愛憎の天秤は、とりわけ近親者に対して、敏感に、精緻に反応する。
そしてこの天秤は、遺伝する。
私の母は、親兄弟と絶縁した。
私も当に、親兄弟と、少なくとも心は、絶縁している。

私は選べずに生を受け、クソみたいな世界を這いずり回っている。

名前の無い背中に科せられた孤独も、兄だと教えられた何者かも分からない知的障害を持つ男から受けた性的虐待も、破壊音と罵声に怯えながらベッドに隠れた時間も、勝手にさっさとくたばった父親の尻拭いの年月も、「家族だから」という絵空事の末に壊されたこの心も、何もかもクソだと思う。

けれど、世界がクソであればあるほど、私の歌や詩は、透き通る。
私は純粋なものを求め、生きる理由を求め、美しいものを見つけることができる。
音楽、写真、洋服、車、バイク、女。

少しの金がいる。
憎しみを糧に、それを得る。

アビー、お前がいなくなって、もう俺にはここにいる理由なんて無いんだ。
早く逢いに行きたいけど、お前に教えてあげたい美しいものを探したいから、まだしばらくは、生きるよ。

おやすみ。
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