~ ある夜、ソウル町にて ~
ファン国城の城下町ソウルの町外れにある、真新しい看板が飾られた『マッキーダンス教室』。( 参照1)
元々は代々のファン王家に仕える身辺警護を担当している家柄の当主で、息子に第一線を継がせてから、マッキー自身は趣味のダンスを貴族や町の良家の子女に教えていた。
ギョンセやテギョンにも気に入られていた縁でファン国城内にも教えに来ていたが、長年の夢だったダンス教室をつい最近、開いたばかり。
その玄関前に、白い馬から降り立った身なりの良い男が一人、ある少女を必死に探し回り、ここへたどり着いた。
そう、これまで自分にとってその少女は『妹のような存在』だと思っていた。いつでも手の届く範囲から、彼女が消えてしまうまでは …
「シンへ、見つけたぞ … 」
マッキーダンス教室のドア横の小さなガラス窓から、中の様子が見える。
何日もその行方を追い求めた、もう妹扱いなど出来ないその彼女が、他の男の腕に抱かれダンスを踊っている。
現国王の側室から生まれた第2王子という立場から常に第1王子テギョンの補佐的な役割を担い、冷静沈着を心がけて来た男の嫉妬心にその愛らしい姿が火をつけた。
キキィ … バタンッ …
ドアを開けるとすぐに大きな鏡張りのダンスフロアが広がり、それぞれ個性的な練習着を纏った教室の生徒達が、突然やってきた珍客を驚きの顔で出迎えた。
一目見れば、その立ち振舞いから庶民ではないと分かる。身のこなしや歩き方などが、町中を行き交う男達とはまるで違う。
「シヌ様 … どうして、ここへ … 」
シヌを見ながらざわめく教室内で、シンヘだけが背中を向け、その場から立ち去ろうとしている。
「シンヘ、待ってくれ、話がある」
「シヌ様 … 」
教室から出ようとしていた、シンヘの足が止まる。恋い焦がれたシヌに呼ばれて、無視など出来ようはずがない。
ファン国城のメイドの仕事をしばらく休むとマ・フニに告げたまま、忽然と姿を消したシンヘ。
ソウル教会の院長やシスター達に固く口止めをし、このダンス教室に朝から晩まで足繁く通っていた。
院長達も、テギョンとミニョの苦労を間近で見て来ている。晴れてテギョンの正妃となれたミニョは幸い、出生がコ王国の王族だったがシンヘはソウル町の庶民の出。
このままファン国城へは戻らせず、ソウル教会に留めるつもりでシヌが何度訪ねて来ても、シンヘを思う院長達は口を頑として割らなかった。
「は~い、皆さん、今からこのフロアは、こちらのお二人の貸切りになりま~す。別のフロアに参りましょう」
ファン国城に出入りしていたマッキーは当然、シヌの事を知っている。シンヘを自分の元へ連れ戻しに来た事も …
見つめ合うシヌとシンヘのただならぬ様子から、ダンス教室の生徒達も何も言わず、ここは二人だけにしようと気遣い …
「「「「「 は~い! 」」」」」
… と、まるで子供のように揃って返事をしながら笑顔でフロアを出て行く。
「シヌ様、ごゆっくりどうぞ。しばらく、この部屋は誰も通しませんから」
長年、命がけでファン王家を護って来たマッキーの瞳が光る。
「ああ、シンヘが世話になった。マッキー、感謝する … 」
シヌが笑顔で返事をすると、マッキーは静かに頷き、生徒達の後に続いた …
★*:;;:*★*:;;;:*★*:;;;:*★*:;;;★*:;;:*★
誰も居なくなったダンス教室の鏡の前で、伏し目がちなシンヘをシヌは後ろから抱き締めた。
「シンヘ、捕まえたぞ … 」
「シヌ様 … 」
逢いたくて、逢いたくて仕方なかったシヌの声がシンヘの耳から身体中に流れて行く。
「やっと、俺は見つけたんだ」
「何をですか … 」
