続きものです。
未読の方は  【①】  からどうぞ☆




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ガチャリ、と開けられた扉が、へたり込んでいた私の背中を押して止まった。


「……ん?」

「…! あ、あの…私…!」

「…なんだ、○○さんじゃないですか」


半泣きの私を見下ろして、沖田君はくすりと表情をやわらげる。


「…へ…?」


もっとずっと深刻なことになると思っていたのに…。

意外な反応にばかな顔で見上げる私の手から、カフェの袋を持ち上げて覗くといつもの通り無邪気に笑った。


「やった、僕の好きなプレッツェルだ!嬉しいな、○○さんも一緒に食べましょう」

(な…何を言ってるのよ……?)


沖田君のそれがあまりにも自然な反応で…。

もしかしたら自分が変な妄想をしてしまっただけで、ソウイウコトでは無かったのかも知れない。

そう思え始めて、恥ずかしさに少しだけ頬を緩ませた矢先、沖田君の後ろからもう一人が顔を出した。


「…○○か?」

「あ…土方…さ…!」


お疲れさまです、と言おうとして息が止まった。

勤務中はいつもきっちり着こなしている彼のドレスシャツが、どう見ても情事の始まったそれのように、隙だらけに乱れていたからだ。

「……!」

いつの間にか手から離れて散らばっていた、鞄や傘を大急ぎでかき集めて立ち上がろうとした時、
力の入らない足首がヒールを倒して、がくんと視界がずれた。


「おっと」

「阿呆」


転がりそうになった体は、後ろからことも無く片腕ずつ支えられていた。


「阿呆は無いでしょう、僕達の大事な○○さんに。…確かに、捕獲された宇宙人みたいな恰好が、少し…笑っちゃいますけど…」

「うるせぇな。こいつは甘い顔ばっかしてるとどこででもすっ転ぶんだよ。お前こそ、宇宙人とか言ってやるな」


頭上で交わされる会話になんだかひどくバカにされてる気がしたし、沖田君の言葉には可笑しなところもあったけれど、今はそれどころじゃない。

土方さんの身体からいい匂いがするわ、沖田君の長い髪が頬をくすぐるわで、そう。
健全な女子には今のこの密着環境は耐えられたものじゃないのだ。

このままここに居たら熱が出て倒れるし、それに、二人が顔を合わせて話してるのを見ると、さっき聞いたシーンを思い浮かべてしまって色々とまずかった。


「わ…私…!!かか、帰ります…!お邪魔ですから…!私は帰ります!」


腕から逃げ出して、どもりまくりながら帰るを連呼する私を二人は無言で見下ろして、
それから沖田君はふっと眉を下げて、土方さんはにやりと笑った。



「やだなぁ、邪魔だなんて…。○○さんは僕達の特別枠ですから安心してくだい」

人懐こく微笑む姿は相変わらず天使のようで、さっき聞いたばかりの声と、まだうまく重ねられない。


「どっちにしろこんな時間にお前一人帰らすわけにはいかねぇよ。最後は送ってってやるから、大人しく付き合え」

頭に手を置かれながらずっと待ち焦がれていた台詞を聞けたのに、肌蹴たシャツが気になって集中できない。



「そうですよ!土方さんに足蹴にされる者同士、今日は仕返しの作戦を練りましょう」

「…俺の前でか?」


じゃれ合う二人を窺うように見上げながら、私はひとり、『特別枠』ってなんだろうと熱い指先をもじもじさせていたのだった。





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大人版へ続く(●´艸`)