『充電方法が切り替わったんだよ』




慶喜さんの言葉を受けて、私は彼を見上げたまま動けずにいた。



(……つまり……挿すって……ことだよね…?)



私の物を記憶する力は一体ツヤホの何分の一だろう。整理のために一度、頭の中で呟くと一気に現実味が増してしまう。


思わず、私を見下ろす慶喜さんのきれいな肌に意識がいってしまって慌てて目を逸らした。



「◯◯?」

「…は、はい…」

「…………」

「…………あの、えっと…」


震える声で返事をすると真剣な表情に見つめられる。戸惑いを隠すために何かを言おうとして言葉を探していると……


「ーーふっ………あはは!」


それまでの空気を破って慶喜さんが笑い出した。


「……あの…?」

「はは………あー、可愛い」


よしよしと小動物でも愛でるように頭を撫でられながら、なんだろうと慶喜さんを見上げる。



「ーー嘘だよ」

「え…?」

「充電方々が2通りあるなんて、嘘だよ、◯◯」

「え?……だって、さっき…説明ページに…!」


慶喜さんは文章の並んだ“手のひら液晶”をこちらに向けて、瞬く間に触れもしないで内容を書き換えてしまった。


「……!…ひどい、騙しましたね?」

「ごめんごめん、もうちょっと疑ってくれるかと思ったんだけど……。お前の信頼が痛かったよ」


膨らんだ私の頬をつつきながら、楽しそうに笑っている。


「……あんなに、ドキドキしたのに……」

「うん、ドキドキしている◯◯、可愛かった」

口を尖らせて怒ってみせても、にっこり笑って頬を撫でられるだけ。


「だから、安心して俺の胸でおやすみ……何も、しないから」

「…………」


横向きに寝そべった慶喜さんはこっちへおいでと手を差しのべてくれるけど……。

私は素直になれずに ころん と寝返りを打って慶喜さんに背中を向けた。


「……あれ?」

「悔しいから…行きません」


慶喜さんの電池はまだ15%くらい残っていたし、ちょっとだけ拗ねたらすぐに、ちゃんと身体を向かい合わせようと思っていた。


(……でも、もし慶喜さんが充電出来ないって心配してたらかわいそうかな……)



普通に考えたらあり得ないような充電方法を、すんなり信じてしまった恥ずかしさからつい背中を向けてしまったけれど……。

変な意地は捨てて、温かい胸に甘えさせてもらった方が色々いいのかも知れない……そう思い直した、ちょうどその時だった。



「ーっ」


後ろからふわりと包み込まれて息を止めた。


「……こうして、お前を抱いているだけで、俺は十分満たされるよ。充電できる」



可愛いげのない私を溶かしていく、慶喜さんの優しい言葉とかーー。

背中からじわじわと染み込んでくるような彼の体温。

それから、耳のすぐ後ろから届く、穏やかな声。


それから、それからーー。



堪らなくなって、早く慶喜さんの顔が見たくて、私はまた ころん と体の向きを変える。

少し眠そうな慶喜さんは小さく笑って、そっと背中に手をまわしてくれた。


「慶喜さん」

「………ん?」

「実は私も……嘘つきました」

「嘘?」

「慶喜さんに機種変更の理由を聞かれた時、ちょうど更新のタイミングだったって答えたけど本当はーーー」



いつの間にか、緊張や恥ずかしさも無くなって、背中をふわふわと撫でられながらなんてない話をしている。




ツヤホは使い方によってはいやらしいものだとか、充電方法がやばい機種があるとか、実体の見えない怪しい噂はネット上でも度々持ち上がっていた。


慶喜さんの充電の話をすんなり信じてしまったのも、似たような噂話を読んだことがあったからだ。



(でも、あんなのやっぱり、ただの噂だったんだ…)


こうして寄り添って、温かさを分け合うことで充電になるなんて、なんて素敵なんだろう。

撫でられている背中が気持ちいい。
微笑みながら目を閉じ始めた慶喜さんを見上げて、私の方が何倍も充電されてるなとおかしくなった。


「慶喜さん…」

「うん?」


(慶喜さん、大好き。)


「……おやすみなさい」


私はこの幸せな時間にうっとりしながら目を閉じた。
























………………




……はぁはぁ、と少し浅い呼吸が聞こえる。


眠りの中に堕ちていきそうな意識を呼び戻して目を開けた。


「……慶喜さん…?」


眠ったようにしながら、わずかに眉根を寄せる慶喜さんに声をかけても、彼は反応しない。


「ーど、どうしたんですか?慶…!」

あ、とその数字を見てドキリとする。

「2%……って、どうして…?!」


マニュアル通りにちゃんと添い寝出来ていたはずなのに。

私は急いで起き上がり、慶喜さんの力の抜けた手をとった。ある予感を抱えつつ、急いで内蔵型説明書の充電ページをスクロールする。



「あ……」

やっぱり。
私はあの時慶喜さんに騙されたんだと知る。


『充電方々が2通りあるなんて、嘘だよ、◯◯』


本当はそれが嘘で、時間を越えたら挿さないと充電は出来なかったんだ。


「慶喜さん…!教えてください、どうしたらいいの?」


彼に問いかけても反応はない。
眠ってるのとは微妙に違う、辛そうな様子に不安になる。


(どうしよう、私のせいだ…!)


落ち込む間もなく、手のひらをもう少しスクロールしながら文字を追って目を走らせる。


「ーーあった!!…Q/どこに挿すの?…A/アレですよねぇ………って、何これ?!解んないよっ!」



ネットで検索すればきっと情報を拾える。だけど残り2%の慶喜さんをネットに繋ぐことは出来ない。


「どうしよう……!」


焦る私の目の前で、2%の文字が1%に変わった。


「!」


慶喜さんのおでこにそっと手をあてると「ん…」と力無く身じろぐ。


「…………」


私は意を決して、ゆっくりと身体を倒して……慶喜さんと唇を合わせた。









---------------------




ちょ……怒ってる怒ってる((( ;゚Д゚)))

みんなが怒ってるのが見える…!!

(月がつく人とか多分すごい怒ってる!爆)



こ、コメントは次回に…♡(怖い)


慶ホの熱い端子を使うシーンは出てくるのか?!?

出てこなければ何人のひとが私に見切りをつけるのか…!!?


次回最終話です……(´∀ヽ゚)゚。ふふ