私が物心ついた時から
両親の仲は悪く、

今でも、母が包丁を片手に父親を追い回していたことを鮮明に覚えている。

それでも、かろうじて家庭という形があったのは10歳ごろまで。
その後は一家離散となった。

私は母と二人で家を出て、
兄は父と暮らしてきた。

母との暮らしは決して裕福ではなく、
貧乏な生活を強いられたが、
決して不幸とは思わなかった。
母が私のために、
昼も夜も、必死で働いて育ててくれたことには感謝している。

 

一方の兄はお金に困ることなく、
父と二人で暮らしてきたが、
果たして、そのころの兄が何を思っていたのかは

今となってはわからない。

 

ただ、かすかに記憶にあるのは
まだ、家族という形があったころ、
なかなか自転車に乗れなかった私のために、
父と二人で練習に付き合ってくれたこと。

あるクリスマスの夜、
夕飯を食べていた時に
兄が一瞬、台所から消えた。

その後、父が
「弥生ちゃん、今玄関で音がしたよ」と言った。

私はすぐさま、玄関に行くと
そこには、クリスマスプレゼントが置いてあった。

多分、兄がこっそりとクリスマスプレゼントを
置きにいったんだろう。

10歳年上の姉と兄と私、末っ子の私は
可愛がられて育ってきたんだろうな。
とは思う。

姉のことは、今は縁をきっているが、
これについては、
また折に触れて話していこうと思う。

そんな幼い頃のことが

今は懐かしく、また、切なく
あの時の兄はもういないんだな
と思うと、
だんだんと壊れていく兄をみているのが
悲しい・・・・

もっと、たくさん話をしておけばよかった。
ただそれだけ。