『ハリウッドで、愛をさけぶ!』 新進映画監督 北村昭博   AKIHIRO KITAMURA OFFICIAL BLOG  

今村昌平監督、緒形拳さん主演の映画『復讐するは我にあり』
を昨日の午後にJapan Film Festivalで観て来ました。

復讐するは我にあり ストーリー

昭和38年。当時の日本の人々はたった一人の男に恐怖して
いた。榎津巌(えのきづ いわお)。敬虔なクリスチャンで
ありながら「俺は千一屋だ。千に一つしか本当のことは言わ
ない」と豪語する詐欺師にして、女性や老人を含む5人の
人間を殺した連続殺人犯。延べ12万人に及ぶ警察の捜査網
をかいくぐり、78日間もの間逃亡したが、昭和39年に熊本で
逮捕され、43歳で処刑された。映画ではこの稀代の犯罪者
の犯行の軌跡と人間像に迫る。

凄い映画だったよ。
かなり衝撃を受けた。本物の映画だ。
監督が、役者達が、スタッフが魂を込めて作った映画だ。
ヤバ過ぎる。監督も今の日本映画にはないような大胆な
監督術を見せているし、女優さん達はもうなにもかも見せて
いる。裸という意味ではない。綺麗な所も汚い所も強い所も
弱い所も全てをさらけだしている。ここまで出来る女優さんは
今、映画界でどのくらいいるのだろうか?
俺はなんちゃって女優は好きでない。「演技をする」という
覚悟が無い女優は女優なんかではなく、ただのタレントだ。
「復讐するは我にあり」のような映画を撮るには、本物の
役者と一緒に仕事をしなければならない。

本物の役者。
緒形拳さんは本物の中の本物の役者だった。
この間みた「長い散歩」ではもう老人だったが(それでも良い
演技を見せていた)、この映画ではもの凄く若くて、
ギラギラしていて格好いい。俺の緒形拳さんのイメージ
はCMでビール飲んでウマいと言っているオッサンだったの
だけど(笑)、完全にそれが覆された。もしかしたら、
いままで見て来た日本人俳優の中で、一番格好いいかも
しれない。そのくらい、この映画での彼の圧倒的なエネルギー
にぶっ飛ばされた。正直、怖かった。少なくとも、この映画で
彼が演じた榎津巌には、絶対に出会いたくないなと思った。
ああ、彼が凄いのはこの役の暗黒の面をガツンとみせながら、
時々「愛」を人に求めているはかない感情をちらっと見せる
ところ。それが良いんだよなあ。

今村昌平監督も凄かったなあ。カメラワークでは、
迫力のある絵を大胆にドンドンと入れて行く、長回しをした
り、クローズアップの使い方も上手かった。殺人シーンの
描写はリアルで生々しいし、セックスシーンも本当に
匂ってくるようなリアル感があった。そうそう、この映画は
観ていて本当に匂いが伝わって来る。顔を背けたくなるような
血の匂い、布団の中の男と女の匂い、街の匂いに、自然の
匂い、人間の色々な匂いが伝わって来る。
ヤバイ。

俺は今まで,アメリカで映画を勉強したし、アメリカ映画界で
映画を撮って来た。これからも役者としても監督としても、
ハリウッドを舞台に活動していくだろう。でも、俺は日本人
だから、日本映画が好きだからこそ、日本映画界を背負える
人間になりたい。映画人の大先輩の今村昌平監督や緒形拳さん
の残した物を受け継いでいきたい。昔の映画人は凄かったんだ
なあ。

それにしても、『復讐するは我にあり』は俺が生まれた
1979年に作られたんだ。運命を感じるぜ。

俺も本物の映画人になってやる!
絶対に。



http://www.youtube.com/watch?v=KEAvGF2oDrQ
復讐するは我にあり Vengeance is mine 予告編

ちなみに、ロスにいる方はまだこの「復讐するは我にあり」
を観るチャンスがあります!4月17日の金曜日、
夜9時45分にJapan Film FestivalがDowntown
Independentという俺の映画も公開した映画館で上映
します。詳しくは映画祭のウェブで。http://www.jffla.org
プリント上映で、映画館でこの映画を観るチャンスは
日本にいても無いと思うので、絶対にオススメです。
ていうかガタガタ言わずに観にいけ!!!!!