ボサノヴァはブラジルの音楽なので、ブラジル・ポルトガル語で歌われています。

 

ブラジル・ポルトガル語とポルトガル・ポルトガル語は似ていますが

発音や言葉の意味などが、ちょっと違う所がありますね。

アメリカ英語とイギリス英語の違いに似ています

 

サンバやボサノヴァのリズム感には、言葉の強制(アクセント)が深く関係していて

話していても歌っているようなブラジル・ポルトガル語の持つリズムは

音楽にも大きな影響を与えています。

 

 

さて、そんなポルトガル語ですが

ボサノヴァが「GETZ/GILBERTO」でアメリカに進出した1960年代。

一躍ボサノヴァは全世界に広まったのは

英語歌詞の曲も入っていたということ大きいでしょうね。

 

 

 

「イパネマの娘」の英語歌詞はNorman Gimbelが書いています。

 

それほどオリジナル歌詞からかけ離れた訳にはなっていませんが

アメリカ人にポルトガル語を英語歌詞に翻訳されると

南国、パパイヤ、ヤシの木、ビキニ...みたいな全然関係ない歌詞にされたり

原曲とは違うニュアンスの歌詞になってしまうことに耐えらなかったA.C.ジョビンは

その後、ポルトガル語とほぼ同じ内容になるように英語歌詞を書くようになったそうです。

 

メロディの良さだけでなく、歌詞の深さまで伝わるように

やはり原作者の意図は大切ですね。

 

 

例えば有名な「Garota de Ipanema」(英題 The Girl from Ipanema)。

ポルトガル語歌詞と、英語歌詞を比べてみます。

 

Garota de Ipanema
(Antonio Carlos Jobim/Vinícius de Moraes/訳:Akiko Yanagisawa)

 

Olha que coisa mais linda, mais cheia de graça
É ela menina que vem e que passa
Num doce balanço, caminho do mar

 

ほら、魅力に溢れた美しい少女が

甘いリズムで海沿いの道を歩いて行く

Moça do corpo dourado, do sol de Ipanema
O seu balançado é mais que um poema
É a coisa mais linda que eu já vi passar

 

イパネマの太陽の下で黄金に輝く彼女の身体は

まるで歌うように揺れる

それは僕が今までに見た何よりも美しい

Ah, Porque estou tão sozinho?
Ah, Porque tudo é tão triste?
Ah, a beleza que existe

A beleza que não é só minha
Que também passa sozinha

 

あぁ、どうして僕はこんなに孤独なのだろう

あぁ、どうして全てがこんなに哀しいのだろう

あの美しさは僕だけのものじゃなく

そしてまた彼女もひとり通り過ぎて行くだけ

Ah, se ela soubesse que quando ela passa
O mundo sorrindo(inteirinho) se enche de graça
E fica mais lindo, por causa do amor

 

あぁ、もし彼女が

みんなの前を通りすぎるだけで

その愛によって世界中が微笑み(優雅さ)に溢れ

もっと美しいものになるということを知っていたなら
 

 

The Girl From Ipanema
(Antonio Carlos Jobim/Norman Gimbel/訳:Akiko Yanagisawa)
 

Tall and tan and young and lovely

The girl from Ipanema gose walking

And when she passes

Each one she passes goes - ah

 

背が高くて若く可愛らしいイパネマ娘が歩いて行くよ

みんな口々に「あぁ...」と思わず溜息をつくんだ

 

When she walks she's like a samba

That swings so cool and sways so gently

That when she passes

Each one she passes goes - ah

 

彼女はサンバのような素敵なスイングで歩く

だから彼女が通り過ぎると

みんな口々に「あぁ...」と思わず溜息をつくんだ

 

Oh, but I watch her so sadly

How can I tell her who loves her

Yes I would give my heart gladly

But each day, when she walks to the sea

She looks straight ahead but not me


あぁ、でも僕は彼女を哀しげに見るだけ

どうやって彼女に告白すればいい?

そう、僕は喜んでハートを差し出すよ 

でも毎日、君は海辺をただまっすぐに

僕には目もくれず歩いていくだけ

 

Tall and tan and young and lovely

The girl from Ipanema goes walking

And when she passes I smile

But she doesn't see

 

背が高くて若く可愛らしいイパネマ娘が歩いて行くよ

そして彼女が通り過ぎる時、僕は微笑むんだ

でも彼女は僕には目もくれないんだ

 

 

 

やしの木やしの木やしの木

両方の歌詞を読んでいただくとわかりますが

前半はまだ良いとして、

英語歌詞の方は、海沿いを歩く美しい女性に声を掛けたいな〜という

まるでナンパ・ソングになっていますよね笑い泣き

 

「Garota de Ipanema」は

イパネマ海岸を歩く美しい女性たちに対するオマージュ=賞賛の気持ちを歌った曲です。

これはジョビンの息子たちもインタビューで名言しています。

 

「こうしている自分も孤独を感じるが

自分が周りを幸せにしていることに気づいていない彼女も、また同じく孤独なんだ」

ある意味、ヴィニシウス・ジ・モライスらしい哲学的でもある詩なんですよ。

 

とは言え、大ヒットしたことには間違いはなく

今でも英語やジャズでも多く歌われる The Girl from Ipanema」。

 

歌う時には、原曲の意とするところも知っておいて欲しいなと思います音符