文房具メーカーに派遣で働いていた主人公は会社の業績悪化のあおりをくらい失業。
ホームレスに転落し、漫画喫茶で寝泊まりするうちに『出会い喫茶』で働くことに。
最初は『お茶とご飯』の『茶飯』だから、って思っているうちに、だんだん事情が悪くなり。

結局、『ワリキリ』っていう、つまり、売春行為まで、落ちていくんですけど。

その転落の仕方が、とても自然で「あー、ありそう」って感じでした。
なんていうのかな。悪い方向にスパイラル。くるくる落ちていく感じが
「……これは実際になったら、止まれないんじゃないかな」っていう恐怖感がありました。


主人公がたまたま、いい、友人を持っていた(神様とも言える)から。
なんとか踏みとどまれただけで。
実際には、何人もの人が、こういう世界で生きているんだろうと思えました。

悪意に満ち満ちているのに、そこから抜け出せない世界。

私は「仕方ない」って言葉だけは嫌いで「仕方ないけど、なんとかする」っていうタイプなので。
奇妙な方向性に努力してしまい「え?そこは違うでしょ」みたいに言われました。

でも、自分の頭が動かなくなったら、病院に行く、が最善と思うんですけど。
まだ、歩けるうちに、生活保護を受ける相談をする、も、自分の中では、最低レベルの義務でした。
なので、手続きが終わった時に、本当に立ち上がれなくなっても、まあ。
どうにか、なりました。

そうか。主人公は自分が健康だと思っているから、働こうという方向に行ったのですね。
私は「これはなんかの病気かバグだ」と思ったので、生活保護を選択しました。

受給するまでの間に、ちょっとしたトラブルなんかはあったんですけど。
「自力ではもう、絶対無理」って思いこんでたので、基本、役所の人に丸投げしました。
でも、思うんですけど。鬱が入ってる人なんて、普通にいるんで、それは退去理由になりませんよね。
自殺とかを疑われたのかもしれませんが、するなら、そもそも生活保護を受給しません。

とりあえず、なんとか、やり過ごして。
また、働くなりなんなりすればいいや、っていう受給決めた時の
「他に選択肢ない」感は、ちょっと凄かったです。

なので、「他に選択肢ないから」っていう感じには覚えがありました。
それが、売春行為に繋がるわけなんですが。……なっちゃうかもなーとはかなり思いました。


主人公は、母親が死んで父親からは、最低限のお金しかもらってない設定で。
友人はそれを「取り返せ」って言うんですけど。
……私の場合、二親揃っていても、最低限のお金しかもらってなかったなーと。

それでも、派遣でなんとか10年近く働いて、正社員になって病んだな、って気がします。
両親が湘南の家をば売却して借金を返済するにあたって、千葉に引っ越したんですけど。
その時、正社員になろう!って思ったのは、良いんですけど。
千葉の正社員が、あんなにブラックだったとは。
……というか、自分が正社員の人間関係の難しさについてけなかったとは!

って思うと。

「あの時、両親を見捨てても良かったのかもな」

って思ったことはありました。

この作品を見て「まあ、普通は、親は子供にある程度の義務があるんだな」って思えたのは。
良かったのかもしれません。過去に戻ることはできないので、見捨てる選択はできなくて。
結果、自分が生活保護申請っていうルートになるのは、仕方ないのかもしれません。

実際、後悔してないんで。

外れの親ガチャをひいてるな、とは思いますけども。
外れの人生をひいてるなとは思えません。
この作品の主人公の方が、よっぽど、悪意の世界に浸かってしまってカワイソウって感じです。

結局、主人公は幸せっぽい、再出発をするみたいで、それはそれで、良かったと思います。
ただ、それは偶然にそういうルートが設定されているだけで。
現実的には、ほぼ、ありえないんじゃないかと思います。あるのかな?あってほしいとは思いますけどね。

貧困女子モノのリアルとしては、ほとんど実話なんじゃないかって位ですが。
読んでいて楽しいわけではないので(誰か楽しいと思える人がいるとすれば変態?)
問題に興味のある方には、良いかもしれませんが。
楽しみとしての読書には、向いてません。確かに、圧倒的にリアルなんですけどね。

 

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