去年の八月に映画出演した。

人生何が起きるかわからないものである。

50歳を越えて映画デビューするとは思いもよらなかった。

 

三味線を弾く日本人を探している

というメールが来たのは去年の6月頃だったと思う。

どうしようか迷った。

三線は弾くが三味線は弾いたことがない。

子供の頃箏を習っていたので、先生が弾く三味線と合奏したことはあるが

自信はなかった。

そもそも三味線を持っていない。

だが、これは直ぐに解決。

友人のAさんが三味線を持っていて、快く貸して下さった。

 

相棒は撥弦楽器は何でも直ぐ弾きこなすので

彼が弾いた音源に合わせて空弾きするので良いなら、

と条件を出したら

意外にも承諾が出、映画出演が決まった。

プレイバックとは言え、弾いている手は正確でなくてはならない。

その日から猛練習が始まった。

 

これが楽しかった。

やっぱり撥弦楽器が好き、としみじみ思った。

 

感染予防の為、検査をしていざ出発したのが

8月の半ばであった。

 

ローマの近くの某所。

行って直ぐに衣装を着てメイクしてもらった。

案の定

東洋の神秘系瞼にごってり色を盛った化粧。

 

ここから待つこと1時間ほど

撮影所に移動。

 

着いた時は呑気に構えていたが

日が暮れるまで待ったのである。

 

いざ撮影となると

やはり弾いてくれと言われ

必死で弾いた。

2分とかからない出番であった。

 

そして6月1日に公開された映画を見に行った。

Jasmin Trincaという女優の監督第一作。

Marcel!

古典高校を出ている彼女

恐らくパゾリーニ、フェリーニやタルコフスキー等を観て育ったのであろう。

感覚で観、後でじわじわくる映画であった。

 

私の出番はと言えば、

一秒映ったのみであった。

映画ってそんなものである。