例えば恋人同士の脳ミソにICチップを埋め込んで、同期すれば、完全な相互理解が達成されるかもしれない。

そうやって地球上すべての人間の脳みそをインターネットに繋げば、僕らはひとつになれるのかもしれない。

そんな話もあるらしい。

 

2024年の1月、世界ではじめて人間の脳みそにICチップが埋め込まれた。

それがいまの世界の最先端。

実験は順調らしい。

報告によると、頭で考えただけでテレパシーみたいに、パソコンのマウスを動かせるのだという。

 

「障がい者の治療に役立つ」という、科学者お決まりの言い分。

そのうち健常者の脳みそにも使うつもりに決まっている。

そうして人間の脳みそはアップグレードされる。

ひとりがアップグレードすれば、他の人も負けているわけにはいかなくなる。

 

iPhoneの発売は2007年に始まった。

手のひらのスマートフォンで僕たちは繋がった。

次は脳みそで直接つながって何がおかしい。

すると言葉や写真を使わなくても、すべての感情は過不足なく完全に伝わるようになる。

インスタグラムはもういらない。文学なんて消えてなくなる。

孤独な僕らはそんな夢をみる。