ないぜ？
テノ：それもおそらくないわ。
フォル：なんでだよ？
テノ：サハドがこちらに攻め込んできても、この侵攻する場所は地下の資源が貧しい洞窟
しかない。そのうえ行き止まりよ。そこを敵対勢力すべてに襲われたら今よりも絶望的な
状況になるもの。
フォル：なるほど…、皆いろいろ考えているんだな！
サウド：…フォル、お前は考えなさすぎだ。ウェインに言われた言葉を忘れるなよ。
フォル：わかってるって！
リゼア：どうだかね～。
テノ：スコープに機影確認！来たわ、ファントムよ！
フォル：来やがったな！よ～し、いっちょやってやるぜぇ！
…
グランツ：ドルドラム！グロリア！全機発進！前進せよ、侵略者たちを首都にいれるな！
レオナ：勇敢なるパイロットのみなさん、ご武運をお祈りしております。
グランツ：よし、市民たち…いや、サハド軍歩兵師団よ！ファントムの砂煙に紛れて
砂の上を進め！この砂漠の気温ならばレーダーに人間はうつりにくい。各地にひそみ
対ファントム装備でゲリラ戦を仕掛けよ！
レオナ：みなさん、ついに戦いの時です！行きましょう！
グランツ：レオナ、お前は親衛隊を率いて最終防衛ラインだ。
レオナ：前線が望みです！
グランツ：お前がいるだけでみなの士気はあがる。逆に戦死でもすれば一気に士気が落ちる
のだぞ？身分をわきまえるのも、人を指揮する者の役目だ。
レオナ：お兄様…、わかりましたわ。最終ラインは決してこえさせません！
グランツ：それでいい。整備兵、私のファントムの準備を！
…
テノ：タンク型、二足型ファントム多数！これは…！
フォル：ぐ、グロリアじゃねーか！ウェインの専用機じゃなかったのか！？
サウド：量産体制が整ったということだろうな、注意しろ！しかし、塗装もバラバラ、
隊列もなっていないぞ？一体…
リゼア：急ごしらえの２流品よ、塗装すら間に合っていない機体を端から稼働させている
のよ。ほら、奥のほうなんてブースターが煙をあげているわ。動作テストもしないで
とにかく出してきているってわけ。こんなんに苦戦してらんないわよ！
フォル：形は同じでもウェインのグロリアとは比べ物にならないってわけか。
サウド：何度もいうが、決して油断はするなよ！よし、いくぞ！俺とフォルは前進！
正面の敵ファントムを攻撃する。
フォル：01（ｾﾞﾛﾜﾝ）アーリィ、了解！いっくぜぇ！
サウド：テノは後方支援！狙撃とともに可能な範囲でオペレートも頼む！
テノ：03（ｾﾞﾛｽﾘｰ）シルメリア、了解！あのタンク型、久しぶりね…、
あのころの私とは違うわよ！
サウド：リゼア！敵後方のファントム部隊にミサイル攻撃。その他各機のバックアップを
頼む！
リゼア：04（ｾﾞﾛﾌｫｰ）フレイア了解よん♪さあ、戦闘開始ぃ～！
手加減してあげないんだから！
フォル：もらったぁ！ステイルソード！…スイッチ！まず１機！
サウド：統制の取れていない動き、こちらの攻撃に明らかに動揺している前線…。
本当に何もかも急ごしらえなのだな。そこだ！
テノ：コクピットを狙って正確に…違う！ロックオンを待ってちゃ遅れる！ターゲットを
目視、弾速を計算して…そこ！次！
リゼア：さぁ～サハドのあまちゃんパイロットの皆！覚悟してね～。タンク型１０機！
網膜連動！とらえた！マイクロミサイル！ファイア！お次はランチャー！いっけぇ！
フォル：２機撃墜！３機目！…このファントムすべてに人が…駄目だ、今は考えるな！
サウド：フォル、集中しろ！ここは戦場だぞ！
フォル：ああ…びびって、たまるかよぉぉぉ！！
…
グランツ：たった４機に…圧倒的に押されているだと！？
レオナ：そんな…。
グランツ：くっ…訓練生と急ピッチで建造したファントムでは、精鋭機の相手にはならない
ということか…。ゲリラ部隊に合図を！
レオナ：人がファントムに向かっていかなければいけないなんて…。
グランツ：混戦状態を打開する！私も出るぞ！
レオナ：お兄様…！
…
テノ：敵機撃破っ！タンク型はほとんど片付いたわ！
リゼア：雑魚相手でも弾薬が馬鹿にならないわね…。ん？なにか今レーダーに…？
サウド：どうしたリゼア。むっ…フォル！アーリィの前方に熱源だ！
フォル：なに！？地面…？なんだあれは…人？難民か？
リゼア：撃て！！
フォル：なっ！？
サウド：リゼア、何を言って…。
リゼア：ゲリラよ！撃てっていってるのよ！速く！対ファントム兵器が来るわよ！
