以前、兄の様子に変化が見られたことをお話した.

 


この後、精神科医の友人のアドバイスを受けて
兄を名古屋市内の病院へ
アミロイドペットの検査に連れていくことになった。

本人を説得するのに大変苦労したが
この件についても、
また、折に触れてお話しようと思う。

検査を受けた病院は
主に高次機能障害をメインとする病院で
アルツハイマーではなく、
何かしら、治癒可能な病気であってほしい
という望みをかけていたのだが、
結果的には「若年性アルツハイマー」という診断だった。

そして、高次脳機能障害を専門とするその病院では
そこから先は、どこか、お近くの病院でどうぞ。

といった感じで、
近くのメンタルクリニックで
アリセプトを処方してもらうことしかできなかった。

その後、兄は障害者認定とともに、
介護認定も受け、
デイサービスもショートステイも
楽しんでいってくれていた。

特に、ショートステイ先では
職員さん達にも
まだ若いので、できることもたくさんあるので、
なんでも、手伝わせてください。と伝えていたし、
本人にも、手伝いにいく感覚で遊びに行っておいでよ。
といって、送り出していた。

実際、毎回、兄も楽しんで通ってくれていたし、
カラオケを歌って楽しんでいってくれていた。

このまま、しばらく
穏やかにすごせると願っていたし、
そう思っていた。

しかし、
薬を処方してもらっていたクリニックは
正直、問診はものの5分。
では、薬をだしておきますねー。

と、適当なものだった。

そして、いつの間にか
薬が中段階の薬(メマリー)に変わっていた。

結果的にこの薬が
兄の病状には
せん妄状態を誘発してしまう結果と
なってしまったのだが、

ある朝、急に
「安倍さんがきているから会いにいく」
と言って、財布も電話持たずに
飛び出していってしまった。

父が勲章や叙位を頂いていて、
家のリビングには
安倍元首相の名前の入った賞状や
天皇陛下から拝受された勲章が飾ってあるので
兄の中では安倍さんが、身近な存在だったのだろう。


また、次には
いつの間にか、自分が結婚したという妄想から
結婚祝いのパーティに
さんまさん、たけしさん、タモリさんが
駆け付けてくれるから。と
行かなくてはいけないと出かけて行ってしまう。

私はとりあえず、
豊川の警察署に保護願いをお願いした。
ほどなくなくして、
近所のコンビニのベンチに座っているところを
保護され、自宅に連れってきてくれたのだが、
ちょっと目を離した隙に
また、出て行ってしまい、
同じコンビニのベンチに座っていた。
そして、店の方がまた、警察に通報してくれたのだが、

警察から怒鳴って電話がかかってきた。
「お宅、いい加減にしてくれないか。
お宅に振り回されてこっちは仕事にならん!」

「家は出入り口が6か所も7か所もあるので
私ひとりでは、無理なんです」

というと、

「鍵をかけておけば、いいんじゃないですか。
今、警官が向かっているが、現場でポイするからな!」
 

そうやって、怒鳴り散らしている。

鍵なんか開けられるし、
縛っておけ!とでもいうのか、
正直、呆れてものが言えなかった。

そんなこんなで、
3日間、徘徊を繰り返した。
私は兄の事が心配なのは、もちろんだが、
兄が他の誰かに迷惑をかけてしまうかもしれない
その事の方が心配だった。

 

私も近所を車で走り回り
歩いている兄をみつけ、
声をかけるのだが、その度に逃げてしまう。


警察は何もしてくれないどころか、
夜、無銭飲食をした際も
同じ警察官が怒鳴って電話してきた。

しかし、兄の中では、
父の相続の時に
お世話になった弁護士さんが
結婚祝いでおごってくれた。
そういうことになっている。
決して、意図して無銭飲食をしようとしたわけではない。

すぐに、病院の予約が取れるわけでもなく、
また、通院していたクリニックには入院施設がない。

とにかく、なすすべがなかった。

 

