音楽学校に行き始めの頃の記憶は、ちょっぴり途切れている。試験の申し込みに苦労したこと、わけもわからず書類を送ったこと、入学試験ならぬクラス分け試験で、ディレクター(たぶん)の伴奏で歌ったこと・・・
ソルボンヌの語学コースも、どんな風に幕を閉じたのか、覚えているのはひとつしかない。
それは、皆さんにさよならする前に、教室でマダムバタフライ(たぶん)を歌ったこと。
なかなかおしゃべりする友達もできぬまま3ヶ月の講座は過ぎてしまった。
そんなことぐらいしか、私の存在を示せることはなかった・・・ように感じていた。
寒い日もあった夏。秋はすぐ涼しくなり、思うような練習もできない中、音楽学校を決める。普通の声楽クラスへ通い、一方では、古楽クラスの見学に通い始めた。声楽クラスと平行して、同じ授業料で音楽史や音楽理論も授業も取れたのだが、できるだけ自分のために時間を確保したいとの思いから、免除してもらった。今思うと、少し心残りだ。フランス人がフランス語でどんな風に授業をするのか、いい参考になったはずだから。
けれども当時は来たばかり、まさかそのまま居ついて教える立場になるとは、想像も、期待もしていなかった。仕方ない。