駅  

通勤ラッシュの時間


花束をかかえた
小さな女の子が

改札にいて


どうしても
今日パパにプレゼントするんだ、って
泣いてる



まだパパが来ないって

ママに抱かれて泣いてる



【良い子にしてたら

パパちゃんと帰ってくるから!】



ママはそういってなだめてる



パパは出張から帰ってくるのかしら

それとも今日はお誕生日なのかしら



その姿をみていると

とある養護施設での

女の子を思い出す。



ネグレクトで

放置され

栄養失調で保護された

4歳のマリちゃん(仮)


 

ここにくる子は

身寄りがいない



核家族により

おばあちゃん

おじいちゃんとも

分断され 

誰も保護能力がない



もともとシングルだった母親は

姿を消し

マリちゃんは

この世界に取り残された



自分がやりたくて

選んだ人生なのだ、とは

言うものの

そこは正論ではやりきれない



私が

面会にいくと

マリちゃんは

小さな花束を

作ってくれた


たんぽぽを摘んで

輪ゴムで簡単に止めたものである



『あげる!

でも本当はママにあげるの!』



この世界から

母親が消え

大人が消え

人が消えた部屋で

数日間放置されていて

たびたび様子を見に訪ねていた

民生委員に保護されたという



それ以上の詳しいことは

(虐待があったかどうか)は

聞いていない


彼女の支えは

母親との再会


育ててくれている

園長はとても良い人だが

母親には敵わない



園長は毎日マリちゃんに

言い聞かせているそうな


『マリちゃんのママはとっても

素晴らしい人なのよ

ちゃんとお迎えににくるからね

絶対にだいじょうぶだから

マリちゃんはマリちゃんを生きるのよ』

 


マリちゃんはマリちゃんを

生きるのよ


4歳の子に

わかろうがわかるまいが

園長はそう語りかけているらしい


けして

良い子にしてたら

迎えにくる、などとは言わない




充分良い子なのに

これ以上良い子でいろなんて

酷すぎる


大人はすぐ

良い子にしてたら、って

言うけれど

良い子って何でしょうね


大人の都合の良い子、って

意味でしょう?


ずるいわよね



もう大人の勝手な世界に

この子達を巻き込みたくない




そう

おっしゃられていました






良い子でいてね



良い子=大人や社会に従順であること


大人の言うことを良く聞く子


になってしまっています




親の保護が

欲しい歳ごろに

親がいないのは

この子達だけではないけれど


それだけで

もう充分良い子です

 


そもそも

悪い子など

存在しないのです



大人の言うことを

聞かない

都合の悪い子、はいますが




私たち大人も

悪い人などいない




道徳感から

外れてしまう人は

いるけれど



目の前の人は

絶対にだいじょうぶ!


たとえ

犯罪があってもだいじょうぶ



そう

決めて生きていくことです



マリちゃん

どうしてるかなあ


大きくなったかなぁ



小さい子をみると

マリちゃんを思い出します






だいじょうぶ 

だいじょうぶ