→ 海賊船に拐われて~解説
「ねぇ、ミニョ~、次はあのアトラクションに乗ろう、今なら10分待ちだよ、チャンス、チャンス~」
「あっ、うん、そうだね」
院長様ぁ~、活発で行動的な親友のユリは、私がもうヘロヘロなのに休ませてもくれません。
アトラクションは楽しいけど、私は遊園地自体が初めてで、もう疲れてしまいました。
園内は広くて、平日なのに人がたくさんいて、それだけで私は目が回りそうです。
ふ~ん『カリブ~の海賊船』かぁ、面白そう。アトラクションの入口の看板もカッコいい海賊が描かれていて、これなら乗っても大丈夫かな。
高校生活最後の卒業遠足、生まれて初めて来た『ネズミ~ランド』なんだから楽しまなくちゃ。
「ほらっ、ミニョ早く。私達の番だよ。さあ、乗ろっ」
「あ、あ、あ、うん … 待って」
院長様、小さな子供も乗れるアトラクションのはずなのに、入口の向こうが真っ暗です。
こんな簡単な安全バーだけで、落ちたりしないのかしら …
ガクッ、ガクッ、ガタンッ …
うわっ、いきなり動き出した …
「キャ~、ヤッホ~、アハハ、声が響いてる~、ミニョも声を出しなよ」
親友のユリはいい子なんだけど時々、騒がしくて恥ずかしい時があります。今、まさにそれ …
ガタンッ、ガタンッ、ガガァァ~
「あ~、うん、えっ、ええ~っ」
上に少し登ったと思ったら、急降下したぁ~~っ、院長様ぁ、怖い~っ …
ガタンッ …
キャッ、何これぇぇっ、安全バーが外れちゃった~っ …
「ちょっとぉ~、ミニョぉ~!!!」
「ユ、ユリぃ~っ、助けてぇ!!!」
ザッバ~ンッ、ブク、ブク、ブク …
★*:;;:*★*:;;;:*★*:;;;:*★*:;;;★*:;;:*★
「プハッ … ユリぃ~、誰かぁ~、助けてぇ~、私は泳げないの~」
真っ暗な上に、何て深いのかしら …
ただのアトラクションなのに、セットが凝り過ぎなのよ …
あ~、身体がドンドン冷えて来る …
足が底に全然つかないから、ずっとバタバタしてないと沈んじゃうし …
も、もうダメっ、手足に力が入らないです、院長様 …
今まで、お世話になりました …
私、こんなネズミ~ランドのアトラクションで、院長様とお別れになるとは思いませんでした …
ザッブ~ン …
ザバッ、ザバッ、ザバッ …
あ~、もう幻が見えます、院長様 …
「おいっ、お前ぇっ、死にてぇのか、こんな夜の海で泳ぎやがって」
ええ~っ、誰っ、何か変なしゃべり方する人だわ …
初対面で『お前ぇ』呼ばわりなんて、失礼しちゃう …
「す、好きで泳いでるんじゃありません、溺れてるんです … 」
「おお、言い返す元気があるんだな。ほれ、掴まれよ」
つ、掴まれって …
あ、あ、あれ … この人、アトラクションの看板の絵にそっくり …
… って事は …
「か、か、海賊 … 」
う、嘘ぉ~っ!
「おうよ、溺れてるって割にゃ余裕だなぁ、お前ぇ。ほら、船に連れて行ってやるから … 」
「こ、こ、困ります。海賊船なんて」
ええ~っ、海に落ちて迷惑をかけた罰として、アトラクションの中で働かされたりするのかしら …
わ、私は何の役ですか …
「別に、ここいらの鮫のエサになりてぇなら俺ぁ、構わねぇぞ」
さ、鮫ですって …
キョロキョロ、キョロキョロ …
ここ、アトラクションの中の偽物の海なんかじゃない …
「ほ、ほ、本物の海 … 」
「お前ぇ、頭ぁ大丈夫かぁ?海に落ちたショックで、どうにかなっちまったのかよ、仕方ねぇなぁ~」
こ、この野蛮な話し方は、絵本で見た海賊に間違いありません …
院長様、私はネズミ~ランドのアトラクションに乗ってたはずなのに …
本物の海賊がいる世界に、来てしまったみたいです …