テノ：スコープ倍率調整…組み立て式のバズーカ？避けて！
フォル：ひ、人がファントムと戦おうってのかよ！どうしたら…
リゼア：爆雷投下！ファントム第二波来るわよ！モタモタしてんじゃない！
フォル：り、リゼアお前…今…
リゼア：ファントムのパイロットも人間！ゲリラ戦を仕掛けてくるのも人間！戦場で
大事なのは人間かどうかじゃない、敵か味方かよ！いつまでも甘ったれてるんじゃ
ないわよ、三人とも！
テノ：サウド！足元に熱源よ！
サウド：くそ、こっちもか！
リゼア：弾薬の無駄よ！踏み潰しなさい！
サウド：リゼア……
リゼア：サウド！あんたワルキューレ隊の隊長でしょう！？覚悟決めな！
サウド：っ！？う、うおぉぉぉぉ！…第二波を迎撃する……いくぞ！
フォル：サウド…だいじょうぶか？
テノ：わかっていた。やるしかないって…それなのに私も動けなかった。けど…今度こそ
もう迷わない！いくわ！
フォル：よし、サウド、お前にだけやらせねぇ！グレネード、発射！！
リゼア：どうしても迷いたいなら、この戦いが終わってからか死んでからにしなさい！
戦場で迷えばどんな雑魚にも負けるわよ！
サウド：ああ、やってやるさ！フォル、首都に突っ込むぞ！テノとリゼアは援護を！
フォル：おう！首都に必ず一番乗りしてやる！
グランツ：ゲリラも壊滅状態か…。グランツ＝レーグ＝ジーン、クラスターで出る！
皆の者！つづけぇ！
テノ：また来たわ！見慣れないファントムも１機！データ照会…ファントム・クラスターよ。
これは…アイゼンの長男の専用機！？
リゼア：つまりあれが指揮官機ね！周りの雑魚はあたしが堕とす！サウド、フォル！
一気に決めて！
グランツ：隊列を整えろ！怯えるな、向こうはたったの４機だ！
リゼア：コクピット、オールレンジ切り替え。全弾発射準備OK。…さあ、あんたらは
とっとと消えなさいな！いっけぇ、フルオープンファイア！！
グランツ：むっ！高火力兵器の一斉発射か！親衛隊のファントムが足止めされて…
テノ：動けないファントムなんて！覚悟しなさい！
グランツ：ぐう！シールド展開！…いかん、防御兵器を持たないほかの機体がガード
しきれん！首都のゲートまえでは大きく散開も出来ない…！
サウド：あの隊長機、指揮の経験がないのか？守られてばかりだが…道を開けろぉ！
フォル：ステイカーボムを使う！サウド、空いた場所から切り込め！
サウド：よし！ブースト全開！
フォル：敵の密集地の真上のゲートにステイカーを打ち込んで爆破すれば…シュート！
ステイカーボム！スイッチ！
グランツ：ぐおっ！？ゲートが破壊された！？まずい、がれきを切り払って移動をせねば。
くそ、視界が…なっ！？
サウド：やはり脱出してきたな、貰った！ビームカッター！
グランツ：ぶ、ブレイドを展開して…間にあわない…ぐ、ぐぅおおおおおお！
レオナ：お兄様の機体が…！そんな！？…通信！？
グランツ：レオナ、脱出するんだ！そしていつの日かサハドの再興を…お前だけが…
レオナ：お兄様！？お兄様ー！！
グランツ：生き残りを率いて、地下に…にげ…
レオナ：いや！ファントムから脱出を！おにいさ…
サウド：レールガン！発射！敵指揮官機は落としたぞ！戦意のないものは北より迫っている
アルカディア軍に投降せよ！
フォル：これ以上無駄に死ぬな！投降するんだ！
テノ：アルカディアは捕虜の受け入れ準備をすでにはじめているわ。お願い、皆、もう
無駄に抵抗しないで。
リゼア：警告はしたわよ。これ以上やるのであれば、容赦はしないわ！
フォル：ようし！首都中心部に進もうぜ！
レオナ：あの機体…お兄様のファントムを打ち抜いたあの機体…決して忘れないわ！！
…
グランツ：次回予告！
レオナ：敵地への侵略。民間人との戦い。
フォル：自らの機体が人を踏み倒していく感覚。平和のために…大義のために。
テノ：１度は決めた覚悟と目の前の現実に、パイロット達の心は揺れ動く。
リゼア：次回！機甲兵団ワルキューレ、第２２話「サハド陥落」
繁栄を極めたサハドが、ついに死神とクローレの手に落ちる。
テノ：そして、その影で仮面の牙が新たなる獲物にその照準を合わせる。
サウド：これが…侵略…。だが、俺の正義は司令の志とともにある！
･･････････････････････････････････････････
続く
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