一応、続き物になりますので、
お嫌で無ければ下記からお読みください

①慶喜さん

②秋斉さん





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向かう時は早朝で人目が無かった為、置屋の前まで駕籠屋さんに来てもらうことが出来た。だけど今からの時間は島原が一番活気付く為、私は島原に程近い山の途中で駕籠屋さんにお礼を伝えて降ろしてもらった。


ここからは島原や、お遣いやお稽古などで馴染み深い周辺の街が見渡せた。
夕陽に染まる街並みを見ていると、今この瞬間にもこの街のどこかにいるはずの人達の顔が頭に浮かぶ。


(……)


私は一人で頬を染めて目を閉じた。
誰に伝える必要もない脳裏はとても正直で、お世話になっている人や親しくしてくれる人は他にもたくさんいるというのに、あの二人の顔ばかりを思い浮かべてしまっている。


(だって、二人とも…)


島原を発つ前夜の慶喜さんと、先日会いに来てくれた秋斉さん…。
それぞれに抱きしめられた感触や彼らの温もり、耳のすぐ傍で聞いた息遣いまで鮮明に思い出してしまいそうになってはっとする。


(わぁばかばか!私のばか…!)


私は一人赤くなってそのシーンを打ち消すようにおでこの前の空間をぶんぶんと手で振り払った。


「ーなんの呪(まじな)い?」


背後から聞こえたのは、笑いを含んだ優しい、懐かしい声。
途端に詰まる胸から震える吐息を一度だけ吐き出して振り向いた。

私を見つめる柔らかい瞳。
光を通す色素の薄い髪、気品と余裕のある綺麗な立ち姿…


「…○○」


一月ぶりに名前を呼ばれると私の全細胞が彼に甘えたがって震えるようだった。


「慶喜さん…!」


久しぶりに音に出して呼んだ彼の名前。
離れている間、何度も胸の中で彼に呼びかけていたから、こうしてちゃんと呼びかけられる近さに慶喜さんがいることが堪らなかった。


慶喜さんは2人の間にあった数歩の距離を消して、私をその腕の中に包み込んだ。


「…おかえり」

「慶…」

「お帰り、○○」


たったひと月。
たったひと月、特に名を挙げている訳でもない新造がひとり、遠方で働いていただけ。

家族の為に花街に骨を埋める覚悟で故郷を発ったり、戦の為に弱音も吐かずに帰らぬ路を歩いたり…
そんなことさえ珍しくないこの時代で、私がひと月置屋を空けたことなんて本当にちっぽけな出来事だ。

ちっぽけな、出来事のはずなのに。

慶喜さんは大切そうに愛(いつく)しむ様に抱きしめてくれるから私はポロポロと涙を溢(こぼ)していた。


最後に会った時も毎日忙しそうだった。
この人の時間が余っているのを私は見たことが無い。

「…お忙しい、中…」

涙に詰まりながらそう口にすると、慶喜さんは私を見下ろして「こんな時にまで」と笑った。


「いいんだ。俺が我慢できなかっただけだから…。もうずっと前からお前に、会いたかったんだ」


そう照れたように笑って、一層強く私を抱きしめた。








慶喜さんにはお酒を、私の前にはお茶を出してくれる料亭の仲居さんに会釈をしつつ、私は所在なく視線を泳がせていた。


さっきあんな風に熱っぽく抱きしめられた後で、こうして机を挟んで真向かいに座らされると平常心ではいられなかった。

慶喜さんはそんな私の気持ちを知ってか知らずか、さっきから楽しそうに私のことを見つめている。

せめてずっとここにいてと願った仲居さんはお膳の準備の為に部屋を出て行ってしまい、ついに二人きりになってしまった。

仲居さんの閉める襖をすがるように追っていた目を元に戻すとばっちりと慶喜さんの視線とぶつかった。


「あ…」

「…」

「あの、お注ぎします」


彼の杯に、これまで何度お酌をしてきただろう?何十回、もしかしたら何百回かも知れない。だけど今日は震えそうになる指先を叱り付けるように机の下でぐっと握ってから徳利に手を伸ばした。

もうすぐ徳利に手が届きそうなところで、慶喜さんの温かい手が私の手に重なった。
思わずばっと手を引いてしまった後で、しまったと思う。

慶喜さんは私の過剰反応に、恐らくわざと笑みを深めてから言った。


「お酒はまだいいよ…。それより…」


そこで一度言葉を切られてしまい、私は固唾をのむ。


「離れてる間に、俺の免疫がなくなったかな?」


さっくりと痛いところを突かれて、紅潮する。
慶喜さんはにっこり笑うと机に身を乗り出して、引っ込めていた私の指を捕まえた。


「…つけてあげようか?免疫」

「!い、いえ!あの、大丈夫です!」

「うん、全然大丈夫そうに見えない」


間近で覗き込まれると半ばパニックになって首を横に振りながら手を引き抜こうとしたけど、強く握られていて離れない。


「○○、かわ…」

慶喜さんの声をかき消すように、襖がガラッと空けられた。


「…」
「…」
「…」


三人の沈黙が重なった後、秋斉さんのため息が部屋に響く。


「何をやっとんのや」

「…随分と早くない?」


私の手を離さないままで二人の会話が始まる。
秋斉さんまで来てくれるなんて聞いていなくて、私は驚きに目を見開いたまま秋斉さんが会話をしながら慶喜さんの隣に腰を下ろす様子を呆然と見ていた。


「…へえ、お陰さんで」

久しぶりに見る、対慶喜さん用の冷えた微笑も。

「ちゃんと仕事して来たんだろうね?」

親しみに溢れた慶喜さんの茶々入れも、なんだか…。

「あんさんだけには言われとう…」

くすくす笑い出した私を二人がきょとんとした顔で見ていた。

あんまり私が嬉しそうだった為か、秋斉さんも釣られたように頬を緩めながら聞いてくれる。


「ーなんやの?」

「ごめんなさい、でも私、お二人が話をされている姿を見るのが大好きで…。なんか急に、戻って来たんだなって実感して嬉しくなっちゃいました」

「なんだい、それ」


今度は慶喜さんが笑った。
やっと私の手を開放してくすぐったそうに笑う様子にまた、秋斉さんも私も自然と笑みが浮かんだ。

「今日は褒美にわてと慶喜はんで甘やかしたるさかい、羽伸ばしい。…ようがんばらはったな」








それから、二人にお酒を注ぎながら、今日の為にお店に頼んでくれていたんだという美味しいお料理を頂いた。

置け屋での食事の中で、または連れ出してくれた先の料亭で。私が彼らの前で好きだとか美味しいだとか言った言葉をきっと覚えてくれていたのだと思う。

お膳には私の好きな食材が使われたお料理がたくさん並んでいて、私が目を輝かせると二人はそれをとても喜んでくれた。

ゆっくりとお食事を頂く中で、私がいない間に島原で起きたことや、私が帰る日に時間を作る為に慶喜さんがそれはそれは仕事の鬼になってくれていたことなど、色々なお話を面白可笑しく聞かせてくれた。


「でもさ、秋斉も○○を他の男に預けることがどんなにきついか実感したんじゃない?」


慶喜さんの言葉にあの日秋斉さんの腕の中で聞いた声が蘇り、どきっと心臓が跳ねた。


『もうどこにも出せへん。○○はんは…藍屋のもんや。ええな?』


無意識の内に視線を送ってしまい、秋斉さんと目が合った。瞬時に頬を熱くさせた私と秘密を共有している彼は、意味ありげに吐息だけで小さく笑った。


「さあ、どうやろな」

「嫌だね、いい加減素直になったらいいのに」


赤いまま固まる私に今度は慶喜さんが同意を求めるように「ねぇ」と覗きこむ。


「…○○?」

「えっ…あっ、はい。…はい」


働かない頭には頼れず、口が勝手に動いた。

私が訳も解らないまま肯定してしまったので慶喜さんは可笑しそうに声をあげて笑った。


「なんや誤解があるようやけど…あんさんらが望むんやったら、わてはいつでもそうしたりますえ」


秋斉さんの意外な反応に慶喜さんも私も耳を疑った。


「わての立場を使えば、仕置きと称して○○はんに触れることかて容易いし。都合のええことにそん娘は優しいから毎夜お茶を淹れて来てくれてはることやし…」


杯の中のお酒を弄ぶように揺らしながらそんな恐ろしいことを言ったかと思うと、くいっと一気に飲み干した。

私はお酌することなんてすっかり頭から抜け落ちて、ただただ信じられない想いで呆けたように口を開けたまま秋斉さんを見ていた。


「…秋斉?…酔ってるの?」

慶喜さんが恐る恐る尋ねる。
秋斉さんは手酌でお酒を注いだ。


「こないちびっと舐めただけで?」

妖艶に笑った後、また平然と杯を空ける姿に二人で目を見張る。
慶喜さんは急いで席を立つと私の傍まで来て腰を下ろした。

「ー○○。俺がいない時にあまり秋斉に近づいちゃだめだ、解ったね?」

そう言って重ねられた手を握り返しながら二人で確認するように小刻みに頷き合うのを、秋斉さんはくすくすと楽しそうに笑っていた。









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はい(´ェ`*)


お帰りなさい編、色々な可能性がありましたがこんな風に落ち着きました


もしかしたら最低かも知れませんが、
私は三人が大好きです♡


でもそれは、こちらを手に入れる為に二人がギスギス争ったり傷ついたりするものでは無く、

この話の慶喜さんと秋斉さんのように、なんならこちらが妬くくらいの仲の二人に、自分達に必要な存在だと認められたい、訳です(*´ー`*)


どんな性癖だ。
いや全くおっしゃる通りです-=≡卍-_- )グサァ


弥生さんも三人遊びもの、大丈夫とのことですし、好きな旦那さまも一緒だったので思うままの感じで締めさせてもらったけど……


ちょっと方向が特殊すぎた……?(゚∀゚ll)
大丈夫かな…


慶喜さんも秋斉さんも特に答えを望んでいるわけではありません。今の関係が心地よい。
いつか二人の内のどちらかを選ぶ日が来るかも知れないし、他のひとが来て三人の関係が崩れるかも知れません。
それは誰にも解りません

ただ、想いの重なる今は出来るだけこうして三人で過ごそう、という感じで……(;´▽`A


ちなみに秋斉さんは酔っておられません、二人をからかって楽しくお遊びになられています(*´艸`)



えー、
大したものではございませんが、
いつもありがとう、と、愛だけはたくさん込めて

弥生さんへ贈ります(*´ェ`*)♡♡

長い繁忙期、本当にお疲れさまでした♡








弥生さんご所望の野獣締めバージョンは、一度頭の中にある野獣斉を書いてみて、野獣系も何とか書けそうならいきます……(●´艸`)
先ずはこれでご勘弁を♡これでも少し野獣めに振ったのよ?♡