お母さんを失って間もない大会での優勝。
本当に強靭な精神力の持ち主だと思いました。
トリプルアクセルこそ回避しましたし、多少のジャンプのミスはありましたが、普通の選手だったらまず試合に出てこれる状況ではなかった。
仮に全日本を欠場しても、おそらく救済制度で代表に選ばれるのは確実だったのに、それでも彼女は出てきた。
それだけでも彼女には無条件で拍手を送りたい、そんな思いでした。
しかし、彼女には全日本に出て、どうしても「愛の夢」を滑りたい理由があったように思えるのです。
というのも、真央ちゃんの可憐さと優雅さばかりがクローズアップされているように感じるフリーの「愛の夢」ですが、このプログラムは真央ちゃんにとって最愛のお母さんに捧げるレクイエムだったのではないかと思うからです。
「愛の夢」はもともとフライリヒラートの↓の詞に曲を付けたものです。
愛せるかぎり愛しなさい
愛したいと思うかぎり愛しなさい
墓の前に佇み 嘆き悲しむ時が来る
その時が必ず来るから
誰かが真の愛を
あなたに暖かく注ぐ時
あなたも胸に愛を抱いて温め
その炎を燃やせばいい
あなたに心を開くその人を
できるかぎり愛しなさい
どんなときもその人を喜ばせ
どんなときもその人を悲しませることがないように
我が舌よ 慎め
たとえ悪意からではなくても
悪しざまな言葉をふと口にしてしまえば
その人は去り悲しむだろうから
愛せるかぎり愛しなさい
愛したいと思うかぎり愛しなさい
墓の前に佇み 嘆き悲しむ時が来る
その時が必ず来るから
その時あなたは墓のそばでひざまづき
憂いに沈んだ瞳を濡らす
もはやその人の影はそこにないのに
涙で湿った細草が生い茂るだけ
「あなたの墓の前で涙を流す私が見えますか?
あなたを罵ったのは決して本心ではありませんでした」
そう言っても、その声は届かない
その人はあなたを見ても抱いてもくれない
よくキスしたくちびるが
もう一度開いて「許してるから」と答えてくれることもない
その人はとっくにあなたのことを許していたんだよ
あなたの言葉に傷つき
悲しみの涙をとめどなく流していたけれど
今は静かに眠り、二度と目を覚ますこともないんだよ
愛せるかぎり愛しなさい
愛したいと思うかぎり愛しなさい
墓の前に佇み 嘆き悲しむ時が来る
その時が必ず来るから
愛する人との死別を経験した人が、友人に「死に別れる前に、後悔しないように、愛せるかぎりの愛をもって愛しなさい」と説くような感動的な詩です。
死ぬ前に伝えきれなかった母への想い…もっともっと伝えたかった「愛してる」という想い…そのすべてをこの調べに乗せて、彼女は今宵滑ったのではないかとそう思えてならないのです。
真央ちゃん、本当におめでとう。
そして、温かい感動をありがとう。