― 第2話:Google翻訳越しのまなざし ―



プレジデントのアンドレアスさんとの関係は、いつも不思議なあたたかさに包まれていた。

彼の英語は完璧じゃない。自分の英語も、かなりたどたどしかった。

それでもお互いにスマホを片手に、Google翻訳を駆使して、言葉の壁を飛び越えようとした。


何気ない会話が嬉しかった。

何度も聞き返しながら、それでも笑ってくれる。

文化も育った国も違うけれど、興味を持ってくれているのが伝わってきた。


そして、忘れられない日がある。


その日、いつものように疲れて部屋へ戻ると、

アンドレアスさんがスマホの画面をこちらに向けてきた。


そこに表示されていたのは、


「あなたはよいが、私は時々そうではない」


翻訳アプリの不思議な言い回しだけど、彼の心の声が透けて見えた気がした。

きっと仕事や家庭、色々と大変な中で、自分のことまで面倒を見てくれている。

そんな状況なのに、愚痴ひとつ言わず、部屋を用意してくれて、

さらには他の留学生が来る時にもIKEAでクローゼットを買ってきて、自分で組み立ててくれた。


そんな人、なかなかいない。


…というか、いない。


さらに自分は、ある日とんでもないミスをしてしまう。

ジャムを作っていたときに、電熱コンロを消し忘れたまま練習へ出発してしまったのだ。

アパート中に煙が充満。気づいたのは、あの優しい犬「ドーリー」が吠えてくれたおかげだった。


アンドレアスさんの奥さん、クレスタさんがすぐに気づいてくれて事なきを得たけれど、

本当に…危なかった。

今思い出しても冷や汗が出る。


でもその後も、アンドレアスさんとの関係はまったく変わらなかった。

怒ることもなく、距離を置くこともなく、

むしろ「何か必要なら、隣町まで一緒に買い物に行こう」とまで言ってくれた。


どこまで器が大きいんだろう。

そんな人たちに囲まれていたから、気づけばこう思っていた。


「もう実費でもいいから、ここでサッカーやりたいな」


プロじゃない。お金が出るわけでもない。

でも“心”が満たされる。

そんな場所に、自分はいた。




▶️ 第3話:もう一度、このチームで。 へ続く…