『秋の牢獄』『神家没落』『幻は夜に成長する』
の中篇3編からなる一冊。
- 秋の牢獄/恒川 光太郎
- ¥1,470
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『秋の牢獄』
11月7日という1日に囚われた人の物語。
その日をずっとリプレイし続ける人達のお話なのだけど。
怖かった。。
悲しいのか何なのか、わからないけど薄ら寒くなった。
『神家没落』
ある日突然現れた古民家に立ち入った青年が、その家に囚われてしまうお話。
ただ、その家は昔、神の家だった。
なんとも言えない、ちょっと浦島太郎のような気分になってしまう不思議な家なんです。
庭には若さを保つ果実と、極上のお水が湧き出ていて…
そのほかには何も無く、家からも出られないんだけどね。
ただ、この家自体が日本の各地へ移動してて、決まった時期に決まった場所へ出没するの。
始めは退屈かもしれないけど、慣れたらきっと、主人公が愛したように私もこの家とその生活を愛するでしょうね。
『幻は夜に成長する』
この話が一番面白かった。
普通の少女だったのに、霊弧の力を得たために生神として牢獄に囚われてしまった女の子の話。
これもかなり、怖い。
全体的にこの人の作品って、猟奇的っていうか、異常犯罪者がよく登場するんだけども。
最初から「意味わからない。」という変質者もいれば、人間の弱い部分が出てしまってそういう事になっちゃったんだろうな…とわかる人もいる。
異常か異常でないかは、個人の倫理観に基づく、非常に曖昧な境界線で分けられているものなんでしょう。
だから社会的慣習とか法律とかで縛らないと、こんなに多くの人間が同じ世界で生きていくなんて、無理なのかもしれない。
人間って面倒くさい生き物ね。。
レビューを書いていて気づいたけれど、『秋の牢獄』ってタイトルがぴったりな、3篇とも何かに囚われた人達の物語でした。
気づくの遅すぎかな。