自他ともに認めるブサイクな自分が、ブサイクとブスを語る。
ブサイク
「不細工」
まずは「不」と「細工」とが組み合わさった熟語であることを認識して、別々に話していきます。
まずは「細工」
そもそも、「細工」とは、手先を働かせて細かい物を作ること。またはその物。その職人。(広辞苑引用)
名詞や動詞として使用されます。
平安時代には既に「細工」という言葉はありました。
「細工所(さいくどころ)」と言って、院や摂関家、国衙(こくが・国司の務める役所)などに置かれ、調度類の細工物を製造した所があります。
江戸時代も形を変えて幕府の役所として、若年寄の配下で皇室献進品や、武具、馬具等の細工を司っています。
現代でも、「竹細工」「細工師」等、主に名詞として聞き覚えがあるかと思います。
ここで、注目して頂きたいのは、「細工」という言葉が、(表立っては)良し悪しを表現していないということです。
いくつか例をあげます。
ざっと調べた範囲で申し訳ないのですが。
おそらく「細工」を書いた文書としては最古かと思われます。
①「極めたるさいくの風流(ふりう)ある者 の」
【今昔物語 二八・五】
(訳)人の意表を突く策略を好んでする者で
今昔物語集は、平安末期と言われています。
こちらは、サクッと言いますと、特定の人の人物紹介の一文です。策略と訳しますと何だか良くないイメージですが、(さいくの風流)までが策略の意となります。現存する(細工、作る)という意味でない、一例です。
②「よきさいくは、少し鈍き刀を使ふと いふ」
【徒然草 二二九】
(訳)立派な細工師は、少し切れ味の鈍い
小刀を使うという
徒然草は、鎌倉時代末期に成立した随筆です。約100年後、室町時代になってから人気が出た作品です。国語の教科書で「つれづれなるままに、日暮、硯に向かいて」という冒頭は習った方も多いのではないでしょうか?
こちらの例文は、細工師、つまり、プロとして調度品等に彫る仕事を生業としていた人を指しています。
お気付きの通り、「細工」は容姿に関連する例文はありません。
たった二つしか例文を上げていませんので、次回、もう少し時代が流れてからの例文を上げていきます。