横綱照ノ富士が破れて館内に座布団が飛びました。
前のほうに座っているお客さんは突然座布団がとんでくるのでたまったものではありません。
ラジオの放送席にも飛んでくることがあります。
テレビと違ってラジオの放送席は客席の中にあります。
両国国技館のラジオ放送席は通路の上、比較的後方にあるので座布団が飛んできた記憶はありません。
一方、地方場所はまさに桟敷席の中にあるので座布団が飛んできます。
かつてラジオディレクターとして放送席に座っていた時にやはり座布団が飛び交ったことがありました。
その時の解説は初代貴ノ花の二子山親方でした。
結びで横綱が破れた途端、座布団が飛びました。
放送席の解説者とアナウンサーに座布団があたったら大変です。
一方で画像にもある通り私は頭にインカムという連絡用マイクを付けています。
いつどんな連絡が来るかもしれません。
このインカムを付けたまま解説の二子山親方とアナウンサーの後ろにまわり手を広げて座布団をよけるいわば「人間バリケード」になりました。
インカムにはケーブルがつながっていますがそれほど長くないのでどうしても中腰になります。
この体勢でとにかく騒ぎが収まるのを待ちました。
私が相撲を見始めた昭和40年代は座布団が飛ぶ光景は見たことがありません。
ある一番を境に座布団が飛び始めた気がします。
それは昭和50年春場所千秋楽の優勝決定戦、大横綱北の湖が敗れた瞬間のことでした。
座布団が飛び交いその興奮がテレビ画面からあふれてきました。
北の湖に勝って悲願の初優勝を飾り、飛び交う座布団の中で勝ち名乗りを受けたのがまさに初代貴ノ花でした。
その初代貴ノ花の二子山親方を座布団から守っている、なんとも不思議な気持ちでした。