石井隆追悼特集で天地真理主演のにっかつロマンポルノをわざわざ選んで見に行く好事家、それが私。

石井隆作品の女性像って、古めかしいものが多い印象で、現代に通用するのかと思うと疑問もあるのだけど、この作品は脚本のみ担当で、池田敏春のシャープな演出がやるせない内容にうまく輪郭を与えている。

ロマンポルノ的なラブシーンは3回で、流れは結構自然。もともとが裸で選ばれた人ではないので、全裸の立ち姿のシーンを見ると、それ以外でどれだけきれいに裸を写しているか、その様式美がかえってよくわかる感じ。

本作は一種ミステリー仕立てになっていて、これが素性を知らずに出会ってしまった男女の軽い不信感を盛り立てるサスペンスにもなっており、なかなかいいストーリーになっていると思う。天地真理が鈍器で殺人を犯し、裸で返り血を浴びるシーンなど、池田敏春監督的には「人魚伝説」を思い起こさせるし、キャムプな楽しみ方もできる。

 

私は天地真理に関して「白雪姫」とか言われていた時期がリアルタイムではないので、美人というよりもスターの顔として見ていたけれど、この作品での彼女はかなり魅せる。その後、女優として出演作がさほど多くないのは意外と思えるほど。よくよく考えると、デビュー当時ナベプロ三人娘として人気絶頂だった小柳ルミ子も、「白蛇抄」でこの2年前に脱いでいたし、映画でヌードのラブシーンを演じる=大人の俳優へ脱皮、という方程式がまだ生きていた時代の産物といえる。そういえば、女優のヌードは映画の宣伝要素として重要だった。逆にそれが終わったのは1990年代あたりか。

今作で天地真理が演じる役柄は、やたら飛び降り願望の強い女なのだけど、監督の池田敏春がのちに海に身を投げて自死したことを考えると、奇妙な符合に思える。