日本の通訳者の先駆者の一人でサイマルインターナショナルに居られた小松達也氏曰く
「通訳の仕事は一種の真剣勝負である。一回一回の仕事ですぐ結果が出る。だから、うまくいった時は心地よく気分が良いものだが、うまくいかなかった時は自分でもわかっていやなものである。
若い頃は通訳がうまくいかなくて、つらい思いをしたことがよくあった。そんな時は回りの人の目がみんな自分を非難しているように感じたり、コーヒーブレイクになっても、通訳のブースからでていく勇気がなかったりしたものだ。
通訳の仕事は色々な要素を含んだ総合的なパフォーマンスだ。その中で、言葉自体が占める割合はせいぜい30%ぐらいだろうと思う。言葉以外に、通訳技術、知識、自信や落ち着き、声の質などの要素が加わる。」
確かに、その通り!
自分ながら非常に上手く通訳の一日を過ごした日を覚えています。
自信を持って、声もしっかり。それはある定期会議。日本人の議長さんは初めての議事進行でした。聞かれたので、私は冒頭に「毎回、こんな風にやっていますよ」とお伝えしました。会議後、その件で感謝されました。議事進行も、会議の出席者の顔も私が一番分かっている、というのが大きな自信になったのは明らかです。
最悪のパフォーマンスだったのは、ある国際会議。各国の代表者が意見交換をします。泰からの参加者の英語は泰訛りの英語です。私は泰に駐在していたことがあるので、泰訛りの英語も直ぐ理解。
そしてマレーシアからの参加者の発言。
マレーシア語?! それは、判らない。
と、思ったのは英語マレーシア訛り。
全く理解できませんでした。
その時は会議で皆さんにお詫びして「どなたか理解できる方はいらっしゃいませんか」。
シンガポールからの参加者の方が、英語で教えてくれました。
流行や歴史的出来事もしっかり押さえておかないと口ごもってしまいます。ですから、会議の前は「100覚えて1つさっと会議で使えた、と思えれば良い」と思って暗記したものです。