猫すきーさんには地雷な表現が、何回か出てきます。
子ネコの死体描写はちょっと引きました。
覚悟の上で作品を読んだ方がいいと思います。

母親がわき見運転事故を起こし、足に大けがを負ったためにサッカーを諦めた17歳男子が、ひかれたのは、訳ありの主人公でした。

主人公は17歳のお姉さんで、下に5歳の弟がいます。
実の父親は病死。次の父親は行方不明のダメンズでした。
ダメンズウォーカーの母親は、現在行方不明なんだけど、主人公の関心はそこになく。

子ネコの死体が、何度も現れるんだけど。死体を自宅に持ち帰って墓を作ってます。
その現場で、彼女に恋をした男の子……ちょっと、まあ、変わってはいると思いますが。
高校男子ですから。恋に落ちたら、なんでもあり、なんでしょうね。

一緒に夕飯を食べたのが、木曜日だったので。
毎週木曜日は、彼女が手料理をふるまってくれることになりました。
……幸せだな、おい。

とは言え、子猫死体事件は、『箱に入った半分死体、一匹だけ生存』状態に発展し。
その生き残りをなんとか救ってあげたい二人は頑張るんだけど、ダメでした。

よくよく考えてみたら『子猫の死体がこんなにあるのは、オカシイ』って事で。
二人で調べたところ、近くに『猫屋敷』なるものがあることが発覚。
時々、問題になる多頭飼育?無責任飼い??カワイソウ主義のおばさんが、子猫を捨てていたことが判明。

いろいろ、やりすごしてきた主人公の最後の一線をブチぎってしまいます。

そこで彼女は、高校男子に『猫泥棒をする。手伝って』と言います。
共犯を申し出た男子と主人公は、犯人の飼っていた猫7匹をあの手この手で捕まえて、攫ってきます。
ちゃんと、不妊治療もして、飼うことにしているので、動物虐待にはならないとは思いますが。

そんな事件のあと、ダメンズウォーカーの母親がしれっと自宅に戻ってきます。
自分の母親がこんなにダメでも、自分はちゃんと生きていくんだろうなーと主人公が黄昏て物語が終わります。


……猫すきさんには辛い話なんじゃないでしょうか。
『絶望』って書いて予告はしてくれてますけど、死体描写がかなりえぐい。



そして。
これは、もう、物語構成上仕方ないんですけども。

しかたない。

が乱用されていて、気分が悪くなるほどでした。


個人的に、心療内科とか(主に病院)で
「それはもう、しかたないですね」って言われるんですけど。
……意外としかたなくないんですよね。病状って。
ちゃんと、食べて。ちゃんと眠って。ちゃんと運動すれば、改善はできる。
レベルの事を『しかたない』って言われちゃうと……。

まあ、それが、鬱ってやつなんだろうな、って思うですが。

やれてないだけで、しかたないわけじゃないとも思うんですよね。


今回、無責任に不妊治療代をケチって多頭飼いして、子猫を産ませて殺してるおばさんが
「しかたない」を連呼するんですけど。マジ、キレそうでした。
(実際主人公はキレている)

全然「しかたなくない」状態なんですけど。それ。
むしろ、犯罪でしょう、どう考えても。

前に『可哀想』と言う言葉が危険と思うと書いたんですが。
『しかたない』と言う言葉は『たちが悪い』と思います。

可哀想より、しかたないの方が、より自然に使われてしまっていて。
それは思考停止の呪文のようなモノなんだなって。

私の子供時代は、『しかたない』ことが多かったんですけど。
なんとかサバイブして『しかたないけど』って、けど、と言うのが口癖でした。

『あの孫は可愛げがない』と父方の祖母に言われて『あのおばあちゃんのとこは行かない』って決めて、実際に葬式にも行ってない位。
普通の孫ではなかったということでした。たださー。なんで子供が夜まで起きてTVなんか見なくちゃならないのか、未だ疑問です。
(……寝かさないか?普通??)

幸い、半分同居していた母方の祖母は『しかたないけど、付き合ってあげて』と母の無茶ぶりの事を言ってました。
私は店番をしていればよかったので、習い事とか全部辞めたかったんだけど、付き合ってましたよ。祖母が言うから。
ついでに言えば、手が小さいのにピアノを習わされたせいで、小指が脱臼してます。
ほんと、オクターブ届かないんだから、向いてないのに、辞めさせられなかったことは、かなり恨んでます。
(でも、ピアノの先生が良い先生で、弾ける曲をやってくれた=バイエルしかやってない、のはありがたかったです。
今でも『主よ、人の望みの喜びを』が弾けるので、ピアノのバイトができました) 

……周りの大人がオカシイと子供は全うに育ってしまう気がします。
この物語の主人公も、そうなんだけど。

『しかたない、から』やるしかない。

そういう生き方をしていると、生きていることは割と面白いので。

『しかたない』で終わりにしないで、ちゃんと、向き合ってみると。
人生は悪くない気がします。



この物語は、冒頭に書いたように、猫が好きな人は心して読んだ方がいいです。
いや、むしろ、読まないほうが精神状態にはいいと思います。
ある意味、最近、この方向性でびっくりさせられる作品と出会い過ぎているので(死体描写がスゴイやつ)慣れてた気がして。
うっすら、イヤだなあ、と思ってます。

 

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