極夜(きょくや)
日中でも薄明か太陽が沈んだ状態が
続く現象のことをいう
葬儀の前々日、
最後に自宅で息子と過ごした日のこと。
自宅に帰ってこれたのはあの日から三日後。
本当は日帰りで温泉に入って帰宅する筈だった。
温泉の帰りに夜ご飯を食べて、遠い道のりを車中で隣にいる息子と話して、いつのまにか眠って、自宅に到着したら起こしてあげる…
いつもそうだった。
その日は、息子がいない車中。頭痛と目眩を感じながら、前が見えないほど涙を流し、途中休みながらやっとの思いで帰宅した。遠く辛い道のりで酷く疲れ、今思えばよく帰れたなと思う。
その翌日、葬儀屋さんに息子を自宅まで運んでもらい、一夜を過ごすことができた。
瞼を閉じ、手を胸あたりで組み、足は真っ直ぐ、体は少し冷んやりとしていたけど、いつもの息子だった。息をしていないことを除けば…
まるで静かに眠っているよう
お気に入りの洋服を着せてもらい、お化粧をしてもらい、顔色はよく、痛々しい傷も消え、伸びた髪は整えてくれた。とても死んでいるなんて思えなかった。
大好きなグッズやぬいぐるみ、ゲーム、お菓子を、たくさん息子の傍に置いてあげた。少しでも息子の好きな空間にしてあげた。壊れたものを修復するように…
元通りにしたかった…
確かめるように身体に触れ、何度も息子の名を呼んで、話しかけた。でも目を開けることも、返事もしてくれない。
何度も何度も涙が込み上げて泣いた。
どのくらい泣いただろう…
その日は朝方までほとんど眠れず、夜が明けた。外は段々と明るくなるのに、心の中はまるで太陽が沈んだまま…夜が明けない世界のように思えた。
目の前のことが、嘘のようで、夢のようで、これは何なのか、よく分からなかった。
ずっと一緒にいたかった…
息子が葬儀場へ戻る前、爪を切ってあげた
綺麗な爪だった…
