千代の富士引退記者会見が終了しました。
ほっと一息ついていた時に九重部屋の若い衆が「『横綱』が下に来てますよ」と教えてくれました。
九重部屋で千代の富士は「大将」と呼ばれ、「横綱」といえば北勝海(現八角理事長)でした。
1階に下りて行ってちゃんこ場、つまり調理場に入っていくとまさしく北勝海関がいます。
この場所は初日から休場していましたが大将千代の富士の引退を聴いて九重部屋に来ていたのです。
とっさにインタビューをとりたい、しかもNHK単独でと考えました。
「すみません、横綱のインタビューをとらせてください!」とお願いしました。
あっさりOKをもらえました。
すぐに2階のスタッフのところへ行き他社に聞かれぬように小声で「1階に北勝海関がいます。インタビューOKです」と伝えました。
今、記者会見を終えたばかりのアナウンサーの先輩内藤さんがそのまま1階におりて北勝海関のインタビューを取りました。
まだこの夜の取材は終わりませんでした。
外へ出てくると「二子山理事長」のコメントも取ってほしいと連絡が入っているというのです。
記者が言うには銀座に近い料亭で横綱審議委員と会合をしているらしい、とのことです。
店の名前は「なんと読むか分からないが金に田中、それしか分からない」
今ならネットで検索すればすぐに分かりますが当時はそんなことはできません。
しかし草履屋の息子としてはすぐにピンときました。
金田中かねたなか、新橋にある料亭です。
「それ新橋の金田中です。新橋演舞場の近くです。とにかく新橋演舞場に向かってください。」と取材の車に乗り込みました。
金田中に着いたものの一流中の一流の料亭がどんなお客様が来ているかを明かすわけがありません。
ひたすら待つしかありません。
夜も遅くなりその日のうちに取材する必要がなくなったのか1社、また1社と引き上げていき我々だけが残りました。
やがてようやく二子山理事長が出てきました。
何時ごろになったかは覚えていません。
二子山理事長の千代の富士引退に関するコメントをもらうことができました。
大変な夜ではありましたが歴史的な場面の取材に関われた興奮で今思い出しても胸が熱くなります。