~ バスルームの中 ~
「アンマ~、チャプチャプ~」
「マテ、風邪を引きますから、肩まで入りましょうねぇ … 」
「アンマ~、ウキャッ、ウキャッ … 」
( チッ、ミニョが少しも俺の方を見ない … やはり、マテとは別々に入るべきだった、面白くない … )
元々、テギョンとミニョの二人で入るにも、広くてゆったりとしたバスルームだったが …
マテは、裸のミニョの胸に抱かれ、ここぞとばかりに甘えたい放題。
ミニョに関してはどこまでも貪欲で幼児化するテギョンは、同じ湯船に浸かっているのに、とてつもない疎外感を感じている。
『まだ赤ん坊だから仕方ない』
… そんな事は、微塵も思わないヤキモチ妬きテギョンは、口を尖らせながらマテをミニョから取り上げた。
「俺がマテを抱く、お前は先に身体でも洗っていろ … 」
せっかく3人で入っているのに、不機嫌そうなテギョン。ミニョもさすがに呆れて溜め息をついた。
「テギョン様 … 何か怒ってますか」
怒っているのではなく、自分に構って欲しいだけだと素直に言えるテギョンなら、何も苦労はしない。
「フン、何でもない」
その尖らせた口は、決まってヤキモチを妬いている時の顔だとミニョも知っている。
こうなると、後々まで説教がましくなる事が多いテギョンを何とか宥めるため、ミニョは素直にマテを手渡した。
「はい、分かりました。テギョン様、マテをお願いしますね … 」
チュッ …
その腕の中にマテを預けながら、テギョンの頬に軽くキスをすると …
「こっちもだ … 」
… と、当たり前のように反対側の頬へ同じ事をせがむテギョンに、ミニョはクスクス笑いながら、その通りにした。
細身でありながら毎朝のトレーニングを欠かさないテギョンは、軽々とマテを片手に抱きながらミニョを引き寄せると …
「もう充分に甘えただろ、次は俺の番だ。マテ、あっちの窓際を見ていろ」
「ムキィィ~、アッパ~、ムムム … 」
と、マテの頭を窓のある方へ無理矢理に向かせ、テギョンは自分の胸元でじっとしているミニョに、濃厚なキスを繰り返した。
テギョンは一向に止める気配はなく、二人の舌と舌が絡み合う音がバスルームに響き渡る。
当然、今度はマテが不機嫌になり …
「ムムム … アンマ~、アンマ~」
… と、抱っこされたいとばかりにテギョンのジャマをしてミニョを呼ぶ。
「あの … マテが … 呼んで … 」
唇と唇の隙間から吐息と共にミニョの声が漏れるが、テギョンは聞き入れずに熱い口づけを続け …
その脳内には昼間、女医に聞かされた『男女の産み分けのコツ』がグルグルと回っていて、具体的な作戦会議が今、まさに開かれている。
( このバスルームで出来るだけ、ミニョをその気にさせて … )
この愛して止まない妃コ・ミニョの事だけは、どんな綿密に立てた計画もたった1回の軽いキスで狂わされ、その笑顔で怒る気力もなくしてしまう。
この俺がこんなに想っているのにと本当はミニョを責めたくても、後は『数打てば当たる』『神頼み』という、頭脳明晰なテギョンらしからぬ他力本願で挑むしかない。
「ミニョ、ちょっといいか … 」
「はい … 」
「お前もマテと同じように、次は王女が欲しいと思うか … 」
マテはともかく、ミニョもそう望むなら可能性に賭けてみたい気もする。
「はい … どちらでも構いませんが、女の子は父親に似ると言いますから、逢ってみたいとも思います」
頬を赤らめて自分を見上げるミニョに似ている方が嬉しいなどと、思いながらも …
ミニョ自身にそう言われると、女医のアドバイスが頭によぎる。
「コホン … ミニョ、この後で早めにベッドへ入るぞ … 」
「は、はい … 」
テギョンお得意の『早めにベッドへ入る』は、『いつもより濃密に二人の時間を過ごすぞ』と言う意味で …
ミニョも嫌ではないが『明日の朝、起きれるかしら』などと考えてしまう。
「アッパ~、ムムム … 」
テギョンの魂胆を知ってか知らないでか、マテが訝しげに二人の顔を見ている。
「コホン … マテ、お前は弟ではなく、妹が欲しいんだろ … 」
「アッパ~、ウキャッ、ウキャッ … 」
途端に機嫌良く笑い出すマテは、そうだと言いたいらしい。
「そうか、それなら俺とミニョのジャマをするな。お前の望みを叶える為の出来る限りの努力をしてやる … 」
「ムムム … アッパ~、アッパ~」
マテは『仕方ないなぁ、分かったよ』とでも言いたげに、テギョンの腕に抱かれて大人しくしている。
( よし、マテを早く寝かせるぞ … )
手早くマテの身体をキレイに洗い、何とか疲れさせる為、湯船の中で手足を動かすように促す。
テギョンに遊んで貰ってるつもりのマテは『ウキャッ、ウキャッ』と、何も知らずに喜んでいる。
「ミニョっ、マテに飲み物を与えて眠らせて来る … このまま待ってろ … 」
「あ、はい … 」
ザバッ …
テギョンはマテを抱いたままローブを羽織り、バタバタと慌てた様子でバスルームを出て行った。
王子としては完璧なはずなのに、愛する妻子の為に奮闘する夫としての姿は、かなり不器用でぎこちない。
「ウフフ … テギョン様、早くして下さらないと、のぼせてしまいます … 」
ミニョは、久々にこの場所でテギョンと甘い時を過ごせる予感がしている。
全身くまなく薔薇の香りのソープで洗い上げ、再びテギョンがバスルームへ戻って来るのを待った …


