akikoの読書日記

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本好きな方へ

  直木賞候補作となった「まいまいつぶろ」(幻冬舎時代小説文庫)。作者は司馬遼太郎夫人・福田みどり氏の秘書を務めていた村木嵐だ。司馬遼太郎の史料を読み込む姿をまじかに見て感銘を受けたというインタビュー記事を読んだ記憶がある。

「まいまいつぶろ」は徳川幕府9代将軍家重と小姓の兵庫の絆を描いている。病のため口が回らず、尿の排泄もままならない家重。その言葉を解したのが兵庫だった。しかし、本当に家重の言葉を聞き取っているのか、私心をはさんでいないのか兵庫への疑惑はつきまとい、家重も8代将軍吉宗の嫡男でありながら次期将軍への資質を問われ続ける。

 本書を読んで、吉宗が家重を9代将軍とし、家重の腹違いの弟たちに一橋家と田安家を創設させた経緯がわかった。昨年のNHK大河ドラマ「べらぼう」で描かれた一橋家の将軍職への執着の背景が理解できた。

 兵庫の遠縁にあたる大岡忠相(町奉行)や吉宗時代に頭角を現した田沼意次など、歴史上の有名人が登場して興味深く読み進められる。家重の正室として京から下った此宮の戸惑いと矜持、家重への愛情などが心にしみた。史料の合間に想像力を働かせる時代小説の面白さと言えるだろう。

 30年ほど家重に仕えた兵庫は死期を悟って江戸城を去る。そのとき、家重は大手門を開けさせて兵庫を見送る。二人の絆を感じさせる場面で、切なく余韻が残る。