確率を取り入れた量子力学 | 不動明眞

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AKIMASA FUDO AKIRA

●「後ろの正面」だけが観測される

 

量子力学が扱うミクロの世界は、観測すると、

どうしても対象物に影響を与えてしまうという

宿命があります。もちろんスリット実験の

「スリットを通らせる」という行為自体も粒子に

影響を与えてしまう要素になります。

 

わかりやすいように電子のふるまいを

「かごめ、かごめ」の遊びにたとえてみます。

「かごめ、かごめ」では真ん中に目をつぶった鬼が

いて、その鬼の周りを何人かの人が手をつないで

取り囲みます。鬼を原子核、周りの人を電子だとします

 

かごめ、かごめ・・・の歌が続いているときは

「後ろの正面」がだれなのか確定していません。

周りの人全員が「後ろの正面」になる可能性を

もっている、つまり電子がそこに存在する確率が

あるということです。

 

手をつないで回っているときは、波動の状態でいる電子

というわけです。

人に例えると、複数人になりますが、

電子には「顔」がなく区別できませんから、すべて

同じ電子です。ひとつの電子がどこにでも存在する

「重ね合わせ」の状態です。

 

歌が終わって手をつないだ人が立ち止まるときが

観測したときです。

「後ろの正面」が確定し、電子の状態もきまります

その瞬間、鬼を囲んで回っていたほかの人達は

存在しなく「後ろの正面」になったひとりだけに

なっているのです。

まるで幽霊に化かされたかのような話ですが、

これが量子の世界では普通のことなのです。

 

●確率解釈

 

次に確率という考えが加わるとどういうことに

なるか、検証してみましょう。

量子力学に、確率という考えを取り入れたのは

イギリスの物理学者、マックス・ボルンでした。

ボルンは、ボーアやハイゼンベルクらの

コペンハーゲン学派のひとりです。

 

ボルンは、電子の波である物質波は電子が発見される

確率の波であると考えました。

これは、確率解釈と呼ばれています。

どういうことかというと、電子の波動は、

電子が発見される確率を表しているという意味です。

電子が発見される確率とは、

電子が、粒子として出現する確率のことです。

電子は粒子の状態で飛び回っているのではなく、

波としてさまざまな位置に同時に存在していると

考えられます。そこから観測したときに

どの位置に現れるか、確率の分布が波動になっている

と考えるのです。

 

ここで、ある場所で粒が出現すると、

別の場所に粒が出現する確率はゼロになります

これを確立の波が収縮するといいます

 

シュレーディンガーは、自身が提唱した波動関数を

実在の波としてとらえていました。

一方ボルンは、波動関数が示すのは電子の存在確率でしか

ないと考えました。

量子論の多くの理論に言えることですが

ボルンの確率解釈も「これで計算するとつじつまが合うから」

と利用されているだけで、どうしてそうなるのか

はよくわかっていません。そのため今でも確固とした

理論であるとはいいきれず、反論が消えることもないのです。