どうもこんばんは、こんにちは(*´∇`*)


時々やってみるTwitterの診断で
「甘い香りのリップクリーム」というお題が出てきました。

書きようによっては幕末でもいけそうですが、
今回頭に浮かんだのは安直に現代パロ。


皆さんならこのお題で誰が浮かぶかな?

うぬちゃんは慶喜さん(次点沖田さん)だと言ってました♡(なにそれ何年も待つからちょうだい)


私は、高杉さん(次点沖田さん)でした(*´∇`*)

現代パロリーマンです



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彼はスパイ映画のように

曲がり角や非常階段、会議室のドアの隙間など、あらゆる死角に潜んではその手を伸ばしてきた。

そうして照明と人目から私を隠す。


「まだ仕事中です」

手を出される前に牽制(けんせい)すると、猫科の動物みたいに喉を揺らして笑った。

「…なんですか?」

「こうして引き込むこと自体に文句は無くなったんだな」

あ…と思ったのが顔に出たんだろう。
高杉さんは眉を上げて言外に「そうだろう」と勝ち誇る。

「いい傾向だ」

慣れた仕草で首を傾け、唇が近付けられた分だけ頭を後ろに引いた。

「ー仕 事 中…!」

「いいぞ、休憩を許可する」

「高杉さんが許可をくれてもだめなの!」

身をよじって抵抗する中で、ふと、嗅ぎ慣れない香りが混じる。
 
ナッツクリームのような、チョコレートのような、まったりと甘い香り。


(高杉さんから…?)

気をとられて動きを止めた私に彼が唇を重ねたことで、香りの出所はあっさりと判明した。

「……」

思わず押さえた唇からは僅かに移った香りが立ち、胸はどくんと嫌な音を立てた。


(…甘いものなんて、食べないのに…)

そうなれば、この人の唇が甘く香る理由なんて後いくつも無い。

(今、高杉さんから私に移ったように、誰かのリップの香りが…)



ここへ入社したての頃、仕事に慣れない内から高杉さんの笑う声や仕草を覚えていた。当時はそんな自分にため息が出たけど、後に他の多くの女性社員達も同じだとわかって少しほっとした。

潔く真っ直ぐに通る鼻筋と切れ長の目は彫刻のように整っていて。そこに彫刻には出せない色気と抜群の仕事っぷりを併せ持っちゃうおそろしい人だから社内の注目を集めるのは必然だった。

そんな彼の周りにはいつも、派手めかつ美しく足の長い女の人達がいた。
このコクのある甘い香りも…。

(彼女達なら、すんなり似合っちゃう)

高杉さんとは些細なきっかけから挨拶を交わすようになって、気が付けば彼に追われる身となっていた。

身に余る光栄であり、同時に怖かった。
離れていく日がもうそこに見えている気がしてずっと心の壁越しに高杉さんと接してきた。

私だけがこの人の特別枠だなんてそんな訳はないぞと、いちいち調子づきそうになる自分に言い聞かせてきたのに…。


(ようやく壁を崩し始めた、このタイミングで気付いちゃうんだな…)


あんなに構えてたのは傷つかないためだったのに、結局こうして心が破れてしまった現実に自嘲したかった。だけど口角を上げる元気すら、今はないみたいだ。

「…どうした」

いつも強気な高杉さんが、私の様子が変なことに気付いて心配そうに問いかける。答え方を探している間に勢いよくドアが開いた。


「見つけた…!やっぱり○○さんのところだ」

「…沖田、空気を読め」

「いいえ、あなたは先ず部署の空気を読んでください。交渉は明日ですよ。はい、これも飲んで」

「やかましい後輩だ」

言いながら、高杉さんがコーヒーショップのカップを受け取って口をつけた。

「………。  甘い匂い…」

呟くと、高杉さんは首を傾け、沖田さんが代わりに教えてくれた。

「あぁ、これ、珍しいでしょう?煮詰まった時の打開方らしいんですけど、見慣れないと笑っちゃいますよね」

「お前な…。あ、おい」

高杉さんの手からカップを引き抜いて、どきどきしながら口に含んで確かめてみる。

(……! さっきの香り…)

「…おーい」

「あ…甘いの飲むなんて…知らなかったの…」

「○○さん…?どうしました?」

「……」

この期に及んで飛び出して来たのが言い訳だなんて。情けない気持ちでいっぱいになって、ぐしぐしと顔を擦った。


「ごめんなさい、私…。一回、叩いて欲しい」

「なんでそうなった」

「…高杉さん、普段○○さんにどんな接し方を…?見損ないました」

「ちがう。いいからお前は戻ってろ」

会議室のドアの向こうへ沖田さんを追いやる間にも高杉さんはあらぬ疑惑で怒られている。卑怯な私が“表面上だけ”高杉さんから逃げていたからだ。

無性に愛しくて気の毒で、真っ直ぐな背中に飛びついた。
予想外の衝撃に耐えきれずにふらついちゃう様まで、なんだかとても、いとおしい。

「ごめんなさい。甘い匂いがして高杉さんを疑いました…」

「……」

「本当に信じられないのは自分の方なのに…。高杉さんはいつでも真っ直ぐにここへ来てくれたのに、ごめんなさい。もう遅いかも知れないけど、私…」

「遅いな」


審判が下されて、自分の愚かさに目を閉じた。おでこから彼の背中の体温が離れて行ってこのまま、何もかもが終わってしまう。

と思っていたら、身体が一瞬宙に浮いてデスクの上に下ろされた。

「何ヵ月待たせる」

予想外の展開に追いつかず、胸は先ほどの痛みをひきずったまま現金にも甘く跳ね出した。高杉さんの細められた目が、優しかったから。


「怖くて、警戒ばかりして…」

「…いいさ、正直自業自得だからな」

大好きな鼻筋、頬に何度も当たっていたのにこちらから触れたことは無くて。どきどきと伸ばしはじめていた手を“自業自得”という言葉にさっと引っ込める。

「そのくらい警戒心のある女でいい。…今はしていない」

ぐ…と複雑な顔をした私をくっと笑った後、少し顔を下げる。さっき引っ込めた手を出して、眉間から鼻先までをそっと撫でると、触れた側の私の方がぞくりと震えた。


誤魔化すように受けていた彼の抱擁や口付け、今真正面から受け止めてみたい。
自然と、そう思った。

例えいつか傷つく日が来たっていい。
気持ちを重ねられる今が一番大事なんだと、解ったから。


「…ここで目を潤ませるとは…」

高杉さんはどこか苦しげに眉を曲げながら笑って、唇が触れる寸前に呟いた。

「生殺しだ」











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おちまい(*´∇`*)♡
久々高杉さんをちゃんと(パロのくせに)書いた。
後半激苦戦したけど、楽しかったです♡