国指定難病・ゴーシェ病III型治療薬「Venglustat」の第2相臨床試験を開始 | 好奇心の扉

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災害は偶然の産物ではありません。何らかの連鎖的な出来事の結果です。
大惨事の陰に隠された知られざる真実に迫ります。
そこには次の大災害を回避するための重要な証拠が必ず残されています。

サノフィ株式会社(本社:東京都新宿区西新宿)は8月10日、サノフィ・グループのサノフィジェンザイム(希少疾患領域、免疫・炎症領域部門)が、希少性遺伝子性疾患の「ゴーシェ病III型」に対する経口治療薬として、現在開発中の『Venglustat』の第II相臨床試験(LEAP試験)に、1例目の日本人患者が登録されたと発表しました。


ゴーシェ病III型venglustat
*写真はイメージです。
ゴーシェ病III型経口治療薬「Venglustat(ベェングラスタット)」は、
第II相臨床試験を開始したばかりであり、製品写真はありません。



「ゴーシェ病(Gaucher disease)」はライソゾーム病(LSD)の一種で、国指定難病であり、常染色体劣性遺伝疾患です。

遺伝子変異により、ライソゾーム内の酵素で、グルコシルセラミド(GL-1)という糖脂質の分解に関与する酵素で、β-グルコセレブロシダーゼに異常が生じ、この酵素が不足または欠損する事で、糖脂質が分解されずに体内に蓄積し、疲労、貧血、血小板減少、挫傷、骨痛、関節痛、肝臓腫大、脾臓腫大、けいれん発作、骨髄や脳などの主要な器官で、進行性の重度の協調運動障害などが生じます。〔小児慢性特定疾病情報センター 大分類: ライソゾーム病/疾病名:ゴーシェ病〕


【ゴーシェ病の原因染色体&遺伝子座】
「ゴーシェ病」の原因となる染色体は第1番染色体に存在する、GBA遺伝子座の変異に起因します。GBA(glucocerebrosidase)遺伝子は、長腕の1q21にあります。
ゴーシェ病の第1染色体GBA遺伝子


【日本人の発症数】
発症頻度は民族間で大きな差があり、日本人の発症頻度は4~6万人に1人と推定されており、現在まで約150名の患者が同定されています。
世界的にはアシュケナージ系(東欧)ユダヤ人では900~1000人に1人、非ユダヤ人では6~10万人に1人が発症するとされている。これまで、世界で約1万人が診断されています。


【ゴーシェ病の病型分類】
ゴーシェ病の病型分類

◆ゴーシェ病I型は、神経症状を伴わない病型で、発症年齢、骨合併症の有無、肝脾腫の程度において非常に臨床的異質性が大きい病型。

◆ゴーシェ病II型は、乳児期に発症し、肝脾腫に加えて発達遅延、痙攣、頸部後屈などの神経症状を伴い、急速に神経症状が進行します。

◆ゴーシェ病III型は、更にⅢa型、Ⅲb型、Ⅲc型の三つの亜型に分類されます。
  • IIIa型は肝脾腫に加えて、若年発症の神経症状(小脳失調、ミオクローヌス、痙攣、斜視など)を呈します
  • IIIb型は、核上性水平注視麻痺を唯一の神経症状とし、それに加えて重篤な臓器症状を呈する亜型であり、早期発症のⅠ型と鑑別が困難な場合があります。
  • IIIc型は水頭症、角膜混濁、心弁膜石灰化など極めてユニークな臨床症状を呈する亜型です。これらの亜型以外にミオクローヌス(意志に反する不随意運動)てんかんを主徴とし、肝脾腫の程度が軽い臨床亜型も報告されています。

**ゴーシェ病の非神経系症状に対しては治療選択肢が存在します。
しかし神経症状を伴う病態では、脳内に到達してゴーシェ病Ⅲ型に伴う神経症状に効果を発揮する医薬品は、未だ承認されていません。

〔ここまで日経メディカル、シャイヤー・ジャパンのビプリブ:2番目のゴーシェ病治療用酵素製剤解説/シャイアー・ジャパン治療領域ゴーシェ病ガイドブックより〕

今回始まった第II相臨床試験(LEAP試験)は、2期からなる非盲検の多施設での国際共同試験で、『Venglustat』と既発売の「*セレザイム®(一般名:イミグルセラーゼ=遺伝子組換え)」を併用した治療の安全性と忍容性を検討し、有効性を探索する試験です。

試験の第1期、ゴーシェ病III型の成人患者において、ゴーシェ病I型患者からゴーシェ病III型患者を識別する中枢神経系バイオマーカーを測定し、「Venglustat」による治療に適した患者を特定する。
試験の第2期、ゴーシェ病III型の成人患者における「Venglustat」の安全性と忍容性を検討し、有効性の探索的検討を行い、脳脊髄液中の中枢神経系バイオマーカーの変化を検討する。

ゴーシェ病のマクロファージ
ゴーシェ病III型に見るマクロファージの比較。
(左)ライソゾーム内の正常な単球(未成熟な白血球)とマクロファージ。
(右)マクロファージに分解されない糖脂質が蓄積、核の位置がズレる。


*現在、ゴーシェ病の治療薬として承認・販売されているのは、サノフィ株式会社「セレザイム®(2011年3月18日発売)」とシャイアー社の「ビプリブ®(2014年9月2日発売)」で、効能・効果はいずれもゴーシェ病の諸症状(貧血・血小板減少・肝臓/脾臓の腫大及び骨症状)の改善となっており、中枢神経症状の進行抑制と改善までに至っていない。
**現時点での中心的治療法は、貧血などの血液学的異常及び臓器障害の改善が期待できる“酵素補充療法”である。
この治療法が、神経症状の改善への効果が期待できない理由として、最大の問題は“酵素”が血液脳関門(BBB)を通過できず、標的となるマクロファージ内に必要量が到達できない事にある。


『Venglustat』は脳内に到達する特性を有し、神経症状の改善が期待されています。


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