不思議な話 
 
 

さっき
仔猫がいたんだ
 

雨の中ミーミー鳴いている



足元もおぼつかない
まだ生後間もない
真っ黒な赤ちゃん猫
 

こんなに小さいのに
もう真っ黒な艶やかな美しい姿をしてる
 

もう
ノックアウト💞
一発KO💞
 
 

だが

私はいまから新幹線に乗らなければならないのだ

君を連れて帰るわけにはいかないのだ

どうかどうか
親切な人に拾われておくれ
  


と泣きながら〔心で〕
その場を後にした
  




あ、しまった!
せめて車道ではなく
どこかのビルの軒下にでも置いてくればよかった、と

踵〔きびす〕を返して
仔猫のいたところに戻った
 
 



仔猫はまだそこにいた

いたはいたのだが。。。
 
  


 



真っ黒なその仔猫は

ひと月を過ぎた
大きな仔猫になっていた
 
 

え?
もしかしたら
もう一匹いたの?
さっきのとは違う猫?

疑問が浮かぶが

私がいったん行きかけて
戻ってきた時間はほんの5分も満たない
 
 

まるでタイムスリップしたみたいだな
   

 
5分の間に
ひと月がたち
仔猫が成長していた




まさかそんな




赤ちゃん猫はもうどこにもいないが

同じ場所に大きさの違う
同じ黒猫がいた
 




そのとき
時間の流れが変わったのが
伝わってきた  
 



ほんの一瞬のことである

あ、異次元にきたな

時空の歪みの中にきたな
 





少し大きくなった仔猫は
私が手をさしのべたら
一人前にシャーッと威嚇してトコトコと
歩いて近くにあった茂みへ消えていった
 




元気でね

生き延びてね




そう仔猫に声をかけ



私は駅に急いだ





PicoParáConnector
すべてを繋ぐもの


ぴこ
らぶ💞