俺は23歳の彼女を日本に連れて行った。
ビザ取得。
保証人。
銀行残高証明。
書類の山。
全部俺。
飛行機代もホテル代も当然俺。
別に特別なことをしたとは思っていない。
こういう関係なら普通だと思っていた。
でも冷静に考えれば、
ちゃんとした奥さんではないにしても、
フィリピンには一緒に暮らしている相手がいる。
そういう立場で、
別の女を日本に連れて行く。
今思えば、
罰が当たったのかもしれない。
日本に着いてから言われた。
「別々の部屋がいい」
理由はこうだった。
「男の人と一晩一緒に過ごしたことがないの」
さらに、
「お母さんが、分刻みでビデオチャットしてくるの。
同じ部屋にいないか確認するために」
そう言っていた。
23歳でそれは本当か?
とは思った。
でも深く突っ込まなかった。
まあいいか、と流した。
一度だけ一緒に泊まったけど、
基本は距離を置かれた。
今思えば単純だ。
他の男と連絡を取りやすくするためだったんだろう。
帰国翌日。
なんとなく嫌な感じがした。
日本で迷子にならないように入れていた
iSharingという位置共有アプリ。
消していなかった。
何気なく見た。
ホテル。
それだけ。
男と一緒かどうかは、その時点では分からない。
でも十分だった。
俺は彼女の父親に連絡した。
そして一緒にホテルへ向かった。
59歳の俺と父親がホテルへ行く。
なかなかの図だ。
出てきた男。
前から
「彼はゲイだから大丈夫」
と言っていた男だった。
ときどきその男と一緒の写真も送ってきていた。
「ゲイだから心配いらないよ」
俺はずっと違和感があった。
そしてそれは当たっていた。
俺とは日本で別々の部屋。
その男とは朝まで同じ部屋。
ここではっきりした。
俺は何か。
恋人ではない。
特別な男でもない。
スポンサーだ。
ビザを取る男。
飛行機代を出す男。
ホテル代を出す男。
でも一緒に朝を迎える男ではない。
怒りというより、
「ああ、やっぱりな」
が先に来た。
日本まで連れて行って、
金も時間も使って、
結果これ。
そのあと荒れたのは俺の方。
やけ酒。
59歳。
どこかでまだ
「自分は特別扱いされる側だ」
と思っていたらしい。
甘い。
そしてたぶん、
ちゃんと向き合っていない関係を抱えながら
別の女に本気になったことへの
報いでもあったのかもしれない。
でも一つ分かった。
自分の違和感は、だいたい当たる。
無視すると、
あとでちゃんと痛い目を見る。