シンヘは、背中にシヌの優しい温もりとその遠回しな言い方に、はがゆさを感じている。
「ああ、ずっと俺の側にいて欲しいと思える人だ … 」
「シヌ様 … 」
シンヘを包み込むシヌの腕に、力が入る。ダンス教室に通っているメンバーで、ファン国城に関わりのある者は一人も居ない。
シヌの言う『側にいて欲しい人』とは、謙虚なシンヘでも自分の事だと分かる。
「シヌ様は、ミニョ様の事がお好きなんですよね … 」
「フッ、そうか、お前にはバレていたんだな。以前はそうだった。正直、テギョンから奪いたいと思った事もあった。だから俺は、この先に誰も好きになれないと諦めていたんだ … 」
「はい … ソウル教会で初めて逢った時から、気づいていました … 」
「そうと分かっていて、俺をずっと見ていてくれたんだな、シンヘ … 」
「はい … 」
「有難う … シンヘ … 」
「シヌ様 … 」
シンヘの涙を指先で拭き取りながら、シヌは鏡の前にシンヘを連れて行った。
シンヘが行方知れずになったのは数日だったが、シヌは寝る間も惜しんで探してくれたのだろう。やつれて疲れた表情が伺える。
「シンヘ、鏡を見てごらん。俺が一生、側にいて欲しいと思う人だ。お前が居なくなって、初めて気づいた … 」
シヌの声も震えている。とても嘘をついているようには見えない。
「うっ、うっ 、うぅ … 」
『本当ですか』と尋ねたくても言葉にならず泣き崩れたシンヘを、シヌは自分の胸の中にスッポリ収めた。
「俺の願いを、叶えてくれるか … 」
「はい … 」
シヌはシンヘが泣き止むと自分の白馬に乗せ、ファン国城へ向かった …
★*:;;:*★*:;;;:*★*:;;;:*★*:;;;★*:;;:*★
~ テギョン&ミニョ&マテの部屋 ~
「何を見てる … 」
「内緒です … 」
( ウフフ、テギョン様ったら、分かってるクセに … )
シヌがシンヘを迎えにソウル町のマッキーダンス教室へ行ったと聞いてから、バスルームから出てもミニョは窓の外をずっと見ている。
『吹き抜けの間』でシヌと初めてダンスを踊った翌日に、シンヘはファン国城から居なくなっていた。
鬱ぎ込むシヌを見かね、その辺りの事情を知るマ・フニを半ば脅すようにシンヘの居場所を白状させたのは、意外にもテギョンだった。
「お前、俺に隠し事をするのか 」
マ・フニからワンを通し、その事をとっくに知っていたミニョは、テギョンに心から感謝をしている。
「テギョン様、シンヘの為に有難うございます … 」
「フ、フン、何の事だ」
ミニョにお礼を言われて照れたテギョンは、横を向いている。シヌがシンヘと結婚すれば一安心、などと考えたとは絶対に言わない。
「昼間、ジェルミ様に遊んで貰って、マテも寝ましたね … 早くベッドに入らなくていいんですか … 」
「お、お前がそこまで言うなら、ベッドに入ってやらないでもない … 」
珍しくミニョから誘われて、テギョンが断るはずもなく …
「テギョン様、サランヘヨ … 」
「ミ、ミニョ … 」
ミニョが自分の首に手を回し口づけをせがむと、テギョンは堪らず互いのローブの紐を一気に解いた …
★*:;;:*★*:;;;:*★*:;;;:*★*:;;;★*:;;:*★
参照1 ~ ウナギ先輩なら、よ~くご存知だと思われる『あの方』がモデルです~(笑)
グンちゃんからの信頼も厚く、ウナギ先輩からのリクエストもあり、ご本人様も素敵な方なので再び、ゲスト出演して頂きました。
ちょっと強引な設定ですが、そこは『ファン王国物語』だから …
あ、皆様の妄想スイッチ『中』ぐらいでスーツをバリッと着こなしたダンスの先生にして下さい~








