留学生日記24~発声幻想2~ | パリと音楽と大学と

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パリにて声楽、シャンソンを指導。パリの音楽学校在学中より、フランス各地・ヨーロッパで様々なコンサートを経験。フランス国家公認声楽講師資格。アラフィフの物語を振り返るつもりです。

私の発生幻想は、ノンビブラートと言う現象のためにあった。ノンビブラートは、バロック音楽での歌唱の特徴の一つであると言う。すでに私はあまりビブラートが好きではなかった上、バロックのCDを聞くと、あまりにも似合っているので、それに強く傾倒していたのだ。

最初に入った学校では、どう考えても”普通の歌唱法”に、普通のレパートリー。私はバロックの方に進みたい!と、選んだ先生までオペラを歌え、というなんて。


現在、昔の録音を聞くと、のどをしめて、ノンビブラートというよりは、「まっすぐな音」を作り上げているのがよく聞こえる。喉を閉めて作っているので、聞いていて、しんどくなる。それに、当時は性格的に苦しみを歌った曲が好きだった。だから、時間をまとめたプログラムを組むと、えらく、重々しく、暗い曲ばかり。音をまっすぐにしていれば、動かしたときに耳にはっきりきこえ、効果が対照的に浮き立つ。バロックは装飾が命であるので、それでいいと思ってやっていた。発声の面では恐ろしい状態になっていたのだが、留学の前は、声楽の先生にはついておらず、「音楽のスタイルの勉強」のみしていた。


二人の声楽の先生は、その不自然さを真っ先に聞きつけたに違いない。学校の先生は、いたってクラシックな内容で、バロック歌唱を学べる、と思ってついた先生は、ことさら腹式呼吸に注意しなさい、といわれたことが印象に残っている・・・ような気がする。現在教えていることと照らし合わせると、おなかに力が入っていたのではないか、と思う。


今にして思うと、こういう生徒はなかなかめんどうなのじゃないか、と思うが・・・ふたりのセンセイのところで、それぞれ違う発声をしているつもりで、1年は過ぎた。学校でDuparcを歌い、これがけっこうバロック時代からかけ離れるので、うっとおしかった。