今日の朝。ソファーで寝ていた映画学生二人と、
掃除の手伝いのためにわざわざ来てくれた女の子二人、
そしてルームメイトの6人で、パーティー後の大掃除。

さすがに、6人もいたら、直ぐに家が綺麗になる。
その後、みんなでベニスビーチにある、朝食が食べれる店で、
オムレツを食べた。

歩いて帰ってきて、自分の家が見えて来たところで、
女性の悲鳴が聞こえて来た。本当の悲鳴は
「キャー」とかいう生易しいものでは無い。

女の人が車道で、取り乱して、泣き叫んでいる。
4軒隣に住む、近所の人だった。

道路に横たわるのは,彼女の飼っている白い犬。

黒のSUVが道路の真ん中に急ブレーキで止められ、
メキシカンのおじさんが血相を変えて飛び出して来た。

彼女の犬が、この車にたった今、敷かれたのだ。
他の犬を追おうとして、道路に飛び出してしまった。

周りにいる人間が立ち止まり、その犬を助けようとするが、
手遅れだった。ピクピクと痙攣をし、そして動かなくなった。

彼女は、変わり果てた愛犬の姿を見る事ができず、
自分の家のドアまで歩き、その場で泣き崩れた。

ショックだった。
その場で立ち尽くすことしか、出来なかった。
この犬は、俺の犬とも何度も遊んだ事のある犬だった。
近所の犬が一斉に凄い勢いで吠え出した。
この犬に何が起こったのか、他の犬達にも伝わったのだろう。
悲しい叫びだった。

突然、自分の愛するものが一瞬にして目の前で奪われた、
その隣人の女性の悲しみを、想像することなんて出来なかった。

10分ほど、俺達はその場で立ち尽くし、
そして家に戻った。

家のドアを空けると、俺の犬のディスコチェリーが飛び出して
来た。みんなは無言で、尻尾を振っているディスコを
ただ、見つめていた。

ショックを受けた表情のまま、みんなに別れを言い、
俺は自分の部屋に戻り、そのままベッドに倒れ込んだ。

ディスコを抱きしめて、俺は眠ろうとしたが、
全然寝る事が出来なかった。

ぼーとしていると、
最近友達になって、昨日のパーティーにも来てくれた、
ダンサーのジェシカさんとPsycheさんが、ジェシカさんの
出ているダンスショウへのお誘いの電話をかけてくれた。

緊急で、今夜は出る予定でなかったジェシカさんが
ショウに出る事になったのだ。

ジェシカさんの踊りを絶対に観たかったので、
今夜の予定を変更して、すぐに駆けつける事にした。

ジェシカさんが参加しているダンスショウは、
GROOVALOOといって、ヒップホップのフリースタイル
ダンスのショウだ。
http://groovaloo.com/

劇場のあるノースハリウッドは、
俺が昔に住んでいた時よりも、
綺麗で栄えているようだった。

俺は、今までこのようなダンスのショウを見た事が
なかったので、開演前からドキドキしていた。
横に座るPsycheさんが、俺のダンスについての
質問に答えてくれた。

そうしていると、観客席の明かりが落ち、ショウの
始まりがアナウンスされた。

ショウが始まる。
そして、俺は、完全に圧倒された。

衝撃の体験だった。
プロダンサーのスキルの応酬!!
ダンサーの一人一人に個性があり、
その人特有のエネルギーがあり、
一気に14人ものダンサー達がステージで踊り始めると、
その個性がチームとして、1つになる。
ヤバイ!!

90分間、ずーっと鳥肌が立っていた。
大音量の音楽のビートに乗って、
俺の心と体が揺れていた。

ジェシカさんも、
この大舞台で、本当に楽しそうに
ダンスを踊っていて、輝いていた。
キレキレで、めちゃくちゃカッコイイ!!
「この人はやはり凄いオーラの持ち主だ!」と
憧れの眼差しで、俺は彼女の芸術を見させてもらいました。

ダンスはその人の生きる力のようなものを
見る事ができるような気がする。爆発的で、
花火のように燃え、そしてやがて静になる。
今日は隣人の犬の事故で、「死」を経験し、
今夜のダンスで「生」を感じた。

最後に、観客はスタンディングオベーションで、
今夜のショウを讃えていた!!!
本当に、このダンスを観る事が出来てよかった。
ジェシカさんと、Psycheさんに出会って、
俺の知らない世界を紹介してもらえた事が
本当に嬉しかった。楽しい!!!

ジェシカ Blog
http://ameblo.jp/jessicarabone/

Psyche Blog
http://ameblo.jp/yachiyopsyche/



帰りに、あの隣人の家を通った。
涙目になったけど、こらえた。

あの犬は、ベニスで、幸せな一生を送ったと思う。

アイツはいつも、あの庭でダンスを踊っていた。



http://www.youtube.com/watch?v=IiqfKF9BlcI
サカナクション / ネイティブダンサー