~ ドンジュンの医務室 ~ ※1参照
「それで … ミニョ妃様が、どうされたんですか … 」
医務室に入り勧められたイスに座ったテギョンは、しばらく黙ったままで重い沈黙が続いた。
患者を医務室で待つのが仕事である侍医のドンジュンはともかく、テギョンは多忙の身。
そのテギョン自ら出向き、かつてミニョを争った自分に話そうとしているからには、かなり深刻に悩んでいるに違いない。
治療が必要なら、1日でも早く自分が関わりたい、ドンジュンはいてもたってもいられない気持ちになった。
「夜中に抜け出すのは、何が原因か」
あえて『ミニョ』の名は出さず、テギョンは淡々と話し始めた。まだ自身も信じたくないという様子だ。
「抜け出す … テギョン様に、何の断りもなくですか … 」
あのミニョが … テギョンが嘘をついているようには見えないが、ドンジュンもにわかに信じがたい。
「声をかけて行くのなら、何も心配はしない。それにアイツは、意識があるなら俺に何にも言わず、夜中に部屋を出て行くような女ではない … 」
テギョンの表情は固い。昨日や今日からの話ではなさそうだ。
「つまり、無意識に … 出て行ってしまうという事ですね … 」
「ああ … 」
ドンジュンが以前から、心配していた事 … それが的中した。
「診察してみなければ断言は出来ませんが、それは … 『夢遊病』かと思われます … 」
「やはり、そうか … 」
テギョン本人も、ただジッとしていたのではなく、自ら医学書を読みあさりドンジュンと同じ結論に達した。
本当なら、医師であるドンジュンに否定をして欲しかったのだ。
「ええ … ミニョは生真面目で、一途な性格です。常にテギョン様を第一に考え、一歩も二歩も下がって自分を抑えてしまいます … 」
「ああ … それは俺が一番、よく知っている … 」
心を頑なに閉ざしていた自分は … そんなミニョに何度、救われただろう … テギョンは唇を噛み締めた。
「ミニョ妃様は元々、神に身を捧げるシスターを目指しておられた方です」
ガタンッ …
「今さらっ … そんな事は、俺だって分かっているっ!」
テギョンは思わずイスから立ち上がり、堪らず大声を出した。
自分達は夫婦として、他に代わりが居ないほど愛し合っている自信がある …
だが、王位継承者としての自分の立場が、ミニョを不幸にしてしまうかもしれないという、誰にも言えない不安がずっとテギョンには有った。
「テギョン様、落ち着いて下さい。ミニョ妃様に関わる重大な事です」
「ああ … そうだな … 」
テギョンは短く溜め息をつき、またイスに深く座った。
身分の違いはあれど、かつての恋敵であったドンジュンに余裕のない姿を見せてしまうほど、テギョンは追い詰められていた。
「ミニョ妃様にとって、大国であるファン王国の存亡に関わる『王妃様』になられるというのは … 過大なプレッシャーや精神的なストレスがかかってらっしゃると … 」
「それは言われなくても分かっている。マ・フニにも無理のないスケジュールを組ませている … 」
ミニョを手離す事など出来る訳もなく、それでもギョンセ国王から正式に王位継承を受ければ、しばらくはマテの面倒どころか、自室に戻る間もないほどに雑務がある。
その間、ミニョやマテに何かあったら … 二人を深く愛し過ぎるが故に、テギョンの苦悩は尽きない。
「ミニョ妃様には、心身共に休養が必要です … 」
ドンジュンとて、二人の仲睦まじさは間近で見ている。故意に引き離そうとしている訳ではない。
ただ、医師として … 幼い頃からミニョだけを見つめて来た、一人の男としての正直な想いだ。
「この俺に … ミニョとマテと … 離れて暮らせと言うのか … 」
天井を見つめたテギョンの声は、今にも消え入りそうで、これまでドンジュンが見た事も聞いた事もなかった …
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※1 ~ ドラマでおなじみ、コ・ミナムの親友『キム・ドンジュン』は、この『ファン王国物語』では城下町ソウルの開業医の息子という設定です。
テギョンがミニョと結婚する前には、ミニョを巡りバトルしてますが … 私は、意外にこのドンジュンのキャラが好きで他の番外編でもよく登場させてます。
私の好きなエピソード ~ テギョンとミニョの仲を反対していたファランの策略で、ドンジュンの別荘に連れて行かれたミニョを、3人の王子が連れ戻しに行く話。
→ モファランの策略
→ ドンジュンの別荘
→ 3人の王子と教会
良かったら、ご参考にどうぞ~♪



