~ ファン国城の会議室 ~
「 我が国ファン王国の東西南北の国境はどこも異常なし、同盟国とも関係は安定しており、特に内政干渉が必要な不安定な国もありません … 」
「そうか、ご苦労だったな」
午前中には、重臣達との重要な会議があった。週1度は開かれる定例会で、広大なファン王国の国境にある各々の居城から防衛面での連絡が、定期的に発表される。
有事以外は、この会議を目的に各居城から兵と書状を乗せた早馬がファン国城へとやって来ては、敵の侵入や国民の間でいざこざや反乱がないかが逐一、報告されていた。
歴代の国王の治世では、一番長く安定して平和を保っているギョンセ国王の政治に、意を唱える者はいない。
テギョンはアン大臣のいつもと変わらない報告を聞きながら、心の中ではミニョとの夜の秘め事について考えていた。
( やはり、跡継ぎのマテの意見は最もだ。王子も増やさなければいけないが、ミニョ似の王女を見てみたい気もする、きっと可愛いに違いない … )
ミニョと結婚する前は会議の度にピリピリしたムードを漂わせ、重臣達も胃が痛くなるほど緊張していたが …
父親となって、さらに人間味を増したテギョンは時々、愛する妃ミニョの事を考えては上の空になる。それはもう、会議に出ている皆がとっくに知っていた。
( 男女を産み分けるなど出来るのか … 聞きづらいが女医にでも尋ねてみるか … これは、ミニョやマテの為にもなる事だしな … )
ミニョの関わる事となると元々、周囲が全く見えず、見境がなくなるファン・テギョン。
面と向かうと、幼稚な闘いを繰り広げるマテの事もテギョンなりに愛していて、やはりその願いとあらば何とか叶えてやりたいと思っている。
「テギョン様 … そろそろギョンセ国王様が … 」
( この会議が終わったら、医務室に行ってみるか … )
「テギョン様、聞いておられますか … 、テギョン様 … 」
考え事の最中、自分の名前を呼ぶアンがうるさく思ったテギョンは、眉間にシワを寄せて答えた。
「何だ、アン、俺は次の子供は王女が欲しいんだ … 」
「は、はぁ、テギョン様 … 」
一瞬、会議室はシーンと静まったが慌てた様子の若き城主テギョンに、年配の重臣達からも笑顔が溢れた。
「「「 ワッハッハ … 」」」
「い、今のは気にするな、アン … 」
完璧な王子としての仕事ぶりながらも、無表情で年相応の若さがなかった以前のテギョンの面影はもうない。
愛息マテと共に、将来の王妃ミニョがファン国城に帰って来た事を、重臣達も心から喜んでいる。
「テギョン様、ファン王国の繁栄の為に思う存分、ミニョ妃様とはお励み下さい。今の所、外交の手段として望まない第二、第三の妃をお迎えになるような事はございません … 」
ファン王国の政 ( まつりごと ) を担う重臣達も、テギョンがコ王国へと行っていた間にシヌから聞き及び、ミニョの病状を知っている。
万が一、ミニョの夜中の夢遊状態を見られて騒がれるより、事前に事情を話し理解させてから箝口令を出した方が得策だと、シヌが判断したからだ。
「お前達 … 」
テギョンは、どれだけ妃のミニョがファン国城の者達に慕われ、大事にされてるかを感じ、何よりも勇気づけられた。
「さあ、テギョン様。ファン国城は本日も異常はございません。特に何もなければ、医務室においで下さい」
アンは、子供の頃から見守り続けているテギョンの考えなどお見通し。
留守がちなギョンセ国王に代わり、テギョンの父親のような存在で、重臣達の中でも一番の味方だった。
「そ、そうか … 俺からは何もない。また次の会議まで、気をつけて過ごしてくれ … 」
テギョンは重臣達に労いの言葉をかけると、そそくさとミニョ担当の女医のいる医務室へと急いだ …
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~ テギョンとミニョの部屋 ~
( 女医め … また厄介な事を … )
幾分、テギョンは口を尖らせ気味で部屋のソファに座って足を組んでいる。
テギョン本人が、女医のいる医務室に立ち寄った事を知らないミニョは、心なしか元気のない姿を心配していた。
( テギョン様、具合でも悪いのかしら … 話しかけない方がいいですね … )
いつもなら夕食から部屋に戻るなり、毎度の事ながらシヌやジェルミと仲の良いミニョを戒めるように、ベタベタと触り口づけを交わす。
それなのに今日は、食事中もボーッとしてジェルミも不思議がっていた。
会議室での会話が原因だと察していたシヌだけは、笑いを堪えていたが …
女医に聞かされた『男女産み分けのコツ』を、テギョンは頭の中で繰り返した。
( ミニョを必要以上にフワフワさせてはダメだと … 無理だっ!アイツはすぐにそうなってしまうんだっ! )
これはテギョンのせいだと言えなくもないが、仕方ない事でもある。素直で敏感なミニョに『感じるな』とは言える訳もない。
( あっさりと、浅く … だとも言っていた。それは、さらに難問だ。ミニョは俺の弱点の腰に、すぐ手を添えてくるんだ … この俺にどうしろと … )
ミニョを想い過ぎるテギョンにとって、女医から聞いた話はとてもではないが現実的ではない。
( チッ、こうなったら数で勝負だ … )
今日1日、思い悩んだ結果、こういう結論に達したテギョン。早速、ミニョをバスルームに誘おうとすると …
「アッパ~、チャプ~、チャプ~」
「何だ、マテ …『チャプ~』とは」
マテの代わりに、抱っこをしているミニョがテギョンへ答えた。
「お風呂のようです … あの、3人で入りたいんですけど … ダメですか」
ミニョとの甘い一時をジャマされたくないテギョンは、マテの風呂だけはすすんでメイド達にやらせていた。
それはそれで、マテは満足していたようだが、大好きなミニョと入れる方が嬉しいに決まっている。
ミニョの夢遊病もまだ治癒したか分からない状態を、何よりも気にしているテギョンがこれを断れるはずがない。
「ああ、分かった … 」
「有難うございます、テギョン様」
チュッ …
渋々、了承したテギョンの顔が、ミニョのキスで途端にニヤケ顔になる。当然、マテもそれを求めた。
「アンマ~、チュッチュ~」
「はいはい、分かってますよ … 」
チュッ …
「アンマ~、アンマ~」
( チッ、マテめ … 調子に乗ってるな … 見てろよ … )
「さあ、入るなら入るぞ … 」
テギョンとマテは、ミニョの見てない所で静かに火花を散らしている。
そうとは知らないミニョは、家族3人で初めて入るバスタイムを喜び、笑顔で着替えを用意し始めた …