しかし、4日目
兄は徒歩で隣の豊橋市まで歩いていき、
保護願もだしていないのに、
パトロール中の警察官が
車道に少しはみだして歩いている兄をみて
すぐに、声をかけて、保護してくれた。

その時は、
兄は、まだ、自分の名前も住所も言えたが、
迎えにきてくれる家族はいるか
警察官から聞かれると、
「安倍首相」か「さんまさん」と答えたらしい。

そこで、豊川署に照会をして
豊橋の警察から私に直接電話が入った。

電話の向こうの警察官は
とても、親切だった。

多分、私の顔をみると
逃げようとするかもしれませんが、
と伝えると、
「大丈夫ですよ。別の部屋で保護しているので心配しなくていい」
「このまま、保護した状態で医療機関に繋げた方がいいと思うが、
とりあえず、豊橋署まで向かってくれるか?」

そう言われ、すぐに豊橋警察まで向かった。
途中の車中で、保健所からも電話が入り
入院先の調整をするという。

すぐに、保健所と連携して動いてくれていたのだった。

そして、警察につくと、
警察官は私のことも慮って本当に一緒になって考えてくれた。

そして、病院からは翌日からなら受け入れ可能と回答があった。

しかし、警察官は
「それでは今日の夜が困る。妹さんひとりで面倒みているから。
今日から受け入れてもらえないか、プッシュしてくれ」
と保健所にかけあってくれた。

そうこうしているうちに、
ケアマネから電話があり、
急遽、今夜ショートステイが取れたと連絡が入った。
そのことを伝えると
それは、よかった。


「でも、どうやって連れていけばいいでしょうか?」

と尋ねると、

「わしらがちゃんと、送り届けるから心配しなくていいよ」

と本当にありがたかった。

そして、続けて

「一応、明日、自分の車で行くと
途中で逃げられてしまうかもしれないので
タクシーで迎えにいって、
そのまま病院に向かおうと思います」

「ただ、病院さんとは
打合せをしておくつもりですが、
タクシーを降りたとたんににげだされたら
どうしようかと、それだけが若干心配なんです」

というと、

「その時はわしらが動くから
すぐに110番してくれればいいから」

とまで言ってくれた。

本当にありがたかった。

後日、お礼の電話を入れると
担当してくれた警察官は非番で不在だったが、
要件を話をし、お礼を伝えてほしい

そう伝えると
電話口にでた警官も
それは、本当によかった。
それが私たちの役割ですから、
そうやっておっしゃっていただくと、
私たちも一生懸命やった甲斐があって
嬉しく思います。
わざわざ、ご連絡ありがとうございます。

と優しく答えてくれた。

そして、同時に
権力だけを振りかざす、
豊川の警察の体制のお粗末さには
あきれる一方だった。

これに関しては、
県警にも電話したところ

平謝りで
「介護の大変さも知らない、警察官が本当に申し訳なかった。
豊川署には厳重に注意をする。 謝罪の電話は必要でしょうか?」

と聞かれたが

「これは、多分、その方の「人となり」の問題で
心から謝罪してくれるとは思わないので、結構です。
ただ、今後、きちんと改善してほしい」

とだけ、伝えた。

案の定、謝罪の電話はなかった。

隣の市なのに、
なぜ、ここまで違うのか

また、弱い立場の人間を守るという本来の任務を理解していない
そして、介護の苦労もしらない警察官が
生活安全課の仕事など、到底無理だと思う。

現在のコロナ過において
国民の気持に寄り添っていない
政府に対して皆が不信感を抱いているが、

全く、この件についても同じである。

「人の立場にたって、物事を考えること」

これは、当たり前のこと。

公務員であれば、尚更である。

でも、残念ながら、
豊川署の体制は未だ変わっていないようだ。

先日の事故の処理の件も含めて
豊川の警察署は酷すぎる。
本当にちゃんと仕事しているのか
と言いたくなる。

検挙数云々を言う前に、
何がしたくて、警察官になったのか、
初心に戻ってほしい。

 

本当に
「市民のために働く警察」
ということを自覚してほしいものである