そろそろ春は来ないかなぁと思っていた時期、青森で夜明け前にタクシーに乗ったことがありました。

 

その日はまだ雪が降っていました。

夜明け前、世の中の音がみんな雪に吸い込まれているような静けさです。

 

なかなか雪の季節は終わりませんねと話しかけると運転手さんが

「うちのばあちゃんが言うんですよ、

 春になると雪をとかす雪が降るってね」

青森に勤務して初めていろいろな雪があることを知りました。

サラサラの雪、湿って重たい雪、細かい雪、大きな雪、いかにもこれから深々と積もっていきそうな雪。

津軽には七つの雪が降るという表現もあります。

とはいえ「雪をとかす雪」は初めて聞きました。

 

春が近づいてくると日中寒さがゆるます。

すると固まった雪がいったん溶けます。

そしてまた夜の冷え込みで氷のように一層固くしまります。

その上に新しい雪が降っていきます。

春が近づくとその雪はちょっとフワッとした淡雪だった覚えがあります。

凍って固まった雪におおいかぶさるように降る雪。

まさに「雪をとかす雪が降る」

 

それにしてもなんて素敵な表現でしょう。

本当なら津軽弁で聞いてほしいのです。

 

青森の冬を過ごしたからこそ分かったのかもしれません。